野球

特集:東京六大学 2020真夏の春リーグ

法大野球部エース・鈴木昭汰の「覚悟」 春秋連覇、そして次のステージへ 

リーグ戦4試合登板とフル回転で優勝に貢献した鈴木

東京六大学野球春季リーグ戦

8月10日~18日@明治神宮球場
優勝(3季ぶり46回目)

「夏開催」、「1試合総当り」。異例ずくめのリーグ戦を迎えた神宮球場で、連日「おっしゃ!」という威勢のよい声を上げ、三振の山を築く左腕がいた。鈴木昭汰(4年、常総学院)は今季4試合に登板し、防御率は規定投球回到達者としてはチームトップの1.54。安定した投球を見せた。中でも印象的だったのが、スタートゲームとなった東大戦だ。

伸びのある直球と、鋭く曲がるスライダーを軸に相手打線を圧倒。6回無失点11奪三振の快投で、開幕戦勝利の立役者となった。本人も「初戦という大事な場面で勢いづける投球ができた」と語ったように、この東大戦での勝利が優勝への流れを作ったことは間違いない。その後もスターターとしてはもちろん、要所を締めるリリーバーとしても登板。さまざまな場面で青木久典監督の起用に応え、投手陣の柱としてフル回転した。

緊急事態宣言下、地元で過ごした日々

今年4月に緊急事態宣言が発令され、チームは選手たちが衣食住を共にする寮を一時解散。各個人の地元に戻ったり、そのまま寮にとどまったりと野球部は散り散りに。鈴木も例外ではなく、地元である茨城県に戻り、リーグ戦開催すら危ぶまれる苦しい日々を過ごしていた。

だが、そのような状況下においても鈴木は、リーグ戦開催だけを考え、ひたすら練習に打ち込んだ。実家から近く、母校でもある常総学院高のグラウンドを借り、現役の部員たちに混ざって汗を流す。基礎から徹底的に見直したというトレーニングは法大で行っていたものよりも量を増やし、夏にかける思いをぶつけた。

優勝が決まり、母校で基礎から徹底した個人練習が正しかったことを実感

故郷で鍛錬を積み、武蔵小杉に戻った6月。全体練習が解禁されると左腕は確かな「手応え」を感じていた。「いい状態で練習をスタートできた」と個人練習期間の成果が表れ、オープン戦でも結果を残し続けた鈴木。優勝が決まった際に「ほっとした」という彼の気持ちは、これまでの過程が正しかったことに対する率直な感想だったのかもしれない。

秋の神宮で集大成を見せる

そんな鈴木には大切にしている言葉がある。帽子の裏にも書いている「覚悟」だ。この2文字には、「試合中には、ピンチなどさまざまな場面が来る。やることはやってきたので『覚悟』を持って投げよう」という意味が込められている。また、中学・高校・大学とステップアップしていくにつれ、「時間の使い方」にも注意するようになった。

「覚悟」を胸に最後のシーズンをベストコンディションで臨む

「無駄にする時間が少なくなった」と語ったように、試合前の睡眠や食事にまで気を使い、準備を怠らない。ただ実直に野球と向き合い、ベストコンディションで試合に臨む。まさに「覚悟」だ。

秋はより一層、チームのエースとして期待と重圧がかかる。だが本人はいたって冷静だった。春季リーグを戦って見えた課題点を問うと、「秋は『先発して長いイニングを投げる』ことが求められる。体力強化と投球技術の向上を目指したい」と自身を分析。さらに、「秋はチームの勝利に貢献して、ベストナインと最優秀防御率を獲得したい」。そう来季の目標を語った。

最後のシーズンをチームの柱として、またこれまでの集大成を見せる場としての準備はすでにできている。春秋連覇、そして次のステージへ上るための「覚悟」を秋の神宮で体現する。