過密日程の3戦全敗で前半戦終了、筑波大サッカーが迎える試練のとき
「これはもう部活のレベルじゃない」とキャッチフレーズで始まった今シーズンの関東大学リーグ。日程的にも部活レベルではなかった真夏の3連戦、筑波大は2連敗のあと前期最終戦の早大戦も落としてしまった。
4戦連続先制点を許す苦しい展開
早稲田のキックオフで試合開始、そのまま展開されてシュートまでいかれるなど、序盤は早稲田ペースで試合が続いた。それでも筑波大はDF山川哲史(4年、ヴィッセル神戸U-18)らを中心に体を張って守る。ボールを奪えば後方からつなぎ、ときにGK阿部航斗(4年、アルビレックス新潟U-18)も組み立てに参加、チャンスをうかがい続けた。すると試合は次第に筑波大ペースに。ダブルボランチの高嶺朋樹(4年、北海道コンサドーレ札幌U-18)と知久航介(3年、國學院久我山)を起点に両サイドの三笘薫(4年、川崎フロンターレU-18)と山原怜音(2年、JFAアカデミー福島)がチャンスをつくったが、ネットを揺らすことができない。
逆に前半27分に失点してしまう。スローインから山川と相手選手が競り合い、山川が競り勝ったが、相手選手が倒れてPKとなった。これで先制され、筑波大はリーグ戦で4試合連続して先制点を奪われた。
その後筑波大はFW森海渡(1年、柏レイソルU―18)や三笘、山原を中心にゴールに迫るが、決定力に欠けた。最大のチャンスは38分。知久がドリブルを仕掛け、相手ディフェンスの間から前線のFW和田育(1年、阪南大)へスルーパス。和田がシュートを放ったが、相手ディフェンスに当たり、惜しくも枠の外へ。このまま0-1で折り返した。
エース三笘のゴールも、あと一歩及ばず
後半、両者ともにチャンスをつくり、攻防が激しく入れ替わる。追いつきたい筑波大は山川を下げ、FW犬飼翔洋(4年、中京大中京)を投入。だが20分、早稲田に追加点を決められる。相手右サイドのドリブル突破を止められず、クロスから失点した。
後がなくなった筑波大は猛攻に出た。犬飼の投入により右サイドハーフにポジションを移した和田が躍動。同じく右サイドバックにポジションを移した山原と息の合ったコンビネーションを見せ、右サイドを制圧。31分には和田の落としたボールを山原がダイレクトでクロス、犬飼が合わせにいったが、防がれた。いい連携を見せた直後にセカンドボールを拾った筑波大は、再び右サイドから攻撃。和田のクロスからエース三笘が左足で決めた。
1点差に詰め寄った筑波大は、さらに攻勢に出る。ロスタイムには、後方からの浮き球を森海渡が頭で落とし、MF渡邊陽(3年、浦和レッズユース)がスライディングで合わせたが、わずかに左へそれた。そのまま試合終了。悔しさが残る一戦となった。
チーム勝利のカギは、早い時間帯での得点
試合後、小井土正亮監督は「4年生のパフォーマンスがよくなかった。森海渡や和田とか、1年生のおかげで何とか(早稲田大と)張り合えたけど、力負けしてしまった」と話した。
前期を終えて、筑波大は5勝4敗2分け。第7節終了時点では無敗だったが、終わってみれば中断前を含み4連敗となってしまい、順位も7位と、インカレ圏外となった。勝利した5試合に目を向けると、前半で複数得点(駒澤大戦、明治大戦)、前半を守り切り後半開始15分以内に先制(東洋大戦、順天堂大戦、流経大戦)と、2つのパターンが見えてくる。セオリー通りだが、早い時間帯での得点がチームの勝利のカギとなっている。
王座奪還に向けて、立て直しの時
得点を増やすには、得点パターンの多彩さも求められる。前半戦では、大一番の場面では左サイドの三笘からの攻撃に偏重してしまった。そのため、三笘は相手選手から非常に警戒され、チャンスをつくっても自身でシュートを打てず、ラストパスを送っても中に誰もおらず、ゴールが生まれないというケースが目立った。この試合でみせた右サイドの山原と和田の連携の強化や、森海渡らFW陣の覚醒も、後半戦では必須となる。
また、失点に目を向けても、前期の11試合中6試合で先制を許した。先制された試合では1勝4敗1分けと、勝率も低くなっているため、後半戦に向けて改善の余地がありそうだ。先制されても勝利をつかんだのは開幕戦だけだ。
大学チームはプロのようにシーズン途中に新たな戦力を獲得できるはずもなく、既存の選手らの台頭で、チーム内競争を活性化させる必要がある。例えば、現3年生は渡邊と知久が多くの試合に出場しているが、他のメンバーはなかなか出場機会を得られていない。「怪我や実力不足でメンバーに入れていない」と小井土監督も話す3年生は奮起の必要がある。コンディションさえ整えば戦力となる選手は多いだけに、後期はピッチ内で輝く姿に期待がかかる。もちろんそれは3年生だけでなく、すべての選手に言えることだ。タイトル、そして王座奪還に向け、筑波大は試練のときを迎えている。