野球

最高殊勲選手は福永奨、オリックス3位指名の主将は國學院大學を初の連覇へ導く

優勝を決めこぶしを握る國學院大學の福永奨(左)。最後は中央大の古賀悠斗を三振に(撮影・全て朝日新聞社)

東都大学野球1部リーグは國學院大學が2季連続3度目の優勝を飾り、同校初の連覇を達成した。東都1部での連覇は2017年春から3連覇した東洋大学以来。主将として、正捕手として、4番打者としてチームを引っ張った福永奨(4年、横浜)が、最高殊勲選手、ベストナインに選ばれた。リーグ期間中のプロ野球ドラフト会議ではオリックスから3位指名された。

監督も認める、大きな成長

「やるべきことを練習通りにやってきたことが、連覇につながったと思います」
中央大との最終戦(10月29日)に勝って春秋連覇を決めたあと、福永は強い口調でそう言った。
連覇を狙って臨んだ秋のリーグ戦、國學院大は初戦、2部から昇格してきたばかりの日本大に敗れ黒星スタートとなった。日大のエース赤星優志(4年、日大鶴ケ丘=巨人ドラフト3位)に4安打完封を喫し0-3の完敗だった。

秋は黒星発進。日大に敗れた八回にマウンドで北山大毅(左)と

初戦の第1打席で福永は右手首に死球を受け、日大との2回戦を欠場することになる。2回戦の先発はリーグ戦初先発の坂口翔颯(かすが、1年、報徳学園)。福永に代わってマスクをかぶったのは、坂口と同じ1年生の神里陸(東海大相模)だった。6回を無失点に抑え勝利投手となった坂口は試合後、「福永さんは『1年生の神里と組むから、正直、投げやすいだろう?』って軽い感じで声をかけてくれて、初先発の緊張も解けました」と話した。
鳥山泰孝監督は「そのあたりが福永、うまいですよね。試合中も要所要所で他の選手に声をかけにいく。人の心をつかんでアドバイスや会話ができるようになったところも彼の大きな成長です」と福永の主将としての成長を喜ぶ。

東海大相模・神里陸 それぞれの道で父と兄に続いた「甲子園」

2カード目の青山学院大1回戦から福永もスタメンに復帰したが、春、圧倒的な力を見せた打線になかなか火がつかず、チームは波に乗り切れなかった。1回戦は坂口が10回を完封し、延長タイブレークの末にサヨナラ勝ちしたが、2回戦では4回に1イニング10失点を喫し、打線も5安打1得点で1ー10と大敗した。

1年生の坂口翔颯はさらに成長し最優秀投手に

3カード目の駒澤大1回戦で福永は四回にシングルヒット、五回に適時二塁打、九回にツーランと3安打4打点の活躍。9-1と大勝し、そこからチームