ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

新国立競技場で早明最終決戦 明治は連覇、早稲田は11シーズンぶりの頂にかける

1年生から組んできた早稲田の齋藤(中央)と岸岡のハーフ団にとってもラストバトル(すべて撮影・谷本結利)

ラグビー第56回全国大学選手権 決勝

1月11日@東京・国立競技場
明治大(関東対抗戦1位)vs 早稲田大(同2位)

新装なった東京・国立競技場で111日、ラグビーの初めての試合として第56回大学選手権の決勝がある。2シーズン連続14度目の優勝がかかる明治大(関東大学対抗戦1位)と、11シーズンぶり16度目の頂点を狙う早稲田大(同2位)との「早明戦」だ。 

決勝では明治の6勝3敗

両者が大学選手権決勝で顔を合わせるのは、実に1996年度以来23シーズンぶり。決勝での対戦成績は明治が63敗とリードしており、早稲田が明治を下して優勝したのは1976年度が最後である。 

12日の準決勝では、早稲田が関西4連覇中の天理大を前半から寄せ付けず、57-14と圧倒した。明治は調子を上げてきていたリーグ戦王者東海大を真っ向勝負で29-10と下した。 

ともに決勝に向けて上り調子の両校は、決戦2日前の9日に先発予定メンバーを発表。明治、早稲田ともに先発、控えの23人すべてが準決勝と同じになった。うまくいってるときは変えない、という勝負の鉄則通りだ。 

昨年度の大学選手権では明治が準決勝で早稲田を31-27で下し、そのまま優勝した。大分で開催された昨春の「早明戦」も明治が29-14で勝ち、12月の対抗戦でも明治が36-7と圧倒した。

早稲田は大前提としてマイボールスクラムをキープすること

負けが続く早稲田はチャレンジャー

従って、早稲田としてはチャレンジャーとして気持ちを固めやすい。相良南海夫監督が「齋藤キャプテンのチームとしての集大成を見せたい」と話したように、主将のSH齋藤直人(4年、桐蔭学園)、SO岸岡智樹(同、東海大仰星)、CTB中野将伍(同、東筑)らBK陣は、個性豊かなで才能のある選手がそろう。 

とくに齋藤と岸岡のハーフ団は4年前の花園の決勝で対戦した間柄で、1年生のころから早稲田を引っ張ってきた。そして最終学年でついに準決勝の壁を突破した。早稲田の勝利は、二人の活躍抜きには考えにくい。 

早稲田としては、FW陣がどこまで踏ん張れるかも大事になるだろう。準決勝の天理戦ではラインアウトディフェンスでも常に相手にプレッシャーを与えて、後半からはスクラムも修正できたのが勝利の大きな要因になった。 

FWがどこまで明治に対抗できるか

前提としてマイボールラインアウト、スクラムはしっかりキープしたいところだ。ゴール前のモールでは12本やられてしまうかもしれないが、相手FW陣をゴール前に入れない工夫も必要だろう。HO森島大智(早稲田実)、LO三浦駿平(秋田中央)、副将FL幸重天(大分舞鶴)の4年生FW3人の奮闘に期待したい。 

準決勝のアタック面ではやはり、CTB中野の復帰が大きかった。昨年度の対抗戦で早稲田が31-17で勝ったときも、やはり中野が2トライを挙げている。また力強さが増したFB河瀬諒介(2年、東海大仰星)、決定力の高いWTB古賀由教(3年、東福岡)らもおり、中野が上手くバックスリーを使えばトライが生まれるだろう。 

試合の流れを変えられるCTB中野(中央)が帰ってきたのは、早稲田にとって大きい

FW陣がどこまで明治に対抗できるか、そして齋藤、岸岡のハーフ団が早稲田に有利な展開にもっていけるかどうかが、11シーズンぶりの優勝への条件となるだろう。 

今シーズンの早稲田のスローガンは「For ONE」。チーム一丸となって令和初の大学王者となり、日本一になったときだけに歌える第二部歌「荒ぶる」を新しい国立競技場に響かせられるか。 

奇をてらうことなくぶつかれる明治

対する明治としては、シーズン当初から主将のHO武井日向(4年、國學院栃木)が「連覇というより自分たちの代で優勝したい」という言葉を繰り返している通り、対抗戦はほかのチームの追随を許さず、圧倒して全勝優勝を果たした。 

「連覇というより自分たちの代で勝ちたい」と明治の武井主将(中央)

