アイスホッケー

東洋大が11年ぶりの学生日本一 悩んできた男たちが原点回帰でつかんだ栄光

東洋が11年ぶりにインカレ優勝。釧路は東洋にとって1995年からインカレ6連覇をスタートさせた最初の地でもある(すべて撮影・山口真一)

アイスホッケー日本学生氷上競技選手権 決勝

12月29日@北海道・日本製紙アイスアリーナ
東洋大 6-3 法政大
東洋大が11年ぶり10度目の優勝

12月25日に始まったアイスホッケーのインカレは29日に決勝を迎え、東洋大が法政大を破り、11年ぶり10度目の学生日本一に輝いた。スコアは6-3。数字を見れば点の奪い合いのように思えるが、第2ピリオド後半まで両チーム合わせて1ゴールという、しびれる展開だった。

春に笑い秋に泣く、仕切り直して挑んだ冬

決勝の相手は30年ぶりの優勝を狙う法政。ゴール前では激しいバトルが展開された。それでも第1ピリオド18分、東洋ルーキーのFW宮田大輔(白樺学園)が相手ゾーン左の遠目から先制のゴール。試合がこれで動き出すと思いきや、そこから両チームとも最後の一線を割れず、緊迫した展開が続いた。試合を左右する次のゴールは、東洋が奪った。第2ピリオド15分。FW清水怜(りょう、3年、同)が右サイドからたたき込んで2点目。気分よくこのピリオドを終えた東洋は、第3ピリオド立ち上がりから得点を積み重ね、勝利を決定づけた。

最少得点のまま35分間が経過。東洋待望の2点目を清水(48番)が挙げた。白樺学園高時代、「悲劇のキャプテン」と言われた悪夢を卒業するゴールだった

東洋は春の関東選手権で他校を圧倒し、10年ぶりの優勝を果たした。秋の関東リーグとインカレと合わせた「3冠」も難しくはない。そう思わせるほどの勢いがあった。しかし春を制した満足感があったのか、秋は伸び悩んだ。上位校との対戦では緊張感のある試合をする一方、下位校を相手に取りこぼす。早い段階で優勝の可能性がなくなり、明治大、中央大、早稲田大に次ぐ4位に終わっている。

鈴木貴人監督は「もう一度チームをつくり直そう。そういう気持ちでインカレ前の練習に臨みました」と言う。法政との決勝の前も、「まずは場面、場面でやるべきことをしっかりやること。優勝を狙うというより、まずは秋のリーグで2連敗している法政さんにリベンジを果たす気持ちで戦います」と話していた。

鈴木監督は日本代表の元主将だけに、選手の側に立った目線で指導を続けてきた

鈴木監督が就任したのが7年前。日本代表の元主将であり、トップリーグのスターとして活躍した鈴木監督にとって、大学での指導は「予想していた以上に難しい」ものだった。イチから積み上げ、完成に近づいたと思ったら4年生が卒業。この繰り返しだ。毎年、顔が入れ替わる選手を指導する難しさを痛感する一方で、周りからは「東洋はあれだけの選手をそろえてなぜ勝てないんだ」という声も聞こえてくる。「ここまで本当に長かった」。鈴木監督は実感を込めて振り返る。

優勝できない、そういう運命なのかと悩んできた

勝てそうで勝てない。それは鈴木監督だけでなく選手も同様だった。先制ゴールを決めた宮田と2点目を奪った清水は、ともに白樺学園高のOB。高3のときにインターハイ決勝までいきながら、優勝には届かなかった。とくに清水は、候補筆頭に挙げられながら主将として優勝に導けなかった3年前の冬をいまも悔やんでいる。

「高校もそうだし、大学でも全然優勝できなくて。自分はそういう運命なのかとけっこう悩みました。今年、ホッケーに対する考え方を変えたんです。運命をなげく前にまず自分が変わろうって。チームの練習が終わってから個人練習を始めて、そこから自分が変われた気がします」

このインカレでは得点王、さらにMVPに輝いた。

主将の川口(右)は5大会前に準決勝で終わった兄・尚耶(左)の分も戦い抜いた

主将のDF川口竣耶(しゅんや、4年)も白樺学園出身。高1のとき、唯一インターハイで優勝したが、川口自身は足を骨折して試合に出ていない。「東洋に入ってからも、ずっと優勝できない。自分は日本一になれない選手なんだ。そう思ったこともありました」

グイグイ引っ張るタイプではなく、おとなしくて優しい性格。ただ最後のインカレを前にして、選手たちにはこう話していた。「気持ちを引き締めて、チャレンジャーとして、走って、当たって、シュート。もう一度、原点に戻ろう」。このインカレでは春以上に、チームが一つになれたと感じている。

メンバーは悪くないのに、結果が出ない。いいところまでいきながら、あと一歩届かない。その繰り返しで、東洋が最後にインカレで優勝してから実に10年が過ぎていた。「まずは場面、場面で、やるべきことをしっかりやる」。鈴木監督の言葉がチームに浸透したこの冬、日本一になれなかった男たちは、やっと心から笑顔になれた。