早稲田大の佐藤健次や明治大の安田昂平ら、関東対抗戦の開幕は「100回世代」躍動
関東大学ラグビー対抗戦の開幕週(9月12日)は1年生の活躍が目を引いた。対抗戦3連覇を目指す明治大学はバックスの2選手がフル出場。2年ぶりの大学王座奪還を狙う早稲田大学も3選手が先発するなどチームに勢いを与えた。花園ラグビー場(大阪)での全国高校大会が昨年度、節目の100回となった大会を高校3年生で迎えた「100回世代」。新しい環境や、コロナ禍にもひるまず、大きな可能性を感じさせたルーキーを紹介する。
早大の先制トライは宮尾昌典、亀山昇太郎も存在感
早大-立教大では、早大の先発に桐蔭学園の全国大会連覇に貢献したNo.8佐藤健次、準優勝の京都成章のSH(スクラムハーフ)宮尾昌典、身長176cm、体重120kgの右PR(プロップ)亀山昇太郎(茗渓学園)の3人が名を連ねた。開始2分、いきなり宮尾が味方をフォローして中央に先制トライを挙げて大きくアピール。18分には佐藤がキックパスをキャッチし左隅にトライし、さらに22分も中央を突破してトライを挙げて、持ち味を発揮した。亀山も1年生ながら後半24分まで出場しセットプレーの安定に貢献する活躍を見せた。
対抗戦初采配を勝利で飾った大田尾竜彦監督はルーキー3人の活躍に「1年生ですが、能力高いですし思い切りプレーしてくれて、しっかりチームの戦力になってくれているので信頼しています」と目を細めた。A(1部)定着を目指す古豪の立教大学でもHO(フッカー)三村真嶺(東海大大阪仰星)、SO(スタンドオフ)中優人(桐蔭学園)、FB(フルバック)江田優太(川越東)が先発し、控えからSH伊藤光希(桐蔭学園)らも出場した。残念ながら、早大の攻撃の圧力に屈して0-70と零封され、思うようなプレーができない時間が多かった。
健闘の筑波大は浅見亮太郎らが躍動
開幕カードの帝京大-筑波大は、最後まで点差が広がらない緊迫したゲーム展開となった。帝京大学が17-7で競り勝ったが、今季の注目選手の一人で桐蔭学園の花園連覇を早大の佐藤とともに支えたFL(フランカー)青木惠斗は後半、ロスタイムでの出場。ニュージーランドのハミルトンボーイズから戻ったSO/FB小村真也も味方選手が出血時に一時交代と終盤の出場となった。ただ若手選手の育成に定評のある岩出雅之監督だけに、今後は積極的にルーキーを起用していくこともありそうだ。
一方、先手を取りながら惜しくも敗れた筑波大学のルーキーたちは光るプレーを見せた。まず開幕前に松永貫汰主将も活躍を期待していたFL倉井瑛志(旭丘)は決して強豪校出身ではないが、もともとバックスだったこともあり豊富な運動量と持ち前のタックルでチームを鼓舞した。また高校時代はFB、春はCTB(センター)としてプレーしていた浅見亮太郎(流通経大柏)は、同じ1年生の堀日向太(中部大春日丘)の負傷もありSOとして先発、得意のロングキックを生かしてゲームをコントロールした。スピードスターWTB(ウィング)大畑亮太(東海大大阪仰星)はボールを持って走るシーンは多くなかったが、スピードに乗ったタックルで相手選手をタッチに出すなどディフェンス面での貢献が大きかった。
嶋崎達也監督は「倉井はタックルしか考えなくていい、ということでよくやってくれた。浅見は落ち着いて主軸のプレーをしてくれているので、1年生という意識はない。ゲームプラン、戦い方を託しています。大畑は一発の力あり、練習中から魅力のあるプレーヤーで、ディフェンスで貢献してくれた。3人ともいいプレーしてくれました」とたたえた。
開幕戦で10番を背負った浅見は「初めての対抗戦で1年生として出場したがチームとして勝てなかった。個人的に実力がまだまだ足らない。ディフェンスももっと激しく、ペナルティーが多かったので規律を正して、もっと強い選手にならないといけない」と先を見据えた。
明大には才能豊かなバックス
3年ぶりの大学日本一を見据える明大も高校時代に花園を沸かせたWTB秋濱悠太(桐蔭学園)、FB安田昂平(御所実)が先発した。ともにバックスリーでWTBとFBを変幻自在に入れ替わりながら最後までプレーした。
公式戦デビューとなった安田は「1年生で先発出場させてもらえ、しっかり思い切ってプレーしようと思った。チーム全体でキックカウンターという部分でアタックしてきた。しっかり自分のできることを探しながらそこにフォーカスした」。トライは奪えなかったが、ボールを持つ回数は多く、「よかったのはウィングでもフルバックでもボールをもらえ、ゲインライン切れたところ。悪かった部分はもう少し自分から積極的にトライのチャンス狙えた。そこは改善していきたい」と振り返った。FBでもWTBでもポジジョンにこだわりはないという。
明大は青山学院大学を52-3とノートライに封じたが、ラフプレーで退場者を出すなど試合内容は満足いくものではなかった。新人2人について神鳥裕之新監督は「ゲーム全体の中でのパフォーマンスは満足するものではなかったが、よくやった。ヤス(安田)はもうちょっと自分の良さを出せるシーンがあったと思う。秋山は淡々とやっていた。プレーの波がない。ヤスはいいところシーズン深まるにつれて出してほしい」と期待をかけた。青学大もFL小川智大(八千代松陰)、CTB青沼駿昌(仙台育英)の新人が先発、厳しい防御で王者を序盤苦しめたチームの一員として機能した。