大学サッカー

特集:第68回全日本大学サッカー選手権

インカレ準Vの桐蔭横浜大主将・眞鍋旭輝 主力の3年生をもり立て、引き出した強さ

眞鍋は中央大との準決勝に引き続き、2試合連続でシュートを決めた(すべて撮影・うさみたかみつ)

サッカー第68回全日本大学選手権 決勝

12月22日@埼玉・浦和駒場スタジアム
桐蔭横浜大 1-3(延長) 明治大
明治大は10年ぶり3度目の優勝

インカレ初出場初優勝の夢は、最後の最後についえた。決勝で延長まで戦い抜いた桐蔭横浜大の主将、DF眞鍋旭輝(ひかる、4年、大津)は敗戦を告げる笛が鳴ると、両手を腰にあてて肩を落としたが、すぐに顔を上げた。ピッチに倒れ込む3年生たちに手を差しのべ、泣きじゃくるDF浅野嵩人(瀬戸内)を抱き寄せて、笑顔で言葉をかけた。「おまえにはまだ来年がある。期待してるぞ」

初出場の桐蔭横浜大が法政を破りベスト4、イサカ・ゼインはただ仲間のために

初のインカレ、王者明治を追い詰めた

試合後、キャプテンらしく誰よりも早く相手のベンチ前に駆けつけた。チームメイトたちを整列させ、すっきりした表情で一礼。続いて、声をからして応援してくれた仲間たちが待つスタンドの前へ行って、深々と頭を下げた。涙は見せなかった。

「後悔はないです。すべて出しきりました。“最強明治”とここまで戦えたのは、今後のチームにとってプラスになるはずです。あとは後輩に託します」

0-0で迎えた延長前半、自らの2試合連続ゴールでリードを奪ったときは、優勝が頭をよぎった。「あれだけ守って1本のチャンスで決めたので『これはきたな』と思いました。でもそこから明治に勢いがついて、結局は3点も取られました。甘くなかったですね」。桐蔭横浜がシュート4本だったのに対し、明治は20本だった。

延長前半2分に先制点をあげた眞鍋はチームの元に駆け寄り、喜びを爆発させた

ただ、関東大学リーグと総理大臣杯に続き、インカレまで制覇した王者を土俵際まで追い詰め、しぶとく食らいついた。そのファイトに会場から惜しみない拍手が送られた。中心にいたのが、センターバックの眞鍋だ。守備陣を統率し、何度もピンチを防いだ。相手のスルーパスにすばやく反応し、得意の空中戦ではほとんど負けなかった。眞鍋はJ2のレノファ山口への入団が内定している。その能力の高さを存分に披露した。何よりもプレーに気持ちがみなぎっていた。安武亨監督は、それこそが彼の真骨頂だと言う。

「ピッチで戦う姿勢を見せ、背中で引っ張るキャプテンでした。練習からひたむきな姿勢で頑張ってました。最後に全国の舞台で認められ、大会ベストDFに選出されたのは、私もすごくうれしいです」

眞鍋(4番)は守備陣を統率し、“最強明治”と戦った

敗戦の将は笑みを浮かべ、教え子の主将が評価されたことを喜んだ。口べたで、スピーチのうまいリーダーではなかったという。ミーティングでもそれほど口数は多くない。厳しい言葉で引き締めたのは、副将のイサカ・ゼイン(4年、桐光学園)であり、下村司(同、市船橋)だった。チームが一つになるために大きかったのは、主将の細かな心遣いだった。先発メンバー11人中7人が3年生。主力となるのは、1学年下の選手たちであることを認めるところからスタートした。「3年生たちが伸び伸びとプレーし、やりやすい環境をつくることを心がけてきました」と言い、それが強さにつながると信じてきた。

かつて萎縮させてしまった1年生が2年後に躍動

眞鍋には苦い経験がある。2年生のとき、関東大学1部リーグで初先発した当時1年生の浅野を厳しい言葉で叱責(しっせき)し、萎縮させてしまったのだ。期待の新入生は前半のみで交代。その後もほとんど活躍できず、翌年は出場機会も失った。「あのときは後輩たちが生き生きとプレーする雰囲気をつくってあげられなかった」と振り返る。

ルーキーイヤーで苦しんだ浅野は3年生で再びチャンスをつかみ、今シーズンは主力の右サイドバックとして躍動。セオリーにとらわれない変幻自在な動きで、インカレ準優勝に貢献した。浅野自身、自らの飛躍は最上級生の支えなしにはなかったと言う。「ストレスなくやらせてもらいました。ひかる君(眞鍋)からは『お前の好きなようやっていい。ミスしたらカバーしてやる』と言われてたので」。先輩の言葉に勇気づけられた。

浅野(2番)は3年生になった今シーズンに主力として活躍

それだけに、日本一にあと一歩届かなかった自らの不甲斐なさと悔しさがこみ上げた。「4年生たちを優勝で送り出したかったです。次こそは優勝したい。先輩たちから『託したぞ』と言われましたから」

最後のミーティングで涙

試合後、小雨が落ちる浦和駒場スタジアムの外で、桐蔭横浜は締めのミーティングをしていた。「悔いはない」と清々しい顔を見せていた主将も、部員たちの前で最後の言葉を伝えたときには声が震えていた。この1年間、日本一を目標に戦ってきたことがよみがえったのだ。「優勝で終われなかったことは悔しいです。出しきったといっても、やっぱり悔し涙が出ましたね」

表彰式では優勝と準優勝の差をまざまざと見せつけられた。「この悔しい経験を生かし、成長していきたい。僕のサッカー人生は、これからも続きますので」と、前を向いた。

日本一の夢は後輩たちに受け継がれた

Jリーグの舞台で戦う前に、大学最後の一大イベントが残っている。そこに向けて、最高の準備をするつもりだ。「12月25日に引退試合があるんです。はっちゃけたい。みんなで楽しみたいと思います」。桐蔭横浜大の主将は満面の笑みを浮かべ、会場をあとにした。