ややメンバーを落とした大学選手権準々決勝の関西学院大(関西3位)戦のみ22-14と苦戦したが、準決勝のリーグ戦王者・東海大戦では、セットプレーや接点でプレッシャーをかけ、決定力のあるBKで取りきるという明治らしいラグビーを展開。29-10と快勝し、しっかり調子を上げてきた。 

明治としては奇をてらうことなく、今シーズンやってきたラグビーで正々堂々と立ち向かうはずだ。まずはFW陣が接点、そしてスクラム、ラインアウトでプレッシャーをかけてペースをつかみたい。 

片倉はラインアウト、箸本はボールキャリー

HOの武井主将を筆頭に、PR安昌豪(大阪朝鮮)、笹川大五(明大中野)、FL石井洋介(桐蔭学園)、No.8坂和樹(明大中野八王子)と、先発のFW8人のうち5人が4年生。加えてLO片倉康瑛(3年、明大中野)はラインアウトのエキスパート、同じくLO箸本龍雅(同、東福岡)は大学界屈指のボールキャリアーである。 

SO山沢(中央)の出来が明治の得点力を左右する

そしてスペースができれば、今シーズン好調のSH飯沼蓮(2年、日川)、ランとキックにセンスあふれる SO山沢京平 (3年、深谷)のハーフ団がボールを動かし、エースWTB山﨑洋之(4年、筑紫)、副将のWTB山村知也(同、報徳学園)、FB雲山弘貴(2年、同)がフィニッシュする。もちろん、スクラムトライ、モールを押し込んでのトライという得点パターンもある。 

武井「こちらもハングリーにいく」

武井主将が「早稲田は借りを返そうと挑んでくるはず。こちらもハングリーにチャレンジャーとして優勝を目指します」と言えば、田中澄憲監督は「中野と相良が復帰すれば、早稲田はまったく違うチームになる」と話すように、心に隙はない。武井主将が先頭に立って体を張れば、勝利に大きく近づくはずだ。 

明治のリーダーのひとり、CTB射場(中央)

今シーズンの明治のスローガンは「真価~ HungryDetailAction~」である。武井主将以下、計10人のリーダーが中心となって、ラグビーはもちろんのこと、私生活からチームを盛り上げてきた。早稲田というライバルの挑戦をはね除け、明治が連覇とともに令和初の大学王者となれるだろうか。

 ◇明治大学メンバー
【先発】
1安昌豪(4年、大阪朝鮮) 2武井日向(主将、同、國學院栃木) 3笹川大五(同、明大中野) 4片倉康瑛(3年、同) 5箸本龍雅(同、東福岡) 6石井洋介(4年、桐蔭学園) 7繁松哲大(3年、札幌山の手) 8坂和樹(4年、明大中野八王子)9飯沼蓮(2年、日川) 10山沢京平 (3年、深谷)11山﨑洋之(4年、筑紫) 12射場大輔(同、常翔学園) 13森勇登(3年、東福岡) 14山村知也(4年、報徳学園) 15雲山弘貴(2年、同)·

 【控え】
16松岡賢太(4年、京都成章) 17山本耕生(2年、桐蔭学園) 18大賀宗志(1年、報徳学園) 19髙橋広大(3年、桐蔭学園) 20柴大河(同、國學院久我山) 21丸尾祐資(1年、報徳学園) 22児玉樹(2年、秋田工) 23石川貴大(3年、報徳学園) 

◇早稲田大学メンバー
【先発】
1久保優(3年、筑紫) 2森島大智(4年、早稲田実) 3小林賢太(2年、東福岡) 4三浦駿平(4年、秋田中央) 5下川甲嗣(3年、修猷館) 6相良昌彦(1年、早稲田実) 7幸重天(4年、大分舞鶴) 8丸尾崇真(3年、早稲田実)9齋藤直人(主将、4年、桐蔭学園) 10岸岡智樹(同、東海大仰星) 11古賀由教(3年、東福岡) 12中野将伍(4年、東筑) 13長田智希(2年、東海大仰星) 14桑山淳生(4年、鹿児島実) 15河瀬諒介(2年、東海大仰星)

【控え】
16宮武海人(2年、早大学院) 17横山太一(同、國學院久我山) 18阿部対我(同、早稲田実) 19中山匠(4年、成城学園) 20大﨑哲徳(2年、國學院久我山) 21小西泰聖(1年、桐蔭学園) 22吉村紘(同、東福岡) 23梅津友喜(4年、黒沢尻北)