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特集:第68回全日本大学サッカー選手権

4年連続でインカレ出場を決めた筑波大 4年生が見た日本一の景色を後輩に

筑波大のスターティングイレブン

関東大学リーグ 第22節

11月23日@柏の葉公園総合競技場
筑波大(勝ち点32) 0-0 順天堂大(32)

関東大学リーグが最終戦を迎えた。この日は、筑波大と順天堂大が互いのインカレ出場権をかけて激突。筑波大は引き分け以上、順大は勝利が出場の条件。試合は両者一歩も譲らずスコアレスドローに終わり、この結果、筑波大の6位が確定し、4年連続38回目のインカレ出場を決めた。

序盤から守りを重視しチャンスをうかがう

筑波大はここ数戦続けてきた3-6-1のフォーメーションで試合に臨んだ。守備時にはMF山原怜音(2年、JFAアカデミー福島U18)とMF知久航介(3年、國學院久我山)が下がって5バックを形成。「失点を0に抑えれば勝ち点1が取れる。守りを重視しながら、チャンスを狙いにいった」と小井土正亮監督。

試合前から雨が降り続ける中、キックオフ。筑波大は序盤から順天堂大に攻め込まれるなど劣勢のスタートとなったが、DF山川哲史(4年、ヴィッセル神戸U-18)らを中心に体を張った守備を見せた。開始6分、相手のFKからのピンチの場面では知久がコースに入りブロックし、ゴールを守った。試合を通して守備に追われる時間が多かった筑波大だが、山川は「はっきり(クリア)するところははっきりと、つなぐ場面はつなぐことを意識した」と話すように、統一感のある集中した守りを見せた。

左サイドを攻め上がる山原(右)

雨の影響で天然芝はぬかるんで滑りやすくなっていた。特に前半攻撃時の左サイドはピッチ状態が悪く、プレーが制限されることも。左サイドで起用された山原はCKからのチャンスで地面に足を取られてしまうなど苦戦を強いられた。それでも筑波大のプレーメーカーは対応策を講じる。「足元でつなぐのではなく、相手の背後を狙った動きを意識した」という言葉通り、前半は再三相手のサイドの裏を狙い続けた。

苦しい守りの時間を耐えて、スコアレスドロー

しかし、筑波大の攻撃の時間はなかなか続かない。有効的なパスを通すことができず、順天堂大にボールを支配される時間が続く。途中、順天堂大のエース、旗手怜央(4年、静岡学園)に強烈なシュートを見舞われたが、ボールは枠の右側へ大きく外れていった。

MF三笘(右)とボランチ旗手が度々対峙

攻めあぐねる中、前半中ごろから筑波大の前3枚MF三笘薫(4年、川崎フロンターレU18)、FW和田育(1年、阪南大)、MF岩本翔(1年、ガンバ大阪ユース)が流動的にポジションを変更。右シャドーに和田、左に岩本、そして最前線に三笘が移った。「自分が前で起点を作って、シャドーのスピードある選手を生かそうとした」と三笘は語る。これ以降、三笘は順天堂大のボランチ・旗手と対峙する場面が多くなった。互いに来年の川崎フロンターレ内定が決まっている2人。三笘は「(旗手)怜央は個人で違いを出していたし、見習う部分が多かった」と振り返った。

前半ロスタイム、山川から和田に浮き球スルーパスが通り、絶妙なタイミングで抜け出したが、相手との接触で和田が倒れてしまう。狙い通りの攻撃を披露したのだが、チャンスを生かし切れずそのまま前半終了。

後半は両チームともに苦しみ、停滞した時間が続いた。だが70分、右サイドで幅を取った和田がMF高嶺朋樹(4年、コンサドーレ札幌)からの正確なロングフィードを受ける。相手を1枚かわして強烈なシュートを放ったが、惜しくもクロスバーにはじかれた。

その後も高嶺が思い切りのいいミドルを狙ったが、相手キーパーに阻まれるなどゴールを奪うことができない。結局試合はそのまま終了し、0-0のスコアレスドロー。筑波大は辛くも、自力で4年連続のインカレ出場をつかみ取った。

「地獄」を救った1年生の活躍

筑波大は今年、年間通してなかなか波に乗ることができなかった。夏から秋にかけては6連敗を喫するなど「地獄」も経験。苦しむ中、リーグ戦終盤からは3バックを採用し改善を図った。中盤の枚数が増え、中盤でボールを持つ時間を増やすことでチャンスをうかがうという戦い方を模索している。10月26日の駒澤大戦(1-0)を最後に、1カ月以上勝ち星から遠ざかっている。だが、結果が得られずとも徐々に改善されていく試合内容に高嶺や山川は「手応えを感じている」と声をそろえる。インカレまで残り3週間、どんな戦術を披露するのか楽しみだ。

数少ないチャンスを演出した1年生の和田

また、今年は1年生の活躍が目立った。新人賞を獲得したFW森海渡(1年、柏レイソルU18。現在は負傷により長期離脱中)を中心に、3バックの一角を担うDF森侑里(1年、大宮アルディージャユース)や、U-18日本代表でも活躍する岩本、そしてこの試合でも活躍した和田など、多くの選手が出場機会を得た。小井土監督も「1年がフィットして戦力になっている」と評価したうえで、和田に関しては「相手の嫌な動きをすることができる」と期待を寄せている。上級生も、ユニバーシアード代表メンバー6人を擁するなど、もともと選手層は大学屈指だ。そこに、けがで離脱していたMF小林幹(2年、FC東京U-18)や主将のDF加藤潤(4年、新潟明訓)も戦線復帰しただけに、今後も激化するポジション争いから目が離せない。

小井土監督が「ここ数年、柏の葉で終戦を迎えていた」と話すように、2016年のインカレ制覇以降、17年(東京国際大戦0-1)、18年(駒澤大戦1-2)と2年連続で柏の葉でインカレ敗退となっていた筑波大にとって、ここは因縁の場所だった。だが今年、柏の葉会場での試合は、この日を含めて無敗(3勝1分)で終えた。三笘も「柏の葉の悪いイメージは払しょくできた」と話す。次なるステージ、インカレでは「聖地」西が丘での試合が待っている。「西が丘でのリーグ最終戦(桐蔭横浜大戦2-2)は勝てなかった。今年は西が丘でもう一花咲かせたい」と小井土監督も抱負を語った。

「王者・明治に勝てるのは俺らだけ」

順調に勝ち進めば、ベスト8で関東大学リーグ、総理大臣杯の王者・明治大と対戦する。「まずは1戦目を勝ち抜く」ことを強調したうえで、「明治に一人勝ちさせるわけにはいかない」と、山川は闘志を燃やす。高嶺は「残り3週間、チームも個人も成長して、どう戦うか統一した意識を持って(明治大戦に)臨みたい。明治大に勝てるのは俺らだけだと思う」とは強く意気込む。

筑波大が最後にインカレ優勝を果たしたのは16年のこと。当時を知るメンバーは今の4年生だけだ。「後輩たちに日本一の景色を見せたい。絶対に優勝する」と山川。今年の目標であるタイトル獲得はいまだ成されていないだけに、インカレでは筑波大の真価が問われる。

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