野球

特集:東京六大学 2020真夏の春リーグ

「法大の隠し球」永廣知紀、首位打者とベストナインを獲得し優勝に貢献

16打数で8安打、長打は二塁打1本のみと堅実な打撃でチームに貢献

東京六大学野球春季リーグ戦

8月10日~18日@明治神宮球場
優勝(3季ぶり46回目)

前代未聞の真夏の春季リーグ。新型コロナの影響により、本来ならば4月に開幕の予定だった春季リーグは、総当たりの1回戦勝負という形で8月に幕を開けた。気温35度を超える連戦の末、法政大学は3季ぶり優勝回数単独首位の46回目となるリーグ優勝を果たした。

今年は特に多くの新戦力の活躍が目立った法政大。その中でも永廣知紀(4年、大阪桐蔭)は、最終戦となる立教大学戦を除く4試合に出場し、16打数8安打2打点とチームの勝利に貢献した。さらに、打率.500と驚異的な数字を残し、首位打者とベストナインを獲得。まさに、「法大の隠し球」がこの夏、神宮で躍動した。

やっとつかんだ出場機会

高校3年間を名門・大阪桐蔭高校で過ごした永廣は15年と16年のセンバツに出場。高校卒業後は、大阪桐蔭の先輩であり、前主将・福田光輝(現・千葉ロッテマリーンズ)がいる法大に進学した。

しかし、全国から野球エリートが集まる法大では日の目を見ることが難しく、3年間でリーグ戦出場経験はなし。本来ならば内野手登録の永廣だが、出場機会を得るために今年から外野手に挑戦することを決心。その心意気を買われ、青木久典監督は2番・中堅に抜擢した。苦しい時期を乗り越え、やっとつかんだ出場機会だった。

リーグ戦初出場にもかかわらず、首位打者とベストナインを獲得した永廣

大学野球ラストイヤーに、内野手から外野手へ。大きな決断だったかもしれない。しかし、永廣にとってそれは大きな転機となった。「(打とうと)欲を出しすぎないように気をつけたことがよかった」と振り返る打撃が爆発。

初戦となる東京大学戦では5回第3打席で左翼への二塁打を放ち、リーグ戦初安打を記録。続く早稲田大学戦では2安打、明治大学戦は3安打を放ち、試合を経るごとに存在感を増していった。

その姿は、もはや「リーグ戦初出場」だと感じさせなかった。優勝争いとなった「因縁の相手」慶應義塾大学との試合で、4回に一挙5得点し逆転を果たした際にも、反撃の口火を切った宮﨑秀太(2年、天理)に次いで安打を決め、チームに貢献。「この男なら打ってくれる」。そんな安心感さえも感じられた。

春秋連覇、そして全勝優勝に向けて

また、永廣は打席以外でもヘッドスライディングといった気迫あふれる全力プレーで見せ、試合終了時は常にユニホームが泥で汚れていた。一瞬一瞬のプレーにも気を抜かず、チームのために突き詰めたからこそ、リーグ戦初出場にもかかわらず輝かしい功績を残せたのだろう。

「春夏連覇できるのは自分たちしかいない」。秋季リーグに向けて長打も磨く

3週間後に迫った秋季リーグに向けて、打撃のさらなる向上を目指し、長打を打てるようになるため、ウエイトに重きを置いている永廣。

「春秋連覇できるのは自分たちしかいない」。そう意気込み、個人としても「継続していい成績を残せるようにしたい」と闘志を燃やす。法大のチャンスメーカー・背番号2は、春に果たせなかった「全勝優勝」でラストシーズンに花を添える。