ラグビー

帝京大・青木恵斗主将と早稲田大・佐藤健次主将 ライバル2人のラストイヤー、軍配は

ケイトとケンジと呼び合う2人。大学最後の秋シーズンは、どちらに軍配が上がるのか(すべて撮影・斉藤健仁)

いよいよ9月7日から関東大学ラグビー(関東対抗戦・関東リーグ戦)が開幕する。今季も5チームが大学選手権に出場可能な、強豪がそろう関東対抗戦の中で、注目されるのは大学選手権&対抗戦で4連覇がかかった帝京大学と、その「紅き王者」を長野・菅平高原の練習試合で4年ぶりに38-14で下した昨季3位の早稲田大学だ。その両チームのキャプテンは帝京大FL青木恵斗(4年)と早稲田大のHO佐藤健次(4年)である。

6月はケイトが、8月はケンジがハットトリック

2人は桐蔭学園時代、「花園」こと全国高校ラグビー大会連覇に貢献した同級生である。「ケイト」と「ケンジ」と呼び合う2人は中学校時代から切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲で、神奈川県選抜でも一緒にプレーした。

まずは簡単に春と夏の対戦を振り返っておきたい。両者は優勝がかかった6月の関東春季大会でも激突し、ハットトリックを決めるなど青木主将が引っ張った帝京大が、早稲田大を60-7で圧倒し春の優勝を決めた。

帝京大はその前週の明治大学戦で24-24と引き分けた試合を反省し、接点でファイトしたことが大勝につながった。なお早稲田大の佐藤主将は日本代表活動に参加していたため出場していない。

早稲田大を引っ張った佐藤主将

8月18日、両者は菅平高原で再戦した。当然、過去3年間公式戦で勝利していた帝京大が有利と予想されていた。

しかしHO佐藤主将が先発した早稲田大が前半から接点、スクラムで相手にプレッシャーをかけ、アタックでチャンスをつかむと4トライを挙げて24-0で前半を折り返した。後半は2トライを奪われたものの、2トライを重ねて38-14で快勝した。日本代表から戻ってきた佐藤主将はハットトリックを達成するなど大車輪の活躍だった。

帝京大の青木主将は「気持ちの中で(春に大勝していたため)勝てるだろうという隙があったかもしれない。ディフェンスで受けてしまって、(相手に)いいテンポでボールを出させてしまった」と唇をかんだ。

ノーサイド後、青木など旧知の相手選手から「1勝1敗」「また秋ね!」と声を掛けられたという早稲田大の佐藤主将は「自分のすべてを出そうとした。1月からやってきたことが出せて少し安心感があって、(この勝利で)自信、プライドが少しついたかな。でも逆に怖いのは、自分たちが強いと思ってしまって秋にひっくり返されてしまう(こと)」と、表情を崩すことはなかった。

スクラム前、眼光鋭い青木主将

その後の練習試合では、早稲田大は佐藤主将抜きで臨んだ天理大学(昨季関西2位)戦に35-64で敗戦した。一方、帝京大は天理大に48-21で勝利し、明治大にも31-28と接戦を制し、復調の兆しを見せた。いずれにせよ、今季の対抗戦は混戦模様となりそうだ。

そろって代表活動へ招集 3年ぶりにチームメートに

実は今年、新チームとなりキャプテンとなった青木と佐藤は春から夏にかけて、忙しい日々を送っていた。

1月、ラグビー日本代表の指揮官にエディー・ジョーンズHCが再び就任し、2月に2人は大学生ながら福岡で行われた強化合宿に招集されて、リーグワンの選手やFLリーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)、NO8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)といった日本代表キャプテン経験者とともに汗を流した。

「今でもリーチさんや姫野さんに教えてもらったタックルやジャッカルをやっています」(青木)

さらに4月、2人は同じく高校の同級生である明治大CTB秋濱悠太(4年)とともに「オーバーエージ枠」として、サモアで開かれた「パシフィックチャレンジ」にU20日本代表選手と参戦。サモア、トンガ、フィジーの代表に準じるチームと対戦し、見事3連勝での優勝に貢献した。青木と佐藤は高校時代以来の遠征、試合となり、「久しぶりに一緒にできてうれしかった!」(佐藤)。

