花園連覇の推進役、青木恵斗は帝京、佐藤健次は早大へ 期待のルーキー関東対抗戦
ラグビーの大学春季大会がコロナ禍、今春は何とか開催された。昨年は中止となったが、個々の選手やチームの成長の貴重な機会。関東は6月末に終了し、対抗戦とリーグ戦のチームが戦う形で、A~Cのグループに分かれて行われた。一部の試合は中止になったが、各大学でルーキーも躍動した。まず、関東大学対抗戦Aグループの8校に入った新人選手から見ていきたい。
対抗戦V3目指す明大は逸材ぞろい
昨年の関東対抗戦の王者で、大学王座奪還を狙う明治大。6月に入り4年間指導してきた田中澄憲監督が勇退し、新たに同じくOBの神鳥裕之監督が就任した。春からフィジカル、フィットネスを中心に鍛えていたチームは、春季大会はAグループで3連勝。招待試合では僅差で帝京大に敗れたものの、天理大には勝利するなど調子の良さを見せた。今年の明大には23名の新人選手が加入した。7人が「花園」こと全国高校ラグビー大会の優秀選手で、すでに多くの1年生たちが紫紺のジャージーを着てデビューを飾っている。
FWでは、花園で中部大春日丘を主将として初のベスト8に導いたFL(フランカー)福田大晟、FL木戸大士郎(常翔学園)がすでにレギュラークラスとして存在感を発揮。バックスもWTB(ウィング)やFB(フルバック)のバックスリーとして、桐蔭学園の花園2連覇に貢献した秋濱悠太、御所実のエース安田昂平、大阪朝鮮のスピードスター金昂平の3人が俊足を武器に出場している。
他にもPR(プロップ)倉島昂大(桐蔭学園)、田中翔太朗(長崎北陽台)、LO(ロック)田島貫太郎 (東福岡)、金子琉聖(佐賀工)、HO(フッカー)/FL金勇哲(大阪朝鮮)、FL吉田爽真(國學院栃木)、SH(スクラムハーフ)登根大斗(御所実)、SO(スタンドオフ)/CTB(センター)寺下功起(東福岡)、CTB山田歩季(京都成章)、WTB/FB坂本公平(東福岡)ら花園を沸かせた選手がずらりと並ぶ。秋までにメンバーに絡んでくる選手も出てくるはずだ。
好SH育つ早大に楽しみな2人
次に対抗戦2位で全国大学選手権のファイナリストになった早稲田大。今季からOBで元日本代表SOの大田尾竜彦監督が就任した。春季大会は1勝1敗で終えたが、明大との練習試合にも勝利し、充実した春シーズンを送っている。新人選手34名が加わったが、「高大連携」で強化しているため、SO守屋大誠、WTB三浦哲ら早稲田実出身者は7人入部し、他の系列校も加えると10人と多い。
ただ、アスリート選抜入試で加わった選手の4人は実力十分だ。桐蔭学園を主将として2年連続日本一に導いたFL/No.8佐藤健次とPR亀山昇太郎(茗渓学園)はすでに1軍の試合に出場しており、全国高校大会決勝の舞台に立った宮尾昌典(京都成章)と細矢聖樹(國學院栃木)の2人の花園優秀選手SHも将来有望だ。また一昨季の花園で浦和のキャプテンとして花園ベスト16に貢献したFL/No.8松永拓実、ハミルトンボーイズ(ニュージーランド)出身のWTB/FB西浦剛臣らも入部している。
コロナ禍から巻き返す慶大
昨年度3位に入った慶應義塾大は、春は部員に新型コロナウイルスの感染者が出てしまったため試合を行うことができなかった。新人選手を実戦で確認することはできなかったが、ラグビールーツ校の125代目にあたる選手は34名が入部した。
「高大連携」で強化しているため、FL/No.8遠矢虎太郎、成田薫、CTB村田紘輔ら慶應義塾が16人、慶應志木と慶應ニューヨークが合わせて4人と計20名が系列校出身と半数以上を占めた。他校から入学し早々に1軍メンバー入りしそうな選手の筆頭は、花園優秀選手にも選ばれた桐蔭学園のHO中山大暉だ。他には大阪桐蔭出身のLO中矢健太や花園に初出場した川越東でNo.8やWTBで活躍していた渡邉匠、高校2年時に花園に出場したHO山際毅雅(浦和)、セブンズユースアカデミーに選出されたLO浅井勇暉(仙台)、U17日本代表歴のあるPR吉村隆志(本郷)、フィジカルにたけたCTB冨永万作(仙台三)らもポテンシャルは高い。
