ラグビー

特集:第57回全国大学ラグビー選手権

4季連続の決勝を逃した明治大学、天理大学に完敗もらしさ貫く 帝京大学は一歩及ばず

明治大学は試合終了間際のPKでスクラムを選択した(撮影・全て朝日新聞)

ラグビーの第57回全国大学選手権は1月2日に準決勝があり、2季ぶりの王座奪還を狙った明治大学は天理大学に15-41(前半5-19)で敗れ4季連続の決勝進出を逃した。6トライを奪われる完敗だったが、最後まで明治らしさを貫き、希代の主将、No.8箸本龍雅(4年、東福岡)の学生ラグビーも幕を閉じた。帝京大学は早稲田大学に27-33(前半3-21)で敗れ、前人未踏の9連覇を知る最後の4年生らの王座奪還はならなかった。

後半、明大の箸本はゴール前に迫るが、天理大プロップ小鍛冶悠太のタックルに阻まれる

明大-天理大の試合終了のホーンが鳴ったのは、天理大のゴール前でスクラムを組んでいる時だった。天理大ボールだから、確保して蹴り出せば試合は終わった。ここで明大FWが力を絞り出す。かたまりでグッと押し込み、反則を誘った。

最後のPKでスクラム選択

明大は最後の攻撃となるPKでスクラムを選択した。26点差。既に勝負は決していたが、箸本主将は「前に出る気持ちがそこのスクラムという選択に。僕の選択というよりは、チーム全体の選択だと思っている。そこは絶対前に出て押してやろうという気持ちでスクラムを選択しました」。日が傾いた場内に拍手が起こった。しっかりスクラムを組み、左へ展開したパスがノックオンとなり試合は終わった。田中澄憲監督は「天理大学さんがすべてにおいて強かった。でも、明治も最後、やっぱり自分たちがやってきたこと、スクラム、モールというところで、試合は決まっていたかもしれませんけど、自分たちのやってきたことを最後出して終わろうとチャレンジしてくれた」と振り返った。

「してやられたという感じです」と箸本主将。明大は天理大の速いテンポに翻弄(ほんろう)された。5-5から前半29分と36分に許したトライはともにPKからの速攻を止めきれなかった。「明治はセットしてしっかり前に出るディフェンスをやりたかった。相手の個人、個人が強いというのもあったし、セットする前の段階で球を出されて、ノミネートできないまま、相手のアタックをさせてしまった。セットもできず、前にも出られてない状況で相手の強いキャリアーに前にどんどん運ばれた」。事実上、勝負を決められた後半10分の天理大のトライは明大ゴール前の相手ラインアウトからモールを押され、速いテンポで5回サイド攻撃を仕掛けられて崩された。ゴールも決められ5-31と突き放された。

後半13分、トライを挙げる明大の雲山

明大もここから連続トライを挙げて追いすがった。後半13分にトライを決めたFB雲山弘貴(3年、報徳学園)は「ずっと主導権を握れなかったのが敗因と思う。これからの試合は主導権を握る意識をしてやっていけばペースを握れると思う。そこを意識してやっていきたい」と来季を見据えた。

試合後、天理大のシオサイア・フィフィタ(13)と健闘をたたえ合う明大の箸本

箸本は東福岡高でも主将として高校3冠(春の選抜、夏の7人制、冬の全国大会)を達成した。全国大会では準々決勝の京都成章戦では12点差を、準決勝の御所実(奈良)戦でも11点差をひっくり返し栄冠をたぐり寄せた。

「自分を成長させてくれた明大に感謝」

明大では1年から先発出場し、2年の時には全国大学選手権の決勝で天理大を下して22年ぶりの日本一に。全国大会の決勝の舞台に残れないのは高校2年の時、準決勝で東海大仰星(大阪)に敗れて以来5季ぶりとなった。「自分を成長させてもらえた環境に身を置かせてもらって本当に明治大学に感謝というか、そういう気持ちが強かった」

敗れても悔しそうな顔は見せなかった。「やっぱりキャプテンなんで、応援してくれた皆さんにそういう顔をみせたくなかった。最後まで自分らしさというのを貫くというところを意識じゃないですけどしていました」。2023年のワールドカップ日本代表を狙える逸材はグラウンドを後にした。

前半、突進する帝京大の尾﨑

3季ぶりの優勝を逃した帝京大学のCTB尾﨑泰雅
 「優勝できなかったことをまず、後輩たちに謝りたい。自分たちができることを後輩たちにあとちょっとの間ですけど、しっかり伝えて行けたら良いかなと思います。タックルの部分で前に出続けられたが、個人、個人でまだ甘い部分があった」

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