ラグビー

「覚悟に勝る決断なし」明治の〝豆タンク〟武井

「覚悟に勝る決断なし」明治の〝豆タンク〟武井
3年生ながらセットプレーの鍵を握る武井 (撮影・斉藤健仁)

大学選手権準決勝

1月2日@東京・秩父宮
明治大(関東対抗戦3位、4位扱い)31-27 早稲田大(同1位、2位扱い)

永遠のライバル対決は、今回も熱を帯びた。対抗戦の「早明戦」では早稲田が31-27で勝利。しかし、大学選手権準決勝での再戦は明治のものとなった。HO(フッカー)の「豆タンク」武井日向(ひなた、3年、国学院栃木)らを中心とするFW陣が意地を見せ、奇しくも同じスコアとなる31-27で明治が勝利。早稲田にリベンジし、2年連続の決勝へ進んだ。22シーズンぶりの優勝に王手がかかった。

スクラム選択でリベンジ

試合を分けたのは後半10分ごろからの攻防だった。明治が17-13とリードした状況で、早稲田は35次にわたる攻撃で逆転を狙う。「勝因はディフェンス」と田中澄憲監督が語ったように、明治は体を張り続け、トライを許さなかった。

すると後半19分、明治はターンオーバーから主将のSH福田健太(4年、茗渓学園)がランで敵陣に侵入。相手のペナルティーにより、ゴール前でチャンスを得た。対抗戦では同じような状況でスクラムを選択したが、トライできずに負けた。
この日は最初の2本はスクラムで反則を犯していたが、すぐに修正し、有利に組めていた。

リードしていた明治は、あえてFW戦のスクラムを選択。「早明戦のリベンジという意味もあって、FWでいくぞという感じになった」。HOの武井は振り返る。

後半20分、スクラムをしっかり押し込み、No.8坂和樹(3年、明大中野八王子)がサイド攻撃を仕掛けてゴールラインに迫る。そこからFWにこだわって、最後はHO武井がインゴールで押さえた。また34分にもNo.8坂がトライを挙げ、明治が4点差で勝った。

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武井は突破力も魅力(中央) (撮影・谷本結利)

ラッキーな出会い

武井はこの試合でもスクラム、ラインアウトとセットプレーの安定に大きく貢献した。1月12日の天理との決勝でも、スクラムがキーとなるのは間違いない。「重戦車軍団」明治の中で、身長170cm、体重98kgの武井は特別大きなわけではない。ただ突破力があり、大学でNo.8からHOに転向して徐々に力をつけてきた。

もともとは兄の影響で幼稚園からサッカーをしていたが、小学3年から栃木県の佐野ラグビースクールでラグビーに転向する。高校、大学の一つ先輩で、元日本代表の石井勝尉(早大出身)を父に持つFBの石井雄大(4年、国学院栃木)に誘われたのがきっかけだった。石井家は近所で、雄大とは小さいころから一緒に遊んでいた。
すぐに楕円球のとりこになった武井は、中学時代は土日は栃木ラグビースクール、平日は石井勝尉さんが監督を務める高校に通って練習を積んだ。武井は「中学時代に基礎を教えてもらいながら、一つ上のレベルの高校生と練習することで、大きな相手に対する体の使い方を覚えられました」と当時を振り返る。

栃木の強豪・国学院栃木高校では1年生かららすぐにレギュラーとして定着。ここでも幸運な出会いが待っていた。高校2年時に、NECグリーンロケッツや日本代表でLOやFLとして活躍した浅野良太さん(法大出身)が教諭として赴任し、FWコーチに就任。そこで元トッププレイヤーからFWのイロハを教えてもらったことが、武井の土台をつくった。

武井は高3のときにキャプテンも務めたが、3度出場した花園ではいずれも上位進出はならなかった。「高校では日本一になれなかったので、日本一になりたかった。伝統のあるFWのチームでしたから」と、明治に進学。170cmの身長だと将来的にNo.8では厳しいと、高校で少し経験のあったHOへ本格的に転向した。

比較的自由に動いていたNo.8から、スクラムをリードし、ラインアウトではスローワーを務めるHOへの挑戦。最初は苦労も多かったという。先輩やOBのHO中村駿太(現サントリー)のアドバイスを聞きながら成長した。1年生の夏を過ぎると徐々にスクラムワークも安定、リザーブから出場できるようになった。2年になると、すっかりレギュラーに定着した。

また武井は、U20日本代表や代表に準ずるチームであるジュニア・ジャパンにも選出され、世界の舞台を経験。これがHOとしての成長を加速させた。そして3年になると、すっかり明治の顔のひとりとして、FW陣を引っ張るまでに大きく成長した。

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世界の舞台を経験し、HOとして成長した (撮影・谷本結利)

8人のまとまりで勝負

武井は天理との決勝でもセットプレー、とくにスクラムがキーになることは十分承知している。「そこで流れをつかめば、明治のペースになる。スクラムはとくに1年前と変えた部分はなくて、8人のまとまりを意識してます。そこに尽きる」と力を込める。

対抗戦4位扱いの立場からの決勝進出に、武井は「負けられない試合を勝ち続けて、自分たちのラグビーに自信を持てました。下級生でも思ったことがあったらどんどん4年生に言えます。まとまりが出てきました」と、チームの成長を感じている。

幸運な出会いに恵まれ、ラグビーが好きという思いで突っ走ってきた武井。好きな言葉は高校時代に浅野先生から教えてもらった「覚悟に勝る決断なし」だ。決勝で、紫紺のジャージーの2番は今シーズン一番の覚悟を持って、関西王者の天理大の強力FW陣にチャレンジする。その先には、この一年、目標として掲げてきた22年シーズンぶりの大学王者という栄誉が待っている。

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ダブルタックルで早稲田の突破を食い止める武井(左) (撮影・谷本結利)

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