立命館大・村松灯主将 肌で感じた「世界」のレベル、チームに還元して駅伝王座奪還を
駅伝で王座奪還を狙う立命館大学女子陸上競技部。2年連続で主将を務めるのは村松灯(4年、立命館宇治)だ。自己記録は5000m15分52秒10、10000m31分51秒78と全国トップレベル。日本代表としてFISUワールドユニバーシティゲームズや世界大学クロスカントリー選手権にも出場した、「エース」である。
主将は2年連続、競技面でもエース
ルーキーイヤーから3年連続で全日本大学女子駅伝、富士山女子駅伝に出走。全日本インカレ、学生個人選手権で入賞経験があり(大学2年時の全日本インカレ5000m2位など)、個人としても着実に結果を残してきた。大きなけがで離脱することなく、主要大会に安定した成績で走っているのが、「エース」と呼ばれる理由の一つだ。
村松は自身の強みを「どんな場面でも冷静にレースを判断して冷静に走れること」と語る。「一番大きいのは経験だと思います。全国の舞台で走る経験を踏む数が増えるにつれてこういうレース展開もあるんだと知って、それを練習に持ち帰って、様々なパターンを想定してどんなレースでも対応できるようになったのが大きいと思います」
主将として、チームを支え、支えられ
駅伝がさかんな京都出身。幼い頃からマラソン大会で優勝するなど、長距離選手の素質があった。当時地元の小学生の憧れだった「大文字駅伝」への出場を目指し、小学校5年生で本格的に陸上を始めた。
中学2年で全日本中学校陸上競技選手権(全中)に出場して以降、全国大会の常連だ。しかし「全国大会には出場できても入賞できなくて、『全国の人すごい』と思っていました」。高校進学のタイミングで「ここで陸上をやめようかな」とも考えたが、「駅伝で日本一になりたい」という気持ちが勝り、強豪の立命館宇治高校へ進学。大学でも「日本一になる」という目標を胸に走り続けている。
大学3年生シーズンの昨年、チームの主将になった。中学、高校でもキャプテン経験があるが、「高校までは先生の指示を伝えることが多かったですが、大学になって、自分が指示する、チームをつくる立場になった。チームが良くなるか崩れるかが、自分にかかっていると思うようになりました」と違いを感じていた。「キャプテンになって自分のレースに対する目標が変わりました。自分の競技者としての目標が大きく変わったということはないですけど、『キャプテンとして自分が結果を出して走りでチームを引っ張らないと』と、より思うようになりました。キャプテンになってすぐは自分も未熟でしたし、『自分ではできている』と思っていても全然できていないことが多かった。コーチやいろんな人に教えてもらって、支えられているなと感じて。今まではキャプテンがチームを支えていると思っていましたが、周りに支えてもらってやっとチームを引っ張る立場として前に立てるのだと実感しました」
学生日本代表で2度世界へ 不完全燃焼を糧に
昨年は学生一番の目標だった、FISUワールドユニバーシティゲームズに出場。憧れの日本代表ユニホームで世界と戦った。結果は5000m12位。「日本代表っていうところで満足してしまったというか、選ばれてうれしい気持ちで本番全然力を発揮できなかった。ちょっと舞い上がってしまった自分がいました」と振り返る。「(海外の選手は)見た目から自分より速く、強く見えました。ワールドユニバーシティゲームズを走って、速いだけでは勝てないなと思いました。『勝つ』っていう思いがどれだけ強いかが大切だと気づいたので、それはレースが終わってから忘れないようにしています」
二度目の日本代表に選ばれた今年2月の世界大学クロスカントリー選手権。「代表に選ばれる喜びだけでなく、世界で戦える喜びがありました。絶対に結果を残したい気持ちが強かったです」と挑む姿勢が違った。しかし、「あまり練習が積めず、自分の中で不完全燃焼のまま終わってしまいました」と16位でフィニッシュ。同じ日本人選手が表彰台に上がる姿を見て、「全力を出し切れていたらどこまで勝負できていたのか。勝負できなかったことが悔しいです」ともこぼした。
世界のレベルを肌で直接二度も感じた。「世界大会の経験をチームに還元出来たら」と、自分の成長がチームの成長につながると信じている。
新戦力入学に妹の復活 チーム力に期待
目指すは駅伝の王座奪還ただ一つ。既に5000m15分台の記録を持つルーキーが3人と、強力な新戦力も加わった。「新入生をはじめみんな元気です。この時期は例年けが人が出るんですが、全員が走れているのが大きい。勝つためには一人ひとりが5000m、10000mの記録を出していかなくてはならない。それぞれが自覚を持って練習に励んでくれたら」とチームへ期待も込めつつ、冷静に分析する。「昨年は優勝を目指すと言いながら、3位以内をとろうという気持ちが正直あった。今年は優勝しか目指しません」と頼もしく意気込んだ。
心強い存在も帰ってきた。年子の妹、結(ゆう、3年、立命館宇治)が4月6日の京都学生陸上競技対校選手権(京都インカレ)で約1年半ぶりに実戦復帰。「チームみんなに期待してるんですが、妹なんでやっぱり個人的に意識しますね(笑)。真面目で一つ一つの目指すレベルが高い。他の人なら少しレベルを下げてしまいたいところが結は違う。人一倍努力家なところも尊敬しています」と語る。「休みの日はお菓子作りを教えてくれたり。最近は結にすすめられた小説にハマって読んでいます」とほほ笑ましいエピソードも教えてくれた。
主将としては2年目のシーズンとなる。「去年は『自分がチームを引っ張るんだ』という気持ちでいっぱいいっぱいでしたが、今年は一人ひとりをしっかり見られるようになりました。元気がない子に声をかけたり、チーム全体を見られるようになったのは自分の中で成長かなと思います」
「プレッシャーを感じられるのは幸せなこと」
キャプテン兼チームのエース。プレッシャーは計り知れないが、「プレッシャーがないというとうそになりますが、それを感じられるのは幸せなこと。期待してもらえることはうれしいですし、自分にとってはプラスに働いていると思います」とはにかむ。
大学では経済学部に所属し、勉学にも余念なく力を注いでいる。「英語力を向上させたい」と英語だけで開講されるゼミに所属し、制度の勉強や食品ロス問題に取り組んでいるという。
「駅伝で日本一」という長年の目標を目指し、学生ラストシーズンを全力で走り切ってみせる。