筑波大のエース三笘薫 プロの道を捨て、大学で得たもの
今シーズンの筑波大学蹴球部は幸先のいいスタートを切った。2年ぶりの王座奪還を目指す関東大学リーグ1部で、5試合を終えて4勝1分け。序盤の戦いぶりを問われたエースのMF三笘(みとま)薫(4年、川崎フロンターレU18)は、はっきりと言った。「手応えは十分あります」
心身両面で足りないもの求めて進学
三笘は4試合に出て2得点(ともにPK)。繊細なボールタッチと躍動感のあるドリブルを武器に、多くのチャンスに絡んでいる。一貫して積極的に仕掛け、観る者を楽しませる痛快なプレーが魅力だ。
来シーズンはJリーグの川崎フロンターレ入りが内定している。フロンターレのアカデミーで育った三笘にとっては愛着のあるクラブだ。実は、以前にもプロ入りの話があった。高校卒業時、フロンターレのユースからトップチームへ昇格するチャンスを得たのだ。しかし三笘は時期尚早と判断し、筑波大へ進学。心身両面で自分に足りないものを徹底的に求めた。フィジカルの強化はその一つ。日々こなした筋力トレーニングのおかげで、いまでは簡単には当たり負けしない体になった。
地道な努力は実を結んだ。2年生でレギュラーに定着すると、2017年夏のユニバーシアード代表に選ばれ、優勝メンバーの一員になった。その年の12月には東京オリンピックに向けて発足したU20代表に呼ばれた。翌年はU21代表に選出。パラグアイ遠征(3月)、トゥーロン国際大会(5月)、アジア大会(8月)にも出ている。当然、来年の東京オリンピックも狙う。
第3節の東洋大戦では、A代表と東京オリンピック代表監督を兼任する森保一氏が視察に訪れた前でフル出場。「緊張はしてないですけど、自分らしいプレーを出そうかなと思ってました。でもまだまだです。(今日の出来は)50点くらいかなと思います」と三笘。随所に「らしさ」を見せたが、自己評価は厳しかった。
アジア大会で痛感した未熟さ
大学時代はけがとは無縁で、いたって順調だった。それでもあえて、苦い経験はなかったのかを尋ねてみると、昨年のアジア大会での出来事を挙げた。U21代表として出場した同大会では、体調不良で肝心の決勝トーナメントを欠場。「自分の体調管理不足だったので、ふがいなかったです。そういうことをやってしまうようではプロで活躍できないので、もっと自分を管理していかなきゃいけないと思います」。戦力になれなかったことを悔しがった。
常に自分と厳しく向き合ってきた三笘の大学生活は残り1年。今年はチームの中心選手としてはもちろん、大学サッカー界をけん引する立場としての自覚も強く持っている。「大学の選手がもっと日本代表に選ばれていかなきゃいけない。大学サッカーを引っ張る立場としても、もっと代表に食い込んでいくことを考えながらやってます」
筑波の躍進、そして大学サッカー界のためにも。三笘は大学ラストイヤーを戦っている。