ラグビー

明治大学はSO森勇登で対抗戦連覇目指す、「4年生力」で6日の早稲田大学戦

明治大学のSOとして先発する森勇登(撮影・斉藤健仁)

関東大学ラグビー対抗戦の優勝をかけた早明戦が12月6日、東京・秩父宮ラグビー場で行われる。慶應義塾大学に敗れて1敗の明治大学は6戦全勝の早稲田大学を破って逆転での対抗戦連覇を狙う。明大が連覇を達成すれば、1996~98年の3連覇以来となり、連覇した時の97年度の主将は田中澄憲・現監督だった。

明大のメンバーは、16点差をひっくり返して逆転勝ちした前節の帝京大学戦(11月22日)から大幅な入れ替えはなく、先発ではWTB猿田湧(4年、秋田工)から石川貴大(4年、報徳学園)の1人の交代にとどめた。

昨年の早明戦は25年ぶりの全勝対決で明大が快勝した(撮影・朝日新聞社)

FWの控えはプロップの山本耕生(3年、桐蔭学園)と大賀宗志(2年、報徳学園)の2人が新たに入った。バックスベンチメンバーは、SHの控えをおかず、帝京戦で後半から活躍したCTB/WTB齊藤大朗(4年、桐蔭学園)とともに一昨年のユニバーシアード(7人制)で金メダル獲得に貢献したWTB/FB松本純弥(3年、佐賀工)が名を連ねた。万能バックスの齊藤大とスピードが光る松本の二人は勝負所でのトライを期待しての起用のはずだ。

センターから帝京大戦でSOに

そして明大のメンバーで個人的に一番注目したのは司令塔であるSOに誰を指名するか、だった。

帝京大戦は、本来、12番や13番をつけてプレーしているCTB森勇登(4年、東福岡)が10番を務めた。高校時代や大学に入ってから試合途中からSOとしてプレーしたことはあったが、大学で10番を背負って先発したのは初めての経験だった。

森は「楽しくプレーしようと心がけました。前半は自分たちのプレーができず差が開き、焦りました。パニックしかけましたが(キャプテンの箸本)龍雅(4年、東福岡)とコミュニケーションをとって前半の最後から修正できた。SOとしては試合に勝ったことが良かった」と振り返った。

副将の山沢はけがでサポートに回る

昨季、明大は山沢京平(4年、深谷)がFBからSOにコンバートされて10番を背負い続けた。全国大学選手権の決勝では敗れたが、キック力もあり、ラン、パスのスキルにもたけた山沢は、副将になった今季も当然、10番を背負うと期待されていた。

山沢はオフシーズンに以前から痛めていた右肩を手術した。今季の復帰は対抗戦終盤と見られていたが、追い打ちをかけるように、シーズン開幕直前の9月末に右ひざの靱帯を断裂、今季のプレーは絶望的となってしまった。そして将来のことも考え、治りがあまり良くなかった右肩と右ひざの両方にメスを入れる決断をした。

昨年の早明戦でも活躍した明大の山沢。今季はけがで雄姿をみられない(撮影・朝日新聞社)

山沢はSNSで「今年はもうグランドには立てないですけどチームとして去年のリベンジは果たします」と気持ちを切り替えて、チームのサポート役に徹している。練習後は下級生のSOらと積極的にコミュニケーションをとる姿があり、試合前もチームの雰囲気を盛り上げようと声を出していた。

池戸や齊藤誉が新司令塔に挑戦

そのため開幕から紫紺のジャージーの10番を背負ったのは、ラン、パス、キックのスキルが高いルーキーの池戸将太郎(1年、東海大相模)だった。開幕の立教大学戦ではマン・オブ・ザ・マッチに選ばれる活躍を見せ、続く、青山学院大学戦でもチームに勝利に導いた。

池戸は相手のレベルが1ランク上がった筑波大学戦ではやや精細に欠いた。代わって後半途中から出場したSO齊藤誉哉(2年、桐生第一)がフィジカルで強さを発揮し、勝負を締めた。

筑波大戦でのプレーが評価されてSO齊藤誉は慶大戦で先発に抜擢(ばってき)された。しかし、対抗戦の大一番で初めて10番を背負ったプレッシャーもあったはずで、ゲームをうまくコントロールすることはできず、チームは12-13で敗れた。

明大は次の日体大戦は不戦勝となり、前述の通り、帝京大戦で田中監督が10番を任せたのは池戸と齊藤誉の下級生ではなく、1年生からCTBとして試合に出場し続けて4年生の森だったというわけだ。

落ち着いた表情で前日練習をこなす明大の森(撮影・斉藤健仁)

帝京大戦後、早明戦の10番に誰を起用するか聞かれて、田中監督は「森のSOもオプション一つだと思いますし、途中から出た齊藤もいるし1年の池戸もいる。今週の練習試合を帝京とやる予定なので、パフォーマンス見て決めていきたい」と話していた。最終的に優勝がかかる伝統の一戦に田中監督は再び、10番に森を起用した。

田中監督「試合にかける思いを持っている」

「もちろん池戸、齊藤もいい部分があるが、森の場合ポジションは違うが1年からメンバーに入っているので経験値があり信頼感がある。23人のメンバーのトータルで考えて森をSOにした。(4年生なので)試合にかける思いも持っているし、山沢もいないし(バックス)リーダーなのでまとめてほしい」(田中監督)

日本代表やサントリーで活躍したSHだった田中監督は、明大時代にも大学選手権優勝や主将も経験。そのため、「大学生スポーツは4年生のものだと思います。4年生が自分のクラブをどうしたいのかという思いが一番大事です」と言い続けてきた。今後の大学選手権を見据えて、その言葉通りの選択だった。

明大のNo.8箸本主将。田中監督は4年生に託す思いが強い(撮影・朝日新聞社)

森は早明戦で再び10番を背負うことに関して、「普段通りのプレーを意識したい。(試合の最初から流れ考えるのは)あまり経験してなかったのですが、前の試合で少し経験できたのでよりよくできると思います。昨年度(の大学選手権決勝で早稲田大に)負けているので、そのリベンジもあるし、(連覇すると)22年ぶりになるので目指したい」と冷静に話した。

ヒガシの後輩SOと対決

また、早大のSOは森の東福岡高の2年後輩にあたる吉村紘(2年)が務める。森は「ヒガシ(東福岡)のときから、結構、一緒にプレーしていたので負けたくない。SOとして縮こまることなくチャレンジしてプレーして、チームをいい方向にもっていきたい」と腕をぶした。

早明戦を含めて今年度、残りは多くて5試合。対抗戦の連覇はもちろんのこと、大学選手権で明大が王座奪還できるかどうかは、森をはじめ、箸本主将、副将のロック片倉康瑛(明大中野)ら4年生の双肩にかかっている。

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