ラグビー

破れた夢、日本で叶えた 帝京大・マクカラン

破れた夢、日本で叶えた 帝京大・マクカラン
ステップを切るマクカラン (撮影・谷本結利)

大学選手権準決勝

1月2日@東京・秩父宮

帝京大(関東対抗戦1位)vs 天理大(関西1位)

V10を狙う帝京大が、危なげなく新年1月2日の準決勝に駒を進めた。帝京は12シーズン連続での年越しだ。
今シーズンの真紅の王者を支えるのは、紛れもなく4年生のFWたちだ。この日も先発のFW8人中5人が最上級生だった。

キャプテンのLO(ロック)秋山大地(4年、つるぎ)とともに、1年生からハードワークを貫き、帝京FWの屋台骨となってきた男がいる。ニュージーランド(NZ)出身の副キャプテンでNo.8(ナンバーエイト)のブロディ・マクカラン(4年、ハミルドンボーイズ)だ。弟のCTB(センター)ニコラス(2年、同)も昨年度から帝京の一員になった。

マクカランの好きな言葉は「This is rugby」。あえて日本語に訳せば「どこか痛くても、けがをしていても、試合になったら最後まで体を張り続ける」ということになろうか。
準々決勝の流通経済大戦でも身長192cm、体重106kgの体を生かして、スクラムやモールでは中軸として押し込み、自らアタックも仕掛け、体を張ったタックルを続けた。真紅のジャージーが試合後は土色になるほどに、リーダーとしての責務をまっとうした。

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マクカラン(中央)は、接点で体を張った (撮影・谷本結利)

母国NZで一度は大工に

「ローイ」という愛称で親しまれるマクカランは4年生だが、すでに24歳。それには理由がある。

ラグビー選手だったスコットランド人の父とNZの原住民マオリ族がルーツの母との間に生まれた。5歳からラグビーを始め、NZの強豪校でプレーしていた。だが左肩を負傷してしまい、高校卒業後の1年間はラグビーができず、国内のプロクラブに進むルートから外れてしまった。そして彼は大工となった。

「性格がよくて献身的にプレーする」。そのころ帝京大にいたNZ人のコーチが、岩出雅之監督にマクカランのことを話したのがきっかけとなり、来日が決まった。一度はあきらめかけていたラグビーへの道に戻れる、しかも学士がとれる。マクカランに迷いはなかった。

最初は日本語ができず、東京の人の多さにも驚いた。いまでも納豆は好きじゃない。ラグビーに関しては日本の選手の低いタックルにも、最初は慣れなかった。いちばんショッキングだったというのが、帝京ラグビー部のクラブカルチャーだった。

「いつも3、4年生が掃除をしたり、後片付けをしたりとハードワークしてる。NZはみんなフラットで、そういう文化はない。1年生のときにそれを見てびっくりした」。ただ、彼自身が3年生になるころには、それが当たり前になっていた。プレーだけでなく、異文化に対する適応力の高さもマクカランの持ち味である。

来日して4年目。今回の取材でも、ほぼすべて流ちょうな日本語で答えた。「本当はキャプテン就任も考えたほど人間性がいい」と、岩出監督は彼を副キャプテンに指名した。マクカランは「リーダーシップはもともとあったと思います。日本語がうまくなったら、リーダーシップもうまくなった」と笑顔で語る。

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アタックも仕掛ける (撮影・谷本結利)

誰より泥臭く

来春からマクカランは2018年のトップリーグ王者である神戸製鋼に加入する。今年2月にNZ人のブライリーさんと結婚したため、神戸で一緒に暮らす予定だ。マクカランは努力の末に、一度はあきらめかけたプロラグビー選手という夢を日本で叶えた。神戸製鋼には「オールブラックス」ことNZ代表のアシスタントコーチなどを歴任したウェイン・スミス総監督や「レジェンド」SOダン・カーターもいる。「いい環境です。絶対に成長できる」と興奮を隠さない。

NZの少年の誰もが思うように、マクカランも小さい頃はオールブラックスに憧れた。だが、いまでは「日本代表になりたい」とはっきり口にする。サンウルブズに入ってスーパーラグビーでプレーすることも希望している。そしてNZの地元が同じハミルトンで、年齢が一つ下のオールブラックスSO/FBダミアン・マッケンジーやCTBアントン・レイナートブラウンらの名前を挙げ、「いつかは試合で対戦したい」と楽しそうに未来を語る。

もちろんマクカランがいま見つめているのは、前人未踏の大学選手権10連覇だけだ。「帝京の赤いジャージーは、あと2回しか着られない。ミスをしない、タフなラグビーをしたい」と腕をぶす。

あえて副キャプテンに優勝するために大事なことを聞くと「緊張感と、いまの4年生は3回も決勝にいって3回優勝しているので、その経験を出すこと」と語気を強めた。準決勝には両親も招待する。マクカランはラグビー人生のすべてをかけ、誰よりも泥臭くプレーする。

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準々決勝ではトライも決めた (撮影・谷本結利)

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