明治大・鎌田詩温 エキシビション「明治×法政 ON ICE」を主導「やりきった」
明治大学と法政大学でフィギュアスケートに取り組み、引退する選手たちが出演するエキシビション「明治×法政 ON ICE」が2月24日、ダイドードリンコアイスアリーナ(東京)で開かれた。
2度目の学生主催のエキシビジョン
昨年に続き2度目となる学生主催のエキシビション。明治、法政以外にGPシリーズNHK杯出場の佐藤洸彬(ひろあき、岩手大院)ら、ほかの大学の卒業生を含む15人とアイスダンスの1組が、思い入れのあるプログラムを披露した。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、無観客での開催や中止の判断を当日朝まで迫られたが、なんとか開催にこぎ着けた。観客を500人に制限し、SNSで感染予防を呼びかけ、観客にはマスク着用を求めた。
明治からは山隈太一朗、井上千尋、大矢里佳、今春卒業の鎌田詩温、鎌田英嗣、嶋崎大暉、中野耀司。法政からは小林建斗、小林諒真、佐上黎が出演。ほかの大学からは鈴木潤(北海道大院)、佐藤洸彬(岩手大院)、新田谷凜 (中京大)、渡邊純也(関西学院大)、中村優(関西大)、中野紘輔(福岡大)といった全日本選手権出場の選手たちがゆかりのプログラムを披露し、豪華な舞台となった。
引退する選手からの挨拶では、新田谷から「まだ現役選手として頑張りたい、努力したい」と、現役続行宣言も飛びだし、会場を沸かせた。
この企画を始めるにあたり、中心となったのが、卒業とともに現役を引退する明治の鎌田詩温(4年、札幌一)だった。大学限りで引退する選手たちにとって、12月の全日本選手権や1月のインカレ、国体が最後の試合となる。そこで後輩たちから花束を受け取ったり、引退の挨拶をしたりするというのが毎年の光景だ。
先輩の引退の花道、作ってあげたかった
だが、鎌田にはひっかかっていることがあった。大学2年生の冬、足を骨折して競技から離れた。大学3年生でスケート部の主務として大会参加手続きなど選手たちを裏方として支えていた。
「僕らの一つ上の先輩方がけがなどで成績が振るわず、全日本選手権や国体に出られなかった。ちゃんとした引退の場所がなかった」と鎌田。「先輩たちの引退の花道を作ってあげたい」。その思いから、企画を作り上げた。
また、明治スケート部の認知度向上にも取り組んだ。フィギュアスケート、スピード、アイスホッケーの3部門があるが、「実力はあるけれど知名度がまだまだ低い」というのが課題だった。
全日本選手権を経験した鎌田は「全日本は会場が満員になるのに、学生の大会はお客さんが少なくて寂しかった。自分がスケート部を変えたいと思った」と言う。
中京大や関大のような専用リンクを建設したいという思いも重なり、明大スケート部をもっと知ってもらうために部門ごとにSNSを駆使して積極的に情報発信してきた。4年生になるとスケート部の総合主将になり、今年も「明治×法政 ON ICE」を迎えた。
「僕のわがままで来てくれた」と鎌田。北海道から九州まで、ほかの大学の選手たちが鎌田の呼びかけで集まった。鎌田は映画『美女と野獣』より「Evermore」を舞った。ロマンチックで重厚な音楽にのせ、ジャンプやスピンを決めた。
待っていたサプライズ
最後に選んだ曲はアニメ「ルパン三世」のテーマ曲。大学1年生の2016-17年シーズン、初めて全日本選手権に出たときのショートプログラムだ。「たくさんの人に僕のスケートを知ってもらうきっかけにもなった。僕のスケート人生を変えてくれたプログラムです。小さいころからのスケート人生を振り返って、やりきれたという思いで滑りました」
ショーのラストには、サプライズが待っていた。花束を贈られた鎌田を囲み、出演した選手たちが「Evermore」の曲にのせてオリジナルプログラムを披露。涙を浮かべる鎌田のもとに、赤いバラを届けた。「たくさんの方に、感謝してもしきれないほど感謝してます」と挨拶した。
この春からメーカーで働きながら、明治スケート部のコーチも務める。鎌田のスカウト活動の成果もあって入部した2018年世界選手権銀メダルの樋口新葉をはじめ、明治には全国クラスの選手がそろい、層が厚くなっている。来年の春には、2016年世界女王ジュニア女王の本田真凜も入学する。
スケート界、もっと盛り上げたい
スケート部を変えていこうと動いてきた鎌田は「大学やプロではないスケート界をもっと盛り上げていく活動をしていきたい」と将来を見つめる。
「4年間ってやっぱり短いな。でも、いま本当に僕はベストを尽くせたなと思ってます」
そう語る鎌田詩温の顔は、晴れやかだった。