王者・帝京大が春季大会を制す 今季就任の相馬朋和監督「学生と一緒に成長」
昨季10度目の王者に輝いた「紅き旋風」が春も強さをみせた。6月19日、第11回関東大学ラグビー春季大会Aグループの帝京大学(昨季対抗戦1位)対東海大学(昨季リーグ戦1位)が、帝京大グラウンドであった。帝京大が9トライを奪って59-21で快勝し、3年ぶり8度目の優勝を飾った。初優勝を逃した東海大は2位、勝ち点18で東海大に並び、直接対決で敗れた明治大学(4勝1敗)が3位、4位が早稲田大学(2勝3敗)となった。6月26日に行われる日本大学と大東文化大学の勝者が5位、敗者が6位となる。
東海大が気迫、序盤はリード
帝京大は明治大に敗れて3勝1敗(勝ち点15)、東海大は4戦全勝(勝ち点18)で最終戦に臨み、勝った方が優勝となる大一番となった。序盤は初優勝がかかった東海大が気迫をみせる。前半10分までに今季好調の副将NO8井島彰英(東海大4年、熊本西)、LO朴淳宇(東海大3年、大阪朝鮮)のトライで0-14としてリードすることに成功する。
しかし、王者・帝京大は焦りをみせることはなかった。「アタックでもディフェンスでも春シーズン、やってきたことを出そう」と主将でCTB松山千大(帝京大4年、大阪桐蔭)がリードし、力強い接点、ディフェンスで徐々にペースをつかんでいく。
相手の反則からゴール前に攻め込みモールを形成し、16分、22分にPR上杉太郎(帝京大3年、熊本西)が連続トライ。さらに29分には相手がキック処理をミスしたところを見逃さず、FL奥井章仁(帝京大3年、大阪桐蔭)がインゴールでボールを押さえて帝京大が19-14と逆転してハーフタイムを迎えた。
後半、帝京に流れ 一気に4連続トライ
後半、東海大が先にチャンスをつかみモールで攻め込んだが帝京大がボールを奪い返し、自陣からボールを継続し素晴らしいアタックをみせる。5分、帝京大の副将のSO高本幹也(4年、大阪桐蔭)が2度のランとパスでチャンスメイクし、最後は成長著しいというCTB二村莞司(帝京大4年、京都成章)がトライし26-14とリードを広げた。
10分、危険なタックルで東海大の選手がシンビン(10分間の一時的退場)となると、一気に試合の流れが帝京大に試合は傾く。後半32分までにHO江良楓(帝京大3年、大阪桐蔭)の2トライを含む4連続トライを重ねて勝負あり。東海大も1トライを返したが、ロスタイムに帝京大も1トライを挙げて、結局、9トライを重ねた帝京大が56-21で快勝し、優勝した。
帝京大に大敗してしまった東海大の木村季由監督は「春の最終戦ということで、春に取り組んできたディフェンスとアタックにテーマをしっかりもって臨んだが、相手の力が我々よりはるかに上回っていた。勝手に自分たちが崩れて最後まで自分たちの形を出すことができなかった」と淡々と話した。
主将でCTB伊藤峻祐(東海大4年、桐蔭学園)は「全体を通してミスやペナルティーの多さで終始、相手にペースをつかまれ自分たちのラグビーができなかった。アタック、ディフェンスともに帝京大さんの方がやることを統一していたことがきょうの点差に出たと思います」と肩を落とした。
岩出雅之前監督も試合見守る
今季から新たに指揮官に就任し、初のタイトルを奪取した帝京大の相馬朋和監督は「学生が本当に一生懸命やってくれた結果です。セットプレーが強い東海大学に勝つことができてホッとしています」と安堵(あんど)の表情をみせた。
相馬監督が就任し初の公式戦となった5月29日の明治大戦に26-35で負けたことが大きな薬となったようだ。「(スクラム、ラインアウトといったセットプレーを)やってきたけど明治大戦がダメで、もう1回やり直してよくなった。まだいろんなことがわかっていないですね。まだまだ真っ暗な中を手探りでいっている」と相馬監督。
昨季まで26年間、監督を務めていた岩出雅之氏もことあるごとに様子を見に来ているようで、この日も一緒に試合を見守った。相馬監督は「岩出先生は週末のたびに来てくださって、お話してくれるとチームが締まる。私も学生と一緒に成長している段階です。夏、もう1回、明治大さんとスクラムを組んで勝てるようにしたい」と謙虚に話した。
「春もチャンピオンになろうと(目標を)掲げていて優勝できて良かった」と破顔した松山主将も「明治大の敗戦で、自分たちがどこを目指しているか、どういうことをしないといけないかが明確になった。(東海大戦では)FWで圧倒し、アタックでもディフェンスでも自分たちのやりたいことができた。今後もFWを強みにやっていきたい」と先を見据えた。
相馬監督の初采配は黒星スタートだったが、しっかりと修正して8度目となる春の王者に輝いた帝京大。監督が変わっても隙のない強さは変わらず、今季も大学ラグビーシーンを先頭に立って引っ張ることは間違いないだろう。