ラグビー

連覇へ前へ!! 明治の新主将にフッカー武井日向

新チームのキャプテンに就任した武井 (撮影・斉藤健仁)

明治大学ラグビー部にとって、久々に連覇のかかる1年が始まった。2019-19年シーズンで22シーズンぶりの大学日本一に輝き、試験やオフの期間を経て、2月18日に新チームが始動。新たなキャプテンが発表された。1年生のときから紫紺のジャージーに袖を通し、昨シーズンから不動のHO(フッカー)として勝利に貢献し続けた武井日向(ひなた、3年、国學院栃木)だ。

田中監督から全幅の信頼

明治OBの元日本代表で、指導者としてチームに関わり始めて3年目の田中澄憲(きよのり)監督はキャプテンを決めるプロセスを変えた。過去2年は首脳陣が指名していたが、「より学生たちに自主的になってほしい」と、新4年生たちに話し合いでキャプテン、副キャプテンを決めるよう求めた。

新4年生たちが話し合った結果、FWの武井がキャプテンに、副キャプテンはBKの中心選手のひとりでスピードスターのWTB(ウィング)山村知也(3年、報徳学園)に決まった。

新キャプテンが武井に決まったと聞いた田中監督は「理由はとくに聞かなかった」と話す。「去年まで積み上げてきたものに、もう一つ積み上げたい」と語る監督は「武井は満場一致でしょう。試合では体を張るプレーをしますし、練習に取り組む姿勢もいい。誰も文句が言えないんじゃないですか」と、目を細めた。

1年生からAチームでプレーしてきた武井は、今年1月の大学選手権決勝でも、ゴール前で力強い突破からトライを挙げた。「キャプテンになってもならなくても、4年生になったらチームを引っ張っていこうとは思ってました」。リーダーとしての覚悟は十分だった。そして新キャプテンに指名され、「連覇のかかる代のキャプテンは、自分でやりたいと思ってもなかなかやれない。そこを楽しみたい」と前を向いた。

23人の同期の話し合いでキャプテンに選ばれたことに関し、武井は「全員が納得する決め方でしたし、まだ2月ですけど、本音をぶつけ合ったことで、新4年生のまとまりを感じました」と振り返る。キャプテンになった理由は、武井がどんな状況でも体を張り、練習も全力でやっている姿をみんなが見ていたからだという。武井本人も「そういったことが自分の強みだと思うし、キツい状況でも声かけをしたり、走ったりして、自分が走ってるからチームのみんなも走ろうと思ってほしい」と前を向いた。

22シーズンぶりに優勝した前シーズンと同じで、新シーズンも武井キャプテン以下、山村副キャプテンや寮長のCTB射場大輔(3年、常翔学園)ら9人、そしてマネージャーのリーダーとなった井元優吾(3年、大分舞鶴)を加えたリーダー10人で、チームを引っ張っていく。

武井は早くもリーダーシップを発揮している (撮影・斉藤健仁)

二人のキャプテンから学んだ

1年生のとき、武井は寮の部屋が2年前のキャプテンでLO(ロック)の古川満(現トヨタ自動車)、昨年のキャプテンだったSH(スクラムハーフ)の福田健太(4年、茗渓学園)らと一緒だった。この二人に学ぶことが多かったという。「満さんは、グラウンドでも私生活でもダメなところはダメと厳しく言って、新しい明治の基盤を作りました。健太さんはプレー面で引っ張ってたし、相手の分析もしっかりやってました。二人のいい部分を引き継いでいきたい」(武井)

もちろん、一選手としてもスクラム、ラインアウトというセットプレーの要のポジションを任されている自覚は強く持っている。とくに昨シーズンのチームはFWの前5人に4年生が多かったこともあり、武井は「もう一回基礎からしっかりやりたい」と、新チームの練習2日目からスクラムの際の姿勢を確認していた。

今年1月の大学選手権決勝で、天理大にスクラムを押された。明らかに劣勢だった。「スクラムを武器にしてて、シーズンを通してスクラムで勝ってる試合は本当にスムーズに運べてました。天理戦であらためてスクラムが大事だということに気づいた。本当に重要視してやっていきたいです」

武井は高校時代まで、ボールキャリーを武器とするFL(フランカー)やNo.8というFW第3列の選手だった。大学、社会人で身長171cmの第3列はほとんどいない。将来を見すえて、明治入学とともにHOに転向した。大学1、2年のころはセットプレーに自信を持てないまま臨んだ試合もあったが、いまは違う。先輩のHOや滝澤佳之FWコーチの指導のおかげもあり、セットプレーでもグイグイとチームを引っ張る。

いずれは日本代表に

武井は大学卒業後はトップリーグでのプレーを望んでおり、日本代表になるのが目標だ。あこがれは日本代表のHO堀江翔太(現パナソニック)。堀江も帝京大まではFWの第3列で、卒業とともにHOに転向している。

「いまは大学でしっかり積み上げていきたい」と武井。「HOとしてはまだまだですし、時間はかかると思いますけど、一歩一歩努力していって、日本代表になって、いつか堀江さんを超えられるようにチャレンジしていきたい」と、先を見すえる。

最後にあらためて、連覇がかかった明治の新キャプテンとしての抱負を聞いた。「先輩たちが築いてきた、「勝つ文化」を途絶えさせないようにしたい。もう1度優勝してファンのみなさんを感動させたい、喜ばせたい。ただラグビーだけやっていても連覇できないので、私生活から徹底してやっていきたい」。武井は力強く語った。

FWとしては体は小さくても、志は大きい。グラウンドで常に先頭に立ち続ける武井が、連覇に向け、明治を前へ、前へと押していく。

武井は「勝つ文化」の維持、発展を狙う (撮影・斉藤健仁)

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