野球

53連敗中の東京大学が2年ぶりの引き分け、価値あるポイント0.5を獲得

立教大学と引き分け整列に向かう東京大学の選手たち(撮影・すべて朝日新聞社)

東京六大学野球秋季リーグ戦第5週

10月18日@神宮球場
東大 000 000 001|1
立大 000 010 000|1
(規定により引き分け)
【東】西山、横山、小宗、奥野、井澤-大音【立】中川-竹葉
【二】梅山(東)

東京六大学野球秋のリーグ戦。53連敗中の東京大学が立教大学1回戦で引き分けた。連敗ストップはならなかったものの、勝利につなげるべく意味あるドローとなった。

采配的中も「選手に救われた」

0.5ポイント――2017年秋に法政大学から連勝して勝ち点を挙げたのを最後に、53連敗という重い扉を開くことはできなかったが、半分だけこじ開けたと言えようか。この秋のリーグ戦は、従来の2勝勝ち点制ではなく、ポイント制で行われている(1勝が1ポイント、引き分けは0.5ポイント)。18年秋の明治大学2回戦以来の引き分けに持ち込んだ東大は、勝ち点に換算される0.5ポイントを初めて獲得した。

九回に殊勲打を放った東大の梅山遼太

追いついたのは土壇場の九回だ。八回までは立教のドラフト候補、サブマリン投手・中川颯(4年、桐光学園)から7安打を奪ったが得点につなげられず、ゼロ行進を続けていた。規定により最終回となる九回、1死から大音周平(3年、湘南)がレフトへのヒットで出塁。すると東大はいきなり初球から盗塁を仕掛けて成功させる。この試合3つ目の盗塁だ。井手峻監督は「好投手の中川君は緩い球も強い球もあって、なかなか打てない。崩すには盗塁しかないので」と振り返る。

2死になり、打席に立ったのは、前の打席で中川の真直ぐをヒットにしている梅山遼太(4年、四日市)。ここで梅山は狙い通りのカーブをとらえ、左打席から右翼線に運ぶ。打球は適時二塁打になり同点とした。

抑えに回り役目を果たした井澤駿介

東大はその裏、切り札を投入する。これまでの3カードすべてで1回戦の先発を担った井澤駿介(2年、札幌南)である。この試合、西山慧(2年、土浦一)、横山優一郎(4年、四日市)、小宗創(3年、武蔵)、奥野雄介(3年、開成)と、4人の投手による2イニングずつの継投で立教打線を最少失点に抑えてきた。井澤は、法政大学戦と慶應義塾大学戦ではともに6回を自責点3以下。先発としての役目を果たしている。井手監督が「全体的に調子がいい」と言う東大投手陣にあって一番頼れる投手である。その投手が最後に残っていた。期待に応え、井澤は無失点で切り抜けた。

井澤を抑えに回した井手監督の采配が的中した格好である。だが、元プロの井手監督は静かにこう語った。「選手に救ってもらった」。東大の各投手は指揮官が描いたプランを崩すことなく役目を全うした。

立教大九回2死二塁、代打・吉岡広貴は三直で引き分けに

束の間の安ど感も目指すのはあくまで勝利

引き分けが決まると、東大ベンチからはまるで勝ったかのような歓声が上がった。ヒーローになった梅山をはじめ涙ぐむ選手が何人もいた。無理もない。丸5シーズン勝ちがないのである。梅山は「これまで、あまりにも苦しくて」と本音を吐露した。学業を野球の言い訳にせず、野球を学業の言い訳にせずに他校と対峙してきた選手たちはもがいていたのだ。

引き分け後、「ただ一つ」を外野席で歌う東大応援部

秋のリーグ戦より入場が許され、東大の勝利を信じ、外野スタンドから熱い応援を送っている東京大学運動会応援部の思いも同じだ。主将の菅沼修祐(4年、武蔵)は「チームみんなの諦めない気持ちが形になった最終回は、本当に胸が熱くなりました」と話す。

前のカードの早稲田大学戦に大差で連敗した後、早川怜志(4年、菊里)が声をかけ、4年生が集まった。そこで話し合いをしたという。このままではいけない。勝たないと終われない。最後は勝って終わろうと。

引き分けになった瞬間は、束の間の安ど感が訪れた。ただ、連敗を止めたわけではない。次勝たなければ、次につなげなければと、チームの誰しもが思っている。

東大が目指すのはもちろん勝利だ。

東大の連敗

2017年秋 ●●○●●●●○○●●
2018年春 ●●●●●●●●●●
2018年秋 ●●●●●●●△●●●
2019年春 ●●●●●●●●●●
2019年秋 ●●●●●●●●●●
2020年春 ●●●●●
2020年秋 ●●●●●●△