ラグビー

連載:4years.のつづき

ラグビーから学んだこと・高田晋作4

高田さんは今年開催されるラグビーワールドカップにスポンサーという立場で携わる

大学生アスリートは4年間でさまざまな経験をする。競技に強く打ち込み、深くのめり込むほど、得られるものも多い。学生時代に名を馳(は)せた先輩たちは、4年間でどんな経験をして、社会でどう生かしているのか。「4years.のつづき」を聞いてみよう。慶應義塾體育會蹴球部(ラグビー部)が創部100周年を迎えたときの主将、高田晋作さん(40)の最終回は、学生時代にラグビーで学んだものについてです。

前回の記事「ブレずに集中、節目の年に大学日本一」はこちら

ラグビーは続けない

14年ぶりの大学日本一に主将として貢献した。当然のように社会人の強豪からも声がかかった。筆者は、高田さんが日本代表になる可能性もあると思っていた。しかし、高田さんはラグビーを続けなかった。

「そのころの慶應は、社会人でラグビーをする選手がまだ少なかったんです。私も、社会に出てから長い時間を費やす仕事において、ラグビーと同じように心から打ち込める道をつくりたいという思いがありました」。父親がラジオ局に勤め、その業界で会社を起業し、経営をしていた影響もあり、マスコミ業界を志望した。「チームスポーツで育ったので、大勢でモノをつくってみたくなった。ドキュメンタリーを撮ってみたい」という思いが実り、NHKに内定した。

NHKに入り、自分で企画、取材、撮影をして、編集して放送されるというサイクルに楽しさを感じていたころだった。NHKから不動産会社に転職した人の話を聞く機会があり、高田さんにある思いが芽生えた。

「テレビは視聴率という数字は出てきますけど、どうしてもエンドユーザーの顔が見えづらい。”街づくり”をする不動産会社は、建物などリアルな空間を作り、そこに人が集まる魅力的な仕掛けを入れこみ、『場』の価値を高めていく事業をしている。そこに自分が求めているものがあるのかな、と思ってチャレンジしました」

こうして高田さんは5年間勤務したNHKを辞め、三菱地所に転職した。ビルの運営管理に始まり、ベンチャー企業の育成施設の運営を経て、現在はオフィスビルの営業担当として6年目を迎えている。そして昨年からラグビーワールドカップ2019プロジェクト推進室にも籍を置く。

高田さんは社会人でラグビーを続ける道を選ばなかった (本人提供)

大事にするのは人の縁

大学時代の生活やラグビーから学び、いま仕事に生きているものは何かと尋ねてみた。高田さんは言う。「優勝したことだけじゃなくて、目標に向かって多くの仲間と力を合わせて達成することで、喜びが何倍にも大きくなるということを体感できたのが一番大きかったです。ラグビーはチームスポーツで、試合に出る人、裏方で支える人、チームをまとめる人、コーチングスタッフなど、それぞれの役割がありました。だからこそ、いまも常にチームを意識しながら仕事ができてるんだと思います」

社会に出てから大事にしているのが「人の縁」だという。三菱地所への転職のきっかけも、会社としてワールドカップに関わる機会ができたのもそうだった。そして「丸の内15丁目PROJECT」も、NHK時代の後輩であるフリーランスのプロデューサーの小国士朗さん(世界150カ国に配信された、認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」などのプロジェクトを手掛ける)を誘い、参画してくれたのが大きかったという。

「小国さんがいなかったら、このプロジェクトは立ち上げられなかったと思います。ワールドカップのプロジェクトも含めて、関わっているいろんな人の縁、タイミングに恵まれてると思います。だからこそ、この取り組みを大きく、ほかにないものにして、ラグビーだけでなく会社や社会に貢献したいと強く思ってます」

ラグビーワールドカップは12の都市で開催され、日本のラグビーファン、スポーツファンはもちろんのこと、40万人を超える海外のラグビーファンの来日も見込まれる。高田さんはスポンサーという立場ながら、「街づくりという過程で、12都市でいろんなことができればいいと思います。『4年に一度じゃない。人生に一度だ』という大会スローガンをいろんな場所で多くの人に体感してもらえれば、みんなハッピーになるんじゃないかな」と、目を輝かせる。

最後に、大学スポーツに青春をぶつけている学生へのメッセージをお願いした。「社会に出ると、純粋に何かを追い求めたり、一つのことに時間を注ぎこんでやれるチャンスは少なくなります。だから学生時代は、何をやるにも全力投球でやってほしいと思いますね。本気でやるからこそ、経験や人の縁なんかが自然に結びつき始め、どんどん自分の夢の実現に近づいていくんだと思ってます。それはスポーツだけでなく、本当に真剣に取り組んだ経験が、会社に勤めるにしても、起業するにしても生きてくるはずなんです」。高田さんは、力強く答えてくれた。

勝つ難しさを感じながら強豪チームへと変貌する過程を経て、100周年という節目、そして主将というプレッシャーの中で大学選手権を制した経験が、いまの高田さんの行動力、そしてリーダーシップにつながっている。今年はいよいよ、日本にラグビーワールドカップがやってくる。「街づくりをしながら、ワールドカップの価値を伝えたい」という思いを胸に、高田さんは邁進していく。

学生にメッセージを送る高田さん

●慶応ラグビー部元キャプテン・高田晋作さんの「4years.のつづき」全記事 

1.街とラグビーを掛け合わせたい 2.「魂のラグビー」の本質に触れて 3.ブレずに集中、節目の年に大学日本一 4.ラグビーから学んだこと

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