復活期す帝京大は充実の新人
対抗戦は4位だったが、全国大学選手権ではベスト4に入るなど復活の兆しを見せているのが帝京大だ。春季大会はBグループで3戦全勝、招待試合や練習試合でも明大、東海大に勝利し全勝で春シーズンを終えた。
明大に負けず劣らず、帝京大には花園の優秀選手4人を含む36名が入部。まず、春季大会でレギュラークラスとして存在感を示したのは、身長187cm、体重100kgのFL青木恵斗(桐蔭学園)、さらに「スクール☆ウォーズ」のモデルとして有名になった伏見工(現京都工学院)を指導した元日本代表の山口良治さんの孫でもあるSO/FB小村真也(ハミルトンボーイズ)だ。さらに花園準優勝の京都成章からLO本橋拓馬、CTB松澤駿平の2人、東海大大阪仰星出身のFL/No.8倉橋歓太、御所実出身のPR小林龍司、FL平井半次郎、流通経大柏からはHO當眞蓮、PR依藤駿之介(常翔学園)、FL/No.8福井蓮(東福岡)、WTB青栁龍之介(國學院栃木)、FB山田駿也(長崎北陽台)らの逸材も加わった。岩出雅之監督は1年生から積極的に起用するタイプの指導者であり、青木、小村以外にも秋にはもっと多くの選手が紅いジャージーを着るだろう。
筑波大は効果的な補強
「国立大の雄」筑波大は昨シーズン5位で、春季大会Bグループを1勝2敗で終えた。新人は少数精鋭の16名が加入した。FWには桐蔭学園のPR麻生尚宏、天理高出身のLO二重賢治、LO/FL/No.8倉井瑛志(旭丘)ら、バックスには中部大春日丘を引っ張ったSO堀日向太、流通経大柏出身のSO浅見亮太郎と2人の司令塔、けがをしながら報徳学園のキャプテンを務めたCTB竹ノ内堅人、東海大大阪仰星のWTB大畑亮太らが有望。SO堀はすでに10番をつけてタクトを振っており、浅見もCTBで先発、大畑も控えから試合に出場と、大きな戦力になりそうだ。
下位校にもセンス光る新人
昨年度5位だった日本体育大には27名の新人が加入した。春季大会は2敗と白星に恵まれなかったが、すでに5人の選手がAチームで、ファーストジャージーを着て戦った。全てFWで、PR/HO萩原一平(中部大春日丘)、HO藤田幹太(筑紫)、LO當山恭右(名護)、粟田駿也(高鍋)、FL大竹智也(桐蔭学園)。彼らは当然、秋シーズンもメンバー争いに加わってくる。他にも身長190cmのLO岸佑融(玉川学園)、身長189cmのLO/FL/No.8大橋興太郎(九州国際大付)らは将来有望だ。
春季大会は3戦全敗で昨年度6位の立教大には12名の新人が加わった。FWでは京都成章出身のPR八代デビット太郎、東海大大阪仰星出身のHO三村真嶺がフィジカルにもたけており、FW第1列の即戦力となるだろう。また桐蔭学園の司令塔コンビSH伊藤光希とSO中優人、川越東をキャプテンとして初の花園に導いた突破力あるWTB江田優太の3人もチーム力を底上げすることは間違いない。昨年度最下位の青山学院大は、春季大会は1勝2敗だったが、負けた試合も接戦だった。20名の新人が加わった。春季大会には、バックスから桐蔭学園出身のWTB榎本拓真、CTB青沼駿昌(仙台育英)、WTB川端航聖(東福岡)、FWではHO髙矢奎太郎(桐蔭学園)やFL田口遼馬(流通経大柏)らが出場を果たした。それ以外にもLO後藤大輝(東海大相模)、CTB河村凌馬(東海大大阪仰星)ら楽しみな選手がチーム力を押し上げるだろう。