ラグビー

明治大学の飯沼蓮主将、「MEIJI PRIDE」掲げて3季ぶりの王座奪還へ

明治大学の新主将に選ばれた飯沼蓮。SHの主将は大学日本一へ導いた福田健太以来3季ぶり(撮影・全て斉藤健仁)

明治大学ラグビー部は3月8日、王座奪還を掲げて本格始動した。普段使っているグラウンドは人工芝を張り替えているため、アメリカンフットボール部の練習場を借りてのスタートだった。今季、紫紺のジャージーを引っ張るキャプテンに就任したのは、「将来は日本代表になれる」と田中澄憲監督の期待も大きく、1年生から出場していたSH(スクラムハーフ)飯沼蓮(新4年、日川)だ。「今季は昨季と違って派手なチームではない。目立った選手は少なく、明治らしくないかもしれないが、ひたむきに、泥臭く、コツコツ積み上げていくチームにしたい」と意気込んだ。

新4年生で話し合い重ね

全国大学選手権準決勝(1月2日)で初優勝した天理大学に15-41で敗れた後、1月は完全オフとなり、2月上旬に選手たちは練習場のある東京・八幡山に再び集まった。本格始動する前日まで、新4年生は毎日1時間と決めてミーディングを重ねて「明治とは?」や新たなキャプテンや今季のスローガンを決めるために本音をぶつけ合った。約1カ月に及ぶ話し合いは例年にない長さだったという。

4季連続の決勝を逃した明治大学、天理大学に完敗もらしさ貫く

昨季まで明治ではキャプテン、副キャプテン以外に、ポジションや学年に関係なくグループに分かれており、その各グループのリーダー8人前後を決めていた。ただ、「リーダーだけが話してしまい、全員の意見を共有できない」と飯沼らは感じたため、グループ制こそ存続するが、「4年生全員に主体性を持ってもらいたい」と、あえて幹部は最低限の人数にした。

身長179cmの大石康太副将(右)と

そのキャプテン、副キャプテンの2人は4年生全員の投票後、話し合いで決まった。1年から試合に出ていた飯沼と、公式戦は出場していないが練習に取り組む姿勢やリーダーシップが評価されて信頼が厚かったNo.8大石康太(新4年、國學院久我山)の2人に票が集まったという。

共同キャプテン制という案も出たが、最終的には多数決で飯沼がキャプテン、大石が副キャプテンということで落ち着いた。飯沼はラグビースクール、中学時代は山梨県選抜、日川高時代もキャプテンを任されており、SHというポジション柄、田中監督にも「ゲームの中ではリーダーになれと言われていたので、覚悟は決めていました」と振り返る。

スローガンに込めた思い

理想のキャプテン像については、SHの先輩でもあり1997年度の主将を務め、選手やコーチ、スタッフとみんなに気を配っている田中監督の名を挙げた。「上のチームも下のチームも、後輩にも積極的にコミュニケーションして、話を聞いたり、アドバイスしたりするようなキャプテンになりたいですね。行動を見られていると思うので、態度で示していきたい」(飯沼)

4年生のミーティングの最後に、今季のスローガンである「MEIJI PRIDE」を定めた。その経緯を飯沼は「明治は伝統があってファンに愛されていて、優勝が期待されているチームなので、プレーだけでなく私生活でももう一度、明治の誇りを持ってやる。そして(1年時に大学選手権で)優勝して、2位、ベスト4と結果が落ちているので、今季の結果が大切になってくる。もう1回、強い明治を作り上げて優勝して明治のプライドを取り戻すという意味で決めました」と語気を強めた。

写真で再現 明治の22季ぶり13度目の大学日本一
2年生から主力で活躍してきた

もちろん、目標は3シーズンぶりの王座奪還だ。そのために、今季の明治はどんなラグビーを目指すのか。昨年はコロナ禍で、練習ができない期間があり、春から夏にかけて試合経験も積めなかった。また春からパナソニックに入団する山沢京平(4年、深谷)がケガをした影響でSO(スタンドオフ)が変わり、新しい戦術を試しても「チームが迷ったままで、何が正解か突き詰められなかった」。そこで飯沼は「一つ、明治は他の大学よりここが強いんだという信じられるものを1年かけて統一し、突き詰めることができたら、ピンチのときにも信じて戦うことができる」と長いシーズンを見据えた。

最終戦で早稲田大学に勝利して優勝した関東対抗戦ではオフサイドの反則が0という試合もあったが、1月の天理大戦では、何度もオフサイドをしてしまった。その反省をから飯沼は「レビューでは悪いところばかりではなく、いいところもしっかりとレビューしたい」。また2018年度に大学選手権で22年ぶりに優勝してから、「どこかチャレンジャーマインドや食らいつくマインドが薄れてきた」と感じているため、「試合に勝っても危機感を持ってレベルアップしたい」と話した。

日本代表を狙えるセンスがある

もちろん、将来的に新しくなるトップリーグや日本代表での活躍を思い描いている飯沼にとっても、チャレンジングなシーズンとなる。「一昨年は(早大SH齋藤)直人さん(現サントリー)、昨年度は(天理大SH藤原)忍さん(クボタ入り)にやられた」と悔しそうな表情を見せた。

「チームの心臓に」

特に、準決勝の天理大戦を振り返り、「(トイメンの藤原に)完敗でした。余裕を持っていたし、4年生の意地を見せられた。思いっきりのいい縦(突破)に、ゲインラインを切られてしまった。テンポがすごかった。自分がやりたいプレーを全部されてしまった。勉強になりました」と唇を噛んだ。

理想とする選手は、ニュージーランド代表で、今シーズンはNTTドコモでプレーするTJ・ペレナラだ。「(持ち味とする)アタックだけでなくタックルでも目立てるようになりたいですね。そしてピンチの場面で僕の判断、考えでチームの流れを変える。チームの心臓になるような、実力を持った選手になりたい」と力を込めた。

チームの発電機となり、先頭で引っ張る

フィットネス練習でも先頭に立って引っ張っていた飯沼キャプテンに、改めて、どんなシーズンにしたいかをたずねると「今季は派手なチームではないのでひたむきに、もう1回、明治を、みんなを愛して、試合に勝ったとしてもチャレンジャー精神を忘れずに、一試合一試合積み重ねていきたい」と自らに語りかけるように言った。

身長169cmの紫紺のダイナモが、王座奪還を目指すチームの核となる。

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