ラグビー

明治の主将・福田が誓った「下克上」

明治の主将・福田が誓った「下克上」
パーマをあてて早明戦に臨んだ福田

関東大学対抗戦Aグループ

12月2日@東京・秩父宮
早稲田大(6勝1敗)31-27 明治大(5勝2敗)
早大は8年ぶりの優勝(帝京大と同率)

94回目を迎えた「早明戦」。ノーサイド後、紫紺のジャージーの9番は感情を押し殺しながら、明治ファンの方が目立っていたメインスタンドに深々と頭を下げた。

明治は早稲田に勝てば帝京と同率の3年ぶりの優勝、しかも大学選手権に1位通過という20年ぶりという快挙もかかっていた。早明戦の前評判は、今年に入って帝京に3度勝っている明治の方がよかった。だが、早稲田が序盤からリードを奪う。明治は試合残り5分から2トライを挙げる怒濤の追い上げを見せたが、届かず。対抗戦では慶應と並び3位(大学選手権へは4位通過)となった。

明治の主将・福田_2
敗戦後、観客席に向けて頭を下げる福田

試合後の記者会見の冒頭、明治の主将SH福田健太(4年、茗渓学園)は言った。「素晴らしい伝統のある一戦に出場できて誇りに思います。大勢の前でプレーできてよかった」。この日のためにパーマをあて、気合を入れて臨んでいた。その後、口をついて出た言葉は悔しさに満ちていた。「早稲田さんの固いディフェンスとボールを動かすアタックにやられました。完敗したなと思います。後半残り20分で頑張っても、あの点差(13-31)だときつい」

試合を通じて、早稲田のディフェンスが明治のアタックを上回っていた。「早稲田はタックルしてからの起き上がりが速かった。ディフェンスに分厚さを感じた」と、福田が指摘した通りだった。早稲田は接点で無用な人数をかけずに、すぐにディフェンスラインを形成した。ディフェンスラインの前に出るスピードも速く、状況によってはCTBが1人前に出て明治の外の展開を防ぐ。もし外までボールを運ばれても、FLを含めたバッキングアップで対処した。

キーとなったスクラム選択

早明ともに試合のキーポイントに挙げたプレーがあった。それは後半11分のシーンだ。13-17で負けていた明治は、ゴール前の早稲田のペナルティーでPGではなくスクラムを選択した。終始、明治のスクラムは優勢だった。だが、この勝負どころのスクラムで反則を犯し、得点できなかった。明治はこのプレーでモメンタム(流れ)を失い、14分、19分と早稲田にトライされ、試合の行方はほぼ決まってしまった。

福田は「拮抗した試合は3点を積み重ねることが大事で、ショット(PG)の選択肢はありましたけど、スクラムに自信がありましたし、リードを奪いたくてスクラムという判断をしました。心に余裕を持っていれば、と思います。ゲームの流れを読めるように勉強したい」と語った。もしPGで1点差に迫っていれば、展開は違ったかもしれない。

また福田はアタック面でも「ボールを動かしていけばトライを取れたので、もっと早くそうすればよかった」と話した。明治の両ウィングはフィジカルに長けたWTB髙橋汰地(4年、常翔学園)と、スピードスターのWTB山村知也(3年、報徳学園)だった。明治は早稲田よりFWの平均体重が4kg重かったこともあり、当初はFWをしっかり当ててから、という戦略で臨んでいた。しかし、早稲田は近場のディフェンスの意識が高く、リズムをつかめなかった。

「セットプレーからしか、WTBの2人にボールを持たせられなかった。もっとボールを供給すればよかった」。福田は悔しさを露わにした。実はこの試合、ゲームコントロールに長けた正SO忽那鐘太(4年、石見智翠館)とロングキッカーのFB山沢京平(2年、深谷)がけがで欠場。ゲームメイクは福田の双肩にかかっていだ。たが、相手の状況を判断してから実行するまでに時間がかかってしまった。

明治の主将・福田_3
早明戦後、記者会見に臨んだ福田(左)と田中監督 (撮影・斉藤健仁)

田中監督からの指摘

福田は小学1年から、父親の勧めもあり常総ジュニアラグビースクールで競技を始めた。茨城の名門・茗渓学園中高で経験を積み、高3のときは主将として花園にも出場。明治に入学後も1年からAチームで試合に出た。スピードと強気なゲームコントロールが持ち味のSHである。

福田たちが最上級生なると同時にヘッドコーチから昇格した田中澄憲監督は、3年のときから学年リーダーやアタックリーダーを任され、すでに中心選手だった福田を主将に指名した。「80分間試合に出られるから選びました。クレバーだし、強気だし、言いにくいこともしっかりと言える。いいリーダーだと思います」。サントリーや日本代表でもSHだった新監督は、自分と同じポジションの福田に白羽の矢を立てた。

福田には昨秋、忘れられない出来事があった。福田は3年になって初めて先発の座についた。春から全試合に先発していた。ところが9月、同志社との定期戦で先発から漏れた。「春からずっと試合に出ていたのですが、慢心が態度に出てしまった。それをキヨさん(田中監督)に察せられ、コーチ部屋でラグビーに対する根本的な姿勢の甘さなんかを指摘されて……。グサッと刺さりました」

福田は変わった。全力でフィットネストレーニングと向き合い、対戦相手の分析をしっかりとするようになった。練習も常に全力で臨んだ。福田は「キヨさんに『そのままずっとやり続けろ』と言われました。あれが分岐点になりました」と当時を振り返る。

昨年度の大学選手権決勝で負け、明治は新チーム最初のミーティングで、今シーズンのターゲットを「2019年1月12日の大学選手権決勝で勝利すること」に定めた。そして、スローガンは選手だけで3週間ほど話し合い、「EXCEED(超える)」に決めた。準優勝を超える、昨シーズンのチームを超える、昨日の練習を超える、という意味が込められている。

福田はキャプテンとして常に部員の先頭に立ち、時に厳しい言葉もぶつけてチームを引っ張ってきた。対抗戦で慶應、早稲田に僅差で敗れたものの、帝京には春、夏合宿、対抗戦と3度の対戦すべてで勝ってきた。福田は「ディフェンスはもう少しできると思います。ただ、まだ二面性があると思います。コーチ陣と選手が同じ絵を見て、悪いところをなくして、長所を伸ばしていきたい」と先を見据えた。

福田は来春からはトップリーグの強豪、トヨタ自動車でプレーする。紫紺のジャージーを着て戦うのは、多くても4試合だ。

「1月12日に優勝するという目標はぶれません。12月16日に試合ができることをポジティブに捉えています。もう負けられない。これから4年生の力が大事になってくる。もう1回、ミーティングをしっかりしてから臨みたいです」。22年ぶりの大学王者を目指し、「前へ」を体現し続ける明治の9番は、対抗戦4位通過からの「下克上」を誓った。

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来春からトヨタ自動車でプレーする福田(左)

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