陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

箱根駅伝、青山学院が2年ぶり5度目のV 戦術とチーム力でつかんだ勝利

「1」を掲げながら、アンカーの湯原が笑顔でゴールに飛び込んだ(すべて撮影・藤井みさ)

第96回箱根駅伝 

1月2~3日@大手町~箱根の10区間217.1km
1位 青山学院大 10:45:23
2位 東海大 10:48:25
3位 國學院大 10:54:20
4位 帝京大10:54:23
5位 東京国際大 10:54:27
6位 明治大 10:54:46
7位 早稲田大 10:57:43
8位 駒澤大 10:57:44
9位 創価大 10:58:17
10位 東洋大 10:59:11
11位 中央学院大 11:01:10
12位 中央大 11:03:39
13位 拓殖大 11:04:28
14位 順天堂大 11:06:45
15位 法政大 11:07:23
16位 神奈川大 11:07:26
17位 日本体育大 11:10:32
18位 日本大 11:10:37
19位 国士舘大 11:13:33
20位 筑波大 11:16:13
(参考記録)関東学生連合 11:12:34
2位まで新記録

1月3日、箱根駅伝の復路があり、青山学院大が往路優勝の勢いのまま、2年ぶり5度目の総合優勝を果たした。5連覇を狙った前回は2位に終わり、今シーズンの出雲駅伝と全日本大学駅伝でも勝ちきれなかった。しかし箱根駅伝では4区から首位を明け渡すことなく、10時間45分23秒の大会新記録。原晋監督は「1年間、ある意味私のわがままを聞いてくれた学生たち、中でも4年生に対して本当に感謝したいと思ってます。本当についてきてくれてありがとう。かっこいい4年生たちでした」と口にした。

青山学院大3年ぶりの往路V ルーキー起用ズバリ、「やっぱり大作戦」完遂なるか

往路、吉田祐也の「計算+α」な走りでV

12月16日に実施された箱根駅伝の事前記者会見の冒頭で、原監督は「戦国駅伝の中で、戦術駅伝だと思っている。例年に比べ、より具体的な話をできないことをご了承ください」と述べた。

優勝記者会見を終え、原監督はやっと戦術を明かした

そして迎えた箱根駅伝、原監督の戦術はこうだった。1区は外国人選手がきても先頭から100m以内に絶対にくる選手、そして2区はその差を詰められるような対応力がある選手。「そう考えたら1区は吉田圭太(3年、世羅)、2区は岸本大紀(1年、三条)しかいない」と二人の起用を決めた。原監督の期待通り、吉田圭太と岸本は好走し、トップで3区につないだ。

3区には箱根駅伝に向けて調子を上げてきた鈴木塁人(4年、流通経大柏)を、続く4区には吉田祐也(4年、東農大三)を配置。とくに区間新記録をたたき出した吉田祐也に対しては「計算より+α。そこまでいくとは思ってませんでした」とたたえた。5区の飯田貴之(2年、八千代松陰)も区間新記録の快走で、3年ぶりの往路優勝を飾った。

復路、悩んだ8、10区は結果「誰が走っても走れた」

復路でのポイントは6区と9区と考えていた。その6区を任された谷野航平(やの、4年、日野台)は「往路の流れを絶対切らしてはいけない」という思いでスタートラインに立ち、目標としていた58分30秒を切る58分18秒で中村友哉(4年、大阪桐蔭)に襷(たすき)をつないだ。「7区で東海との差を詰められるかもしれない」と原監督は踏んでいたが、中村は2位に上がってきた東海大と2分1秒の差を残して岩見秀哉(3年、須磨学園)へ襷リレー。

岩見は前回、4区で区間15位とブレーキになったが、今回は自らの走りで優勝を引き寄せた

2日前に出走が決まった岩見は「とても緊張していた」と口にしたが、この2分1秒差で落ち着いて走り出せたと言う。結果、区間2位の好走。ラスト5kmの遊行寺の坂を力強く登る岩見の姿を見て、原監督は「勝ったな」と確信した。9区の神林勇太(3年、九州学院)は区間賞の走りで湯原慶吾(2年、水戸工業)につなぎ、東海大との差は3分42秒。そして湯原は笑顔で大手町に帰ってきた。

原監督は戦術を考える中で、とくに8区と10区は最後まで悩んだと言う。出走した岩見と湯原のほか、新号健志(3年、秋田中央)、早田祥也(2年、埼玉栄)、近藤幸太郎(1年、豊川工業)も候補に挙がっていた。「遜色なく、早田もよかった。新号も近藤もよかった。誰が走っても走れたでしょう。それでもみんな素直に受け入れてくれて、サポートしてくれました。改めて青学っていいチームなんだなって思いましたよ」と原監督は口にした。

アンカーの湯原のゴールを主将の鈴木(左)と副将の吉田が笑顔で迎え入れた

怒られ続けた4年生、鈴木主将「財産になる」

原監督は今シーズンを振り返り、とくに4年生には“無理”を言ってきたと振り返る。普段の生活や練習などを見て、ことあるごとに「俺だったらこんな4年生についていきたくないよ」とあえて口にして伝えてきた。その言葉に4年生が奮起し、とくに主将の鈴木は「本当は僕がもっと厳しい言葉を言わないといけなかったけど、監督が嫌われ役を買って出てくださったと思ってます」と原監督の思いを受け止めた。夏合宿以降、チームの雰囲気も高まり、最後の箱根駅伝では往路から力を見せつけた。そんな4年生を前にし、原監督は「いまはついていきたい」と笑顔で答えた。

原監督は今大会にむけて「やっぱり大作戦」を掲げた。そこには「やっぱり4年生強かった、やっぱり青山学院強かった、やっぱり青山学院応援してよかった。そういう風な形で、大手町に笑顔でゴールをしたい」という思いが込められていた。そして最後には大手町で笑顔が広がった。鈴木はレース後、「(後輩たちは)4年生がたくさん怒られてきた姿を見てきたでしょうから、それが経験になって財産になると思う。すごく楽しみなチームになると思います」と次世代への期待を口にした。

原監督が掲げた「やっぱり大作戦」を笑顔で完遂