「心拍数上がった」吉田正尚がサヨナラ打 オリックスが劇的な勝利
(20日、プロ野球日本シリーズ第1戦 オリックス4―3ヤクルト)
■九回、底力見せた
オリックスが2点を追う九回、パ・リーグの底力を見せる逆転劇だ。マウンドにはヤクルトの抑えのマクガフ。安打、四球、犠打野選で塁を埋めると、一気に相手をのみ込んだ。
2番宗は追い込まれながら、後ろに吉田正、杉本が控えていることから「三振はOKのつもり。当てにいかないように」と開き直れた。低い打球で二遊間を破り、2者生還で同点。勝負強い25歳は、CS第3戦でも一時逆転の2ランを放った。2万人近い観衆が沸き立った。
なお無死一、二塁。吉田正はそこまで4打席無安打だった。一回は中前に抜けそうな打球を好守に阻まれ、五回は中堅への大飛球を好捕された。「なかなか間を抜けなくて、向こうの守備も良くて」とは中嶋監督。しかし、追い詰められたヤクルトは、ここでは外野手に前進シフトを命じるしかなかった。
■心拍数上がった
東京五輪を経験した男も「心拍数が上がっているのは感じました」。初球の153キロ直球をたたくと、打球は中堅手の頭上を越えていった。「しびれましたね。宗がこれまでにないくらい球場を盛り上げてくれたんで、勢いでいかせてもらった」と余韻に浸った。
相手の高津監督が応じず、今年のシリーズでは予告先発は実施されないが、中嶋監督は第1戦の山本に続いて第2戦の先発を宮城と明言した。「変なミスがなかったら何とかいけるのかなと思う」。力の勝負でねじ伏せるつもりだ。
中嶋監督(オ) 「すごかったです。いやあ、すごかったとしか言えないです。よく粘ってくれた。最後まであきらめなかったことが勝ちにつながった」
山本(オ) 本来の制球力を見せられず6回1失点で降板。「苦しい投球となってしまった。甘く入った球を打たれてしまって悔しい」
■成長株・紅林が切り開いた
オリックスの成長株・紅林弘太郎が勝利への道を切り開いた。
1―3の九回の先頭打者。フルカウントから7球目、ヤクルトの守護神マクガフの直球を捉えて右前へ。逆転サヨナラ劇への起点となった。
CSの3試合では9打数無安打だったが、初めての日本シリーズで思い切りのよさを発揮。4打数2安打と結果を出した。
静岡・駿河総合高からドラフト2位で入団して2年目の遊撃手。今季初めて1軍で出続けた。シーズン序盤は守ればミスをし、打撃では凡退が続いた。だが、終盤になると強肩を生かした好守でチームを救い、打っても10本塁打と成長。それでも「自分の力がここまで通用しないんだと思わされた」と悔しがった。
リーグ優勝が決まった10月27日は、体調を崩して寮で静養。中嶋聡監督の胴上げに参加できず、チームメートと喜びを分かち合うこともかなわなかった。
「何回も経験できることじゃないので、いたかった」と19歳。日本一の際はもちろん、胴上げに参加するつもりだ。使ってくれた監督に感謝を伝えるために。
(伊藤雅哉)=朝日新聞デジタル2021年11月21日掲載