ラグビー

対抗戦連覇を決めた帝京大 FL青木恵斗「いつかはライバルと桜のジャージーを」

対抗戦で連覇を飾った帝京大(すべて撮影・斉藤健仁)

昨季の関東大学ラグビー対抗戦・大学選手権の王者・帝京大と、大学選手権準優勝の明治大。11月20日、東京・秩父宮ラグビー場で、今季対抗戦の優勝を懸けて両校が激突する大一番があった。ともに開幕から5戦全勝同士の対決は、帝京大が29-13で快勝。しかも、帝京大は「3トライ差以上」のボーナスポイントも得て勝点を30に伸ばし、最終戦を残して連覇を決めた。対抗戦の優勝は11回目。

スクラムを制圧、明治FWを圧倒

今季就任した相馬朋和監督が「我々の強みはコンタクト、セットプレー」と話していた通り、フォワードが終始スクラムで相手を圧倒。激しいディフェンスで、好調だった明治大のBK陣も1トライに抑えた。まるで大学選手権9連覇時代の強さが戻ってきたかのような快勝だった。

スクラムでペナルティーを誘い喜ぶ帝京大FW陣
花園連覇の推進役、青木恵斗は帝京、佐藤健次は早大へ 期待のルーキー関東対抗戦

帝京大FW陣の中で、開幕から6戦フル出場でチームの勝利に貢献してきたのがFL(フランカー)青木恵斗(2年、桐蔭学園)だ。「(FWの)前の3人と(FWの後ろ5人の)バックファイブが同時にしっかり当たってヒットで勝てていたし、8人でまとまって押せていた。スクラムは良かった」と破顔した。相馬監督も、「自分と向き合いながら心も体も成長し、パフォーマンスが良くなってきた」と、青木の成長に目を細めた。

高校・大学で3年連続の日本一

青木はもともとバスケットボールに興味を持っていたが、家の近くにチームがなかった。「リフティングができなかった」ため、サッカーも選ばなかった。そんななか、小学校1年のときに幼なじみの久富汐希(國學院大2年、SH、石見智翠館)に誘われ、神奈川・藤沢ラグビースクールでラグビーを始めた。今回対戦した明治大のSO伊藤耕太郎(3年、國學院栃木)は、スクールの一つ上にあたる。

明治大学の伊藤耕太郎 新司令塔は「田村優2世」の呼び声高いポテンシャル

桐蔭学園高校に進んだ青木は、身長187cmのフィジカルと運動能力で、2・3年時、「花園」(全国高校ラグビー大会)の連覇に大きく貢献した。大学からは海外留学も考えたが、コロナ禍で断念。「FWが強くて自分に一番合っていると思った」と帝京大に進学し、1年生ながらレギュラーとして優勝メンバーとなった。高校から大学1年まで3年連続で日本一に輝いた唯一の選手となった。

高校2年の花園決勝で、ボールを継続する桐蔭学園。中央がLO青木

元チームメートのライバルを追い続け

ただ、昨季について青木は、「その場にいただけ」と、自身のプレーを悔しそうに振り返る。「僕自身、『お客さん』で何もできていなかった。4年生や上級生のおかげで優勝できた」

桐蔭学園の同級生で、小学生時代から付き合いがある早稲田大の佐藤健次(HO)も、ライバルとして意識せざるを得ない存在だ。佐藤は高校1年時から花園でレギュラーとして活躍するなど、青木の一歩先を走ってきた。

早稲田大のNo.8佐藤健次とSH宮尾昌典、王座奪還の鍵を握るルーキーコンビ(上)
早稲田大学のライバル・佐藤健次

今季は7月の関東大学オールスターで久しぶりに佐藤と一緒にプレーして「うれしかった!」。11月6日には大学の公式戦で初めて顔を合わせ、49-17で勝利した。

「昨季は個人としては(佐藤)健次に負けていた。彼と比べたら差がすごかった。(高校時代から)ずっと変わらない。彼の存在が刺激になっているし、僕自身も成長できている」

経験・フィジカル練習積み、成長を実感

帝京大の一つ先輩には、HO江良颯、FL奥井章仁(いずれも3年、大阪桐蔭)がおり、一緒に練習することで、成長につながっている。「(奥井先輩が)チームを引っ張ってくれています。追いつかないといけない存在ですが、頑張れる要因の一つにもなっています」と話す。

江良颯「もう一度、強い帝京大に」 セットプレーの中心から見据える王座奪還
帝京大学のNo.8奥井章仁、4大会ぶりの頂点へ「厳しい試合で逃げずにプレーする」

青木はフィジカルトレーニングにも力を入れている。帝京大入学後、ベンチプレスは30kg増の150kg、スクワットは40kg増の240kgを上げられるようになった。また、今春からフィジカルコーチの加藤慶氏とともにフィットネス、瞬発力などを鍛えたことも功を奏している。ボールキャリーの回数が増えたという青木は「昨季は(ボールを持ったとき)ゲインラインを切れるか切れないかだったが、ゲインラインを切れるようになってきた」と胸を張った。

ラインアウトの人数をレフリーに伝える青木

相馬監督が「ラインアウトをリードしてもらうことも経験してもらっている」と話すように、ラインアウトでも、4年のLO山川一瑳(常翔学園)と江里口真弘(大分東明)がいないときには、サインを出すことを任されているという。「アタック(マイボールラインアウト)では精度高く捕って、ディフェンスではスチールしてようとしています」(青木)

昨季は「ピッチでは立っているだけでボールキャリーもできなかった」と話す青木だが、成長を遂げた今季は、攻守にわたって大きな存在感を示している。「体ができてきてチームに貢献できるようになった。緊張感やプレッシャーはあるが、試合中、自分の役割がわかり、何をやるのかが見えてきているので、むちゃくちゃ楽しい」と声を弾ませた。

ボールキャリーする青木

将来はリーグワン、日本代表に

帝京大は、12月3日に対抗戦の最終戦・慶應義塾大戦を終えると、その後は12月25日から、連覇のかかる大学選手権に第1シードとして挑む。

青木は、「明治大戦では、いらないペナルティーをして(相手に)隙を与えていたので、細かいミスをなくしたい。ディフェンスでも、チーム全体で体を当てて相手を嫌がることを80分やり続ければ、もっといいチームになれる」と、大学選手権に向け、語気を強めた。

対抗戦を連覇し、歓喜の青木(上段の右)ら帝京大選手たち

将来は「リーグワンでプレーしたい」と話す青木。相馬監督と話し合って、「大学中に日本代表候補に選ばれること」を目標に設定している。「フィジカルやフィットネスなど、まだまだ足らないことも多いが、大学4年生時には日本代表合宿に呼ばれたい」と先を見据えている。

早稲田大のライバル・佐藤も、日本代表を目指して「NO8からHOに転向した」といい、青木は「いつかは日本代表で一緒にプレーできれば」と語る。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、ともに桜のジャージーを目指す。

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