大学サッカー

特集:第68回全日本大学サッカー選手権

初出場の桐蔭横浜大が法政を破りベスト4、イサカ・ゼインはただ仲間のために

イサカ(右)は来シーズン、川崎フロンターレでプレーする(すべて撮影・佐伯航平)

サッカー 第68回全日本大学選手権

12月14日 2回戦@千葉・柏の葉公園総合競技場
桐蔭横浜大 1-0 常葉大
12月16日 準々決勝@同
桐蔭横浜大 2-1 法政大

桐蔭横浜大のMFイサカ・ゼイン(4年、桐光学園)は、新チームになってからずっと言い続けてきた。「桐蔭横浜大の歴史を変えたい。大学の名前を大きくしたいんです。それが恩返しになると思ってます」。目標の一つ、インカレ初出場は達成した。次の目標は日本一だ。12月16日のインカレ準々決勝では、前年覇者の法政大を2-1で撃破。イサカはいま、チームのために全身全霊をささげ、大学サッカーでプレーできる幸せを感じている。

「いまの僕があるのは桐蔭横浜大のおかげ」

ガーナ人の父と日本人に母の間に生まれたイサカは、フットボーラーとして成長させてくれた大学への感謝を忘れたことはない。大学の授業で栄養学を学び、食事面から改善。コンディショニングに気を遣い、体を一から作り直した。体脂肪は10%を切り、筋肉量が増加。桐光学園高(神奈川)時代に比べて体格は一回り以上大きくなった。全治1カ月を超えるけがは、大学では1度もしたことがない。

安武監督(中央)の指導の下、イサカは大学で力をつけてきた

プレーの面では安武亨監督、八城修総監督に丁寧な指導を受け、判断力が格段に向上。爆発的なスピードとパワーを生かしたプレーに磨きがかかり、プロにも認められた。J1の川崎フロンターレの内定を勝ち取り、卒業後は幼いころからの夢だったJリーガーになる。

「いまの僕があるのは桐蔭横浜大学のおかげ。高校を卒業したばかりの僕では、プロにはなれなかったです」

初のインカレ、頭に浮かんだのは仲間たちの姿

12月14日、念願だったインカレの舞台に初めて立つと、多くの人に支えられてきたことを改めて実感した。初戦では多くの決定機を生かせず、個人としては納得のいくプレーは見せられなかったが、最後まで足を止めずにディフェンス。スタジアムから聞こえる仲間の声援、ベンチに座る同期の4年生たち、根気よく育ててくれた指導陣の顔を見た。スコアは1-0。インカレ初勝利を心から喜んだ。

「自分のプレーがよくなくても、勝ってみんなが笑ってれば、それでいい。もちろん、得点とアシストで貢献したい気持ちはありますけど、最後に勝利をつかめるのなら、僕は何だってやります。泥臭くプレーして、すべての力を注ぎます」

試合に出られず涙を飲んだ仲間のためにも、最後まで全力を尽くす

初戦にあたり、前日の選手ミーティングも思い出した。右ひざに重傷を負い、4年生の初めから主務になった石井康輝(4年、浦和レッズユース)の呼びかけで、大会登録メンバーが全員集まった。試合に出たくて仕方のない控え選手、ベンチからも外れて悔しい思いをするメンバーもいる。そこで、控えGKの児玉潤(4年、東京ヴェルディユース)らは目を真っ赤にして思いを口にした。普段は冗談ばかりを言い合う仲間たちが、涙を流していた。

「児玉は3年までスタメンで出てたのに、4年生で全然試合に出られなくなった。あいつが一番つらいと思います。それなのに練習は一切手を抜かず、悔しさも表に出さなかった。その思いが最後にあふれたんだと思う。泣いてたのは児玉だけじゃない。そんな彼らの思いを背負って、僕らは戦わないといけない。試合に出るのは当たり前ではない。どんなに体がキツくても、試合中にサボるなんてできません」

最後の最後まで、4年生全員で戦ってきた

イサカは大学の仲間たちと出会い、安武監督らの指導を受けて、人間的に成長したという。考え方が変わり、結果としてサッカー選手としての評価も高まった。イサカ自身も「チームを勝たせる選手になりたい」と思うようになった。

プロを目指す選手は数字で評価されることも理解している。それでも、勝利から逆算してピッチで最善のプレーができるようになった。それが今シーズンの大活躍につながっている。関東大学1部リーグでは同校史上初の2位躍進に貢献し、個人としても10得点9アシスト。初めてアシスト王の個人賞も受けた。表彰式ではトロフィーを手に、仲間への感謝を何度も口にした。「周りの選手がよかったから取れました。得点もアシストもそうです」

この仲間と戦える最初の最後のインカレを優勝というフィナーレで

もちろん、それだけでは満足していない。集大成は全員で勝ち取るインカレのタイトルだ。チームは一丸となっている。例年、最終学年に上がるタイミングで就活に専念するために退部する選手もいるが、今シーズンは4年生全員が残った。

「大学4年生は将来への不安を抱えながらプレーする選手もいますし、実際に就職がまだ決まってない人もいます。その仲間たちと一緒に目の前の部活に本気で打ち込む。こんな経験は大学サッカーでしかできない。この大会は僕も、プロを見すえて技術を向上させたいなんて気持ちは一切ない。仲間のためだけにプレーしてます」

2011~12年の第60回大会での専修大以来となる初出場・初優勝に向かい、桐蔭横浜大はまっすぐ突き進んでいる。