ラグビー

連載:4years.のつづき

「魂のラグビー」の本質に触れて 高田晋作2

ラインアウトで競る高田さん。大学2年時の明大戦(本人提供)

大学生アスリートは4年間でさまざまな経験をする。競技に強く打ち込み、深くのめり込むほど、得られるものも多い。学生時代に名を馳(は)せた先輩たちは、4年間でどんな経験をして、それらを社会でどう生かしているのか。「4years.のつづき」を聞いてみよう。慶應義塾體育會蹴球部(ラグビー部)が創部100周年を迎えたときの主将で、チームを大学選手権優勝に導いた高田晋作さん(40)の2話目です。今回は高田さんが「全力投球できた」と振り返った大学4年間についてです。

前回の記事「街とラグビーを掛け合わせたい」はこちら

転機となったコンバート

高田さんは國學院久我山中でラグビーを始めた。ラグビー好きの父親に連れられ、幼いころから早慶戦や早明戦の観戦に行っていた影響が大きかった。当時のポジションは大学時代のLO(ロック)ではなく、トライゲッターのWTB(ウィング)だった。

「小学校卒業時は身長が163cmくらいでしたが、中学校で185cmまで伸びました。WTBとしてはとくにいいプレイヤーではなく、体重も70kgないくらい。タックルされるとすぐに倒れていたので、監督には『ゴジラに倒される東京タワーみたいだな』って言われてました」。高田さんが苦笑いで振り返る。

「國學院久我山高校は全国的にも強豪で別世界でした。当時の僕がラグビーを続けられるようなチームじゃなかった」と謙遜する。しかし、監督が言ってくれた「FWならいけるんじゃないか?」とのひとことでWTBからLOへと転向。これがラグビー人生の転機となった。

花園で優勝経験もある強豪でLOとして頭角を現すようになり、高2から試合に出られるようになった。2年のときは花園でベスト4、3年ではベスト8という輝かしい成績を残した。

上田昭夫監督からの手紙

高田さんは大学進学にあたり、憧れの学校だった慶應義塾大学環境情報学部のAO入試にチャレンジすることにした。

慶應ラグビー部は5年後に創部100周年を迎えることから、当時の上田昭夫監督(故人)は、AO入試で合格できそうな有望選手に声をかけていた。高田さんもその一人だった。「私も決して派手なプレイヤーではなかったので、慶應のひたむきな精神は合ってると思ってました。そして上田監督にお手紙をいただいて『伝統の上に新しいラグビーを築きたい。協力してほしい』と誘われたのも大きかったです」

合格し、高田さんは日本ラグビーのルーツ校である慶應へ入った。約4年後に大学王者になるとは思えないほど、当時の慶應は勝てなかった。高田さんが入学する前年度は関東大学ラグビー対抗戦Aグループで7位。高田さんの大学1年のときも対抗戦6位と苦しいシーズンを送っていた。

ただ当時は1、2年生でも雑用ばかりではなく、練習や試合に集中できる環境だったという。「慶應はちょうど新しい体育会に切り替えていた時代だったと思います」。新しさの中にも、「魂のタックル」という慶應のDNAは不変。ディフェンスやタックルの練習が異常なほど多かった。「タックルは勇気があれば誰でもできるプレーですから。自分たちより才能のある相手にタックルする。魂のタックルはルーツ校である慶應ラグビーの意地だと思います。とくに1、2年のときは練習のほとんどをタックルに費やした日もありましたね」と懐かしむ。

大学4年時。ウォーミングアップ中の高田さん(本人提供)

伝えていくべき魂とは

慶應は1984年を最後に対抗戦の優勝から遠ざかっていた。ただ高田さんが慶應ラグビー部に入部し、1年から黒黄ジャージーに袖を通して強く感じたのが、ルーツ校としての「伝統の力」だった。「魂のラグビーと言いますけど、力の差があっても強い相手に立ち向かっていく姿勢がしっかり受け継がれていて、それはいまでも誇りに思ってますし、コーチとしても学生に伝えていかなければならない部分だと思ってます」

1996年度の慶應は春の練習試合で下位のチームにも敗れるなど、他の強豪チームよりも出遅れた。そして秋の早慶戦、下馬評では全勝の早稲田が有利とされていた。だが、ふたを開けると、2勝4敗と黒星が先行していた慶應が序盤からタックル、タックル、タックル。互角の展開に持ち込んだ。そして後半40分にFB稲葉潤(2年、慶應/現慶應高ラグビー部監督)がPGを決めて18-17で逆転勝利。早慶戦の白星は実に12年ぶりだった。

ルーツ校としてのプライドを見せた慶應だったが、翌年度も対抗戦は6位。だが、高田さんが大学3年のときは対抗戦2位、大学選手権ベスト4と上昇気流に乗り始めた。
次回は創部100周年を迎えた大学4年のシーズン、どうやって大学選手権で勝てたのか。高田さんに振り返ってもらう。

大学時代を懐かしむ笑顔の高田さん

●慶応ラグビー部元キャプテン・高田晋作さんの「4years.のつづき」全記事 

1.街とラグビーを掛け合わせたい 2.「魂のラグビー」の本質に触れて 3.ブレずに集中、節目の年に大学日本一 4.ラグビーから学んだこと

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