大学ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

明治の右プロップ笹川大五 親身に教えてくれた先輩に感謝「スクラムで圧倒する」

新たな国立競技場で最初に組まれるスクラムに関われるのがうれしい

ラグビー第56回全国大学選手権 決勝

1月11日@東京・国立競技場
明治大(関東対抗戦1位)vs 早稲田大(同2位)

ラグビーの第56回大学選手権決勝は、連覇を狙う明治大(関東大学対抗戦1位)と、11シーズンぶりの優勝を目指す早稲田大(同2位)の「早明戦」となった。新しい国立競技場で初のラグビーの試合で勝った方が、令和の時代最初の大学王者となる。 

大学最後の試合が、自身初の選手権決勝に

「新しい国立競技場で初めてのスクラムが組めるなんて、何より一番うれしいです」と声を弾ませるのが、明治のスクラム、モールといったFW戦のキーマンのひとりである右のPR(プロップ)笹川大五(4年、明大中野)だ。身長186cm、体重115kgの大男である。 

笹川は昨シーズンの大学選手権制覇について「優勝はうれしかったんですけど、試合に出られなかったのは悔しかった」と振り返る。一昨年度はもちろん、昨年度の決勝もメンバー外でスタンドから見ており、笹川にとっては、大学生活最後の試合が、自身初めての選手権決勝となった。 

笹川は準決勝の2日前に目黒の美容室でサイドを刈り上げた

準決勝の関東リーグ戦王者・東海大戦の2日前、1学年上の先輩であるLOの小宮カズミさん(現リコー)に教えてもらった目黒にある美容室で、サイドを刈り上げるフェードカットにした。「高校時代は丸刈りでしたし、少し上が長かったので気合を入れました」 

準決勝、7人が一つになったスクラムがあった

そして迎えた準決勝。明治が29-10と快勝したが、田中澄憲監督、主将HO武井日向(4年、國學院栃木)の二人がともに「キーポイントだった」と指摘した場面があった。 

24-10の後半20分過ぎ、LO片倉康瑛(3年、明大中野)が危険なタックルにより10分間のシンビン(一時退場)となった。数的有利となった東海大は、ゴール前でスクラムを選択。7人でスクラムを組んだ明治は2度の反則。「(トライを奪われるのを想定して)次のプレーのことを考えてました」と田中監督。東海大は3度目の正直とばかりにスクラムを押し込んだ。 

しかし、右のPR笹川、左のPR安昌豪 (4年、大阪朝鮮)、主将HO武井日向(同、國學院栃木)の第一列を筆頭に明治のスクラムを組んだ7人が東海の押しに耐えたことにより、ボールがスクラムからこぼれ、明治がターンオーバーに成功。この攻防が明治に勝利を呼び込んだのは明らかだった。スクラムの要である笹川は「自分たちのセットアップ(スクラムのときの姿勢)を崩さず、7人で組みました。まとまりと低さだけを意識して、いいスクラムが組めた」と、大きな胸をより張って言った。 

スクラム、タックルだけでなくボールキャリーも任せろ

実は準々決勝の関西学院大(関西大学3位)戦は、OBの滝澤佳之コーチの下、1年間かけて鍛えてきたはずだったスクラムで劣勢だった。22-14と苦戦した要因の一つとなった。 

そこで明治のFW陣は、準決勝までのわずかな時間で基本に立ち返った。笹川は「セットアップを少し変えました。対抗戦で調子がよかったので逆に崩れてしまってました。関学さんに教えてもらった。気づかせてもらいました」と振り返る。 

10日間ほどでしっかり修正し、大事な試合で力を発揮できるのは、それまでの練習量の裏付けがあるからでもある。7人でも耐えたスクラムを振り返って、笹川は「うれしかったですけど、運がよかったところもあった。決勝の早稲田戦ではどういう状況でも自分たちのセットアップを崩さないようにしたい」と、腕をぶす。 

「日本一のスクラムが組みたい」と明治へ

笹川は自身と同じ明大中野高から明治学院大に進んでPR/LOでプレーしていた「ジャイさん」こと父の剛さんの影響で、小学4年生から東京・杉並ラグビースクールで競技を始めた。中学はラグビー部のあった聖学院中学に進学、練馬ラグビースクールでもプレーした。高校は恵まれた体格も買われ、ラグビーの推薦で明大中野に進学。だが、高校3年生のとき、東京都の決勝で東京朝鮮に負け、花園には出場できなかった。 

笹川自身初めての大学選手権決勝で、すべてをぶつける(すべて撮影・谷本結利)

「日本一のスクラムを組みたい」と明治に進学したが、武井や現在副将のWTB山村知也(報徳学園)らが1年生からAチームで活躍する一方で、笹川はCチームやDチームでのプレーが続いた。LOに回された時期もあり、なかなか芽が出なかった。 

しかし2年生になると現在の田中監督がヘッドコーチに就任し、プロップとしてトップリーグで鳴らした滝澤コーチがスクラムを担当することになった。「とことん右プロップでやろう」と声をかけられたことにより、より熱心にスクラムに取り組むようになったという。とはいえ、3年生になってもCチームでくすぶっていた。 

そこからの笹川にとって大きな存在となったのが、1学年上で、同じ右PRの吉岡大貴さん(現Honda)だった。吉岡は同じポジションのライバルになり得る笹川に、右PRとしての組み方や、低く組む基本姿勢などを丁寧に教えてくれたという。「吉岡さんに一年間いろいろ教えていただいて、一気にスクラムが変わった。それがすごく生きてます」と、いまも感謝の言葉を口にする。 

今シーズンから不動の3番に

体重は115kgのいまより5kgほど重かったが、ウェイトトレーニングを重ね、体脂肪は26%から21%に減り、フィールドプレーでもより動ける体となった。すると昨年度の対抗戦ではAチームに昇格し、大学選手権決勝こそ出場できなかったが、対抗戦では吉岡さんとの交代で18番をつけ、試合に出られた。そして今シーズンは不動の3番として春から活躍しているというわけだ。 

3年生のときに体脂肪率を落とし、躍動感のあるプレーも出てきた

4年生になり、初の大学選手権決勝の舞台に立つことになった笹川は「決勝戦が早明戦という、本当に一番いい、楽しい展開になりました。僕はトライを取るようなプレースタイルではないので、スクラムと、体重を生かして相手をドミネート(倒す)タックルができればいいです」と、決戦への意気込みを語った。 

もちろん、明治の3番を背負う者として、紫紺のジャージーの意地とプライドにかけて、スクラムでは絶対に負けられない。きっと髪をもう1度切り、準決勝より気合を入れているはずだ。「明治は王道のスクラムを組んでます。早稲田さんも力をつけてますけど、スクラムで圧倒して、隙を与えずに優勝したい」。笹川がスクラムで臙脂のジャージーを押せば押すほど明治が連覇、そして令和最初の大学王者に大きく近づいていく。