野球

特集:東京六大学 2020真夏の春リーグ

立教大野球部・溝口智成監督 「その時」を信じて心1つに「今」を乗り越える

2017年春季リーグで優勝したときの溝口監督(中央)と選手たち(撮影・柴田悠貴)

東京六大学野球連盟は4月5日、5月下旬に開幕日を延期し、1試合総当たりの方式に変更してリーグ戦開催の準備を進めると発表した。現在、今年2回目の活動休止中の立教大学野球部。溝口智成監督に新型コロナウイルスに対する取り組みと、1試合総当たり方式に変更となる春のリーグ戦について話を聞いた。

3月の段階で約2週間活動を休止

本来ならチーム力を高めるべき春の時期。立教も新型コロナウイルスの影響で、予定通りにスケジュールを消化することができなかった。大学としての活動方針を受け、まず2月28日に3月2日から予定されていた春キャンプの中止が決定。3月2日には3月15日までの活動中止が決まった。オープン戦も2月27日を最後に、3月中の試合は全て中止になった。2017年春に59年ぶり4度目の大学日本一に導いた溝口監督は「(新型コロナウイルスへの)対応は、早い方だったと思います」と言うと、こう続けた。

「3月中は普通に練習やオープン戦を行っている大学も少なくなく、活動中止になった時は周りから『そこまでやるの』といった声もありました。それが4月に入ってから、一気に情勢が変わって……ウチも緊急事態宣言が発令された翌日から、2回目の活動中止に入りました」

3月の活動休止の際は今ほど事態が切迫していなかった。開幕の延期も発表されていなかったこともあり、溝口監督は休止に入る前に、選手それぞれの課題を伝えた上で、「活動休止期間中に『究極の自主練習』をするように」と話をしたという。選手たちも自覚を持って自主練習に取り組み、休止明けの3月16日には万全の状態でグラウンドに現れた。学校からの達しで、朝晩2回の検温が義務付けられたほか、グラウンドに入れる選手は30人までという条件があったため、チームを5班に分ける必要もあったが、こうした中で緊急事態宣言が発令された4月7日まで練習が続けられた。

SNSでの主将の言葉がチームの支えに

現在の活動休止は、3月の時とは意味合いが全く異なるという。

「状況が状況ですからね。今回は自主練習の指示もしてません。不要不急の外出を自粛するなど、人としてすべきことをしっかりやってくれたら、と思ってます」

1試合総当たり制になると発表されたリーグ戦についても、「現状では戦い方までイメージができていない」と溝口監督。ただし、試合方式が変更になっても、チームの課題は変わらないとする。

昨年は大阪桐蔭から入学した山田健太(中央)が、1年生ながら4番で活躍した(撮影・杉山圭子)

「先発投手ですね。ウチは計算できるのが、目下のところ中川颯(4年、桐光学園)だけなので……。1試合総当たりになってもおそらく連戦になるでしょうから、2戦目の先発、これがカギになると思います」

活動休止中の選手に向けて、野球部のフェィスブックやツイッターなどで、心に刺さる言葉を発信し続けているのが、主将の宮慎太朗(4年、市船橋)だ。野球部のフェィスブックでは「一緒に乗り越えよう」と題したメッセージ動画を配信。伝統のピンストライプのユニフォームに身をつつんだ宮は、現在の率直な心境を吐露しつつも、部員一人ひとりが自覚を持って行動していくことが重要で、しばらくは我慢の時だと訴えかけている。そして最後には「コロナウイルスが収束した後には明るい未来が待っています。気持ちだけは前向きにして、一緒に乗り越えよう」と力強い呼びかけを。溝口監督によると、宮主将の言葉は部員たちの大きな支えになっているという。

「どんな形でもいいから、神宮でやらせてあげたい」と親心を示す溝口監督。立教大野球部はその時を信じて、心1つに「今」を乗り越えていく。