ケンジは代表残留、ケイトは落選 6月に明暗

さらに5月下旬、2人は菅平で行われた日本代表の強化合宿に参加した。ただ、そこで明暗が分かれた。

ジョーンズHCへのアピールに成功した佐藤は、6月から宮崎で行われた日本代表合宿に、帝京大LO本橋拓馬(4年、京都成章)、帝京大PR森山飛翔(2年、同)、早稲田大FB矢崎由高(2年、桐蔭学園、当初は練習生だったが途中から昇格)とともに選出されたが、青木は残念ながら落選してしまった。

早大FB矢崎由高 イングランド戦で代表デビュー「ワールドカップ4強に貢献したい」
花園を連覇した桐蔭学園。2人はその主要メンバーだった。2学年下に矢崎もいた

佐藤は7月末まで日本代表活動に参加して、初キャップこそ獲得できなかったが、マオリ・オールブラックス戦(非テストマッチ)で途中出場を果たした。

「(日本代表活動に参加して)ボールを持っていないときの動きやディフェンスも良くなったかな。また練習前の準備に対する意識が高くなって、僕が(練習の)30分前から身体を動かすようになり、それがチームでも普及している」(佐藤)

一方の青木は、FLでケガ人が出た時に代表に追加招集の可能性もあったようだが、帝京大の相馬朋和監督と話し合った末に、大学チームに集中することに決めた。

「キャプテンでしたが、自分のわがままで(春はチームを抜けて)迷惑をかけていたし、後れを取っていた。一度(日本代表から)落ちた身だし、大学4年生は1回限りなので、帝京大にフォーカスして結果を出したい」(青木)

夏の菅平高原での対戦は、春は高校時代以来のチームメートとなった2人が、今季初めて敵同士で対決した試合となり、前述の通り、早稲田大の佐藤主将がその存在感を大いに発揮した形になった。

ケイト ダブル4連覇へ「負けぬ」

桐蔭学園3年時の青木

桐蔭学園1年時、佐藤はNO8として花園準優勝を経験したが、青木はメンバー入りできず、スタンドから佐藤の活躍を見守った。2年時に2人はそろって「高校3冠」を達成し、3年時はともに中心選手として花園連覇を達成した。

帝京大に進んだ青木は1年時からレギュラーとなり、対抗戦、そして大学選手権で3連覇に貢献し、高校2年から5シーズン連続日本一に輝いている。そして今季はキャプテンとして対抗戦と大学選手権の4連覇にチャレンジしている。

青木は「高校時代に一番仲が良かったケンジに負けたくないし、対戦相手にいたり(主将同士で)コイントスをしたりするのは楽しみですが、負けるつもりはない。(対抗戦で)全勝して優勝したい」とキッパリと言った。

帝京大入学以来、対抗戦、大学選手権で負け知らずの青木は無敗で大学生活を駆け抜けることができるか。

ケンジ 大学日本一へ「追いつく」

桐蔭学園3年時の佐藤。当時はナンバー8だった

一方、「優勝するために早稲田大に進学した」という佐藤も1年からレギュラーとなったが、まだ対抗戦、大学選手権で優勝を経験しておらず、「中学校(横浜ラグビースクール)、高校でも日本一になったので、大学でも日本一になりたい」とラストイヤーに懸ける気持ちは人一倍大きい。

佐藤も「僕もコイントスが楽しみです! 大学選手権で勝ったチームがそのシーズンで強かったと言われる。過去3年間は帝京大が勝っているのでケイトに追いつけるように頑張りたいですし、自分の代で優勝できたらいいなと思います!」と意気込んでいる。

もちろん、大学選手権で対戦する可能性もあるが、今季、対抗戦で帝京大と早稲田大が顔を合わせるのは11月3日、東京・秩父宮ラグビー場である。

対抗戦最後の対戦でケイトとケンジ、どちらに軍配が上がるのか今から楽しみだ。

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