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盛り上がる大学選手権、新年2日に準決勝

帝京FW陣の要、主将のLO秋山(中央) (撮影・谷本結利)

来年1月2日、東京・秩父宮で大学選手権の準決勝2試合がある。1試合目は早稲田大(対抗戦1位=2位扱い)と明治大(同3位=4位扱い)の「早明戦」となった。2試合目は10連覇を狙う帝京大(対抗戦優勝)が、初優勝を目指す関西王者の天理大の挑戦を受ける。

大学選手権準決勝@東京・秩父宮
12:20 明治 vs 早稲田
14:10 帝京 vs 天理

粘り強い守備でリズムをつくる

準決勝の第1試合は「早明戦」となった。大学選手権で両校が激突するのは2010年度以来13度目のこと(大学選手権の通算成績は明治の7勝5敗)。今年度の対抗戦では早稲田が31-27で勝っている。

両者ともに準々決勝は劇的な勝利で勝ち上がり、勢いに乗っている。準決勝は拮抗した試合になるはずだ。早稲田は慶應との準々決勝、ラストプレーでWTB(ウィング)佐々木尚(4年、桐蔭学園)がトライを取りきり、20-19で逆転勝利。明治も準々決勝、試合残り30秒でFB(フルバック)の山沢京平(2年、深谷)がPGを決め、東海大(リーグ戦優勝)に18-15で競り勝った。

創部100周年を迎えている早稲田。「Moving」をスローガンに掲げたチームは、相良南海夫監督が「ディフェンスからチームを作ってきた」と言うように、強みは粘り強い守備と、BKの決定力にある。準々決勝の慶應戦でも前半、相手の30次に渡る攻撃を守りきったこと、そしてラストプレーも含めて、チャンスでしっかり取りきったことが勝因となった。
FWにはPR(プロップ)鶴川達彦(4年、桐蔭中等教育)、小林賢太(1年、東福岡)、LO(ロック)下川甲嗣(2年、修猷館)、FL(フランカー)幸重天(3年、大分舞鶴)、No.8(ナンバーエイト)丸尾崇真(2年、早稲田実業)と運動量豊富なメンバーが揃った。

BKも1年からコンビを組んできたSH(スクラムハーフ)齋藤直人(3年、桐蔭学園)、SO(スタンドオフ)岸岡智樹(3年、東海大仰星)の3年生ハーフ団のゲームコントロールは冴えており、大崩れはしないはずだ。CTB 中野将伍(3年、東筑)、桑山淳生(3年、鹿児島実)、さらに1年生のWTB長田智希とFB(フルバック)河瀬諒介がおり、攻撃のタレントはそろっている。

相良南海夫監督は「一度、死んだ身なので、一日一日成長して、どれだけぶつけることができるか。明治(のことを考える)より、久しぶりに越える正月なので、自分らの力を出しきりたい」と意気込んだ。ディフェンスでリズムを作り、FWとBK一体となったアタックでトライを取りきりたい。

SH齋藤のゲームコントロールに注目 (撮影・谷本結利)

FB山沢の復帰でアタックが活性化

昨年度のファイナリストで、「EXCEED」を掲げる明治は対抗戦では4位通過となったが、しっかりと帝京に今シーズン3勝している力を見せて準決勝に進出した。
準々決勝はFB山沢京平(2年、深谷)の復帰が大きかった。ロングキックがあり、カウンター能力も高く、トライも演出。また大学選手権に入り、持ち前のボールをキープし続けるアタックも冴えている。キャプテンSH福田健太(4年、茗渓学園)のゲームコントロールが鍵を握る。

FWではPR安昌豪(3年、大阪朝鮮)、 HO武井日向(3年、國學院栃木) 、LO箸本龍雅(2年、東福岡)、FL井上遼(4年、報徳学園)、No.8坂和樹(3年、明大中野八王子)とボールキャリーに長けている選手が多い。BKではWTB髙橋汰地(4年、常翔学園)、山崎洋之(3年、筑紫)、山村知也(3年、報徳学園)の決定力が高い。

また明治のもう一つの武器はスクラムだ。PR祝原涼介(4年、桐蔭学園)が引っ張り、対抗戦の「早明戦」ではプレッシャーを与えられた。再戦でも再び圧力をかけ、トライに結びつけたいところだ。

田中澄憲監督は「我々はチャレンジャー。(早稲田に)対抗戦でも負けているので、気持ちが前面に出る試合をしたい」と言えば、福田キャプテンは「チャレンジャーの精神を忘れず、リベンジするには最高の環境が整った」腕をぶした。

対抗戦のリベンジを誓う明大主将の福田 (撮影・谷本結利)


準決勝の2試合目は対抗戦8連覇を達成し、大学選手権10連覇を狙う帝京大に、関西王者の天理大がチャレンジする。過去の大学選手権では2011年度の決勝で対戦し、帝京が15-12で勝っている。16年度は準々決勝でぶつかり、帝京が42-24で勝利している。なお夏の練習試合では帝京が14-12で勝っている。

留学生の突破力が鍵を握る

「一手一つ」をスローガンに掲げている天理は準々決勝、難敵の大東文化大(関東リーグ戦2位)を下した。モールを軸にLOアシペリ・モアラ(1年)、No.8ファウルア・マキシ(4年、ともに日本航空石川)がトライを挙げ、局面ではスクラム、接点で相手を上回った。

チームの中心は昨年からハーフ団を組んできた2年生のSH藤原忍(日本航空石川)、そしてSO松永拓朗(大阪産大付)の二人だ。準々決勝で負傷したSO松永のケガの具合も気になるが、SO/FB立見聡明(3年、明和県央)やSO林田拓朗(3年、天理)が出場しても能力は高いだけに、遜色ないプレーができるはずだ。

FWはキャプテンHO島根一磨(4年、天理)がリードし、PR加藤滉紫(4年、専大松戸)、PR小鍛治悠太(2年、大阪産大付)がスクラムを支える。LOは由良祥一(4年、大阪産大付)、FL岡山仙治(3年、石見智翠館)、佐藤慶(4年、天理)の3人が運動量豊富だ。

中盤ではCTBシオサイア・フィフィタ(2年、日本航空石川)、CTB池永玄太郎(4年、上宮太子)の二人が存在感を見せ、バックスリーにもWTB中野豪(4年、常翔学園)、久保直人、野田涼太(天理、ともに4年)とスピードのあるランナーが並ぶ。

準々決勝同様、ディフェンスや接点でのリアクションで上回り、スクラムでプレッシャーをかけてペースを握り、留学生の突破力を活かしてトライを取って主導権を握りたい。

1995年から天理を指導し続けている小松節夫監督は「関西から30年以上出ていない日本一」を目標に、チームの強化を少しずつ進めてきた。HO島根主将は「関西の代表として一戦一戦、目の前の試合を戦い、目標の日本一に向けて頑張っていきたい」と言うように、関西王者の「黒衣軍団」が最大の難関を越えることができるか。

天理大のスクラムを支えるPR加藤 (撮影・斉藤健仁)

4年生FWが試合のペースをつくる

「Enjoy & Teamwork」をスローガンに、前人未踏のV10を狙う帝京は、今年度は明治大に春、夏、対抗戦と3連敗を喫したが、それでも徐々に対抗戦で調子を上げて8連覇を達成した。大学選手権の初戦となった準々決勝も前半はしっかりと接点で体を当てて、後半は一気に5トライを挙げ、45-0で危なげなく勝利した。

今年の帝京は4年生FWが引っ張る。キャプテンLO秋山大地(4年、つるぎ)、副キャプテンのNo.8ブロディ・マクカラン(4年、ハミルトンボーイズ)を筆頭に、PR岡本慎太郎、淺岡俊亮、HO呉季依典(いずれも4年、京都成章)、FL菅原貴人(4年、御所実)今村陽良(4年、東福岡)らが軸である。

彼らがスクラム、ラインアウトといったセットプレー、さらに接点で体を張り続けてペースを握る。そしてスペースや隙が出たら、SH小畑健太郎(4年、伏見工)、SO北村将大(2年、御所実)、副キャプテンのFB竹山晃暉(4年、御所実)がチャンスメイク。2年生の尾崎泰雅、木村朋也、奥村翔(いずれも2年、伏見工)らがトライを奪う。

岩出雅之監督は「(準決勝では)うちの厳しさが出せるように頑張りたいと思います。グラウンドだけでなく、ロッカールームやミーティングの雰囲気も変わってきていると感じますので、ここから本当の意味でスイッチが入る」と、選手たちの頑張りに期待を寄せた。

奈良出身の副キャプテンFB竹山は「天理は自分の出身地の奈良の大学ということで、中学、高校と一緒に戦ってきた仲間やライバルたちもいますので楽しみです。自分がしっかりとリーダーシップをとって、みんなで戦いを楽しみたい」と意気込んだ。

天理戦を「楽しみたい」と語った帝京FB竹山 (撮影・谷本結利)

今年度の大学選手権決勝に進むのは創部100周年の早稲田か、昨年度の決勝で悔しい思いをした明治か。10連覇に王手をかける帝京か、初の大学王者を目指す天理か。準決勝の2試合は激戦必至だ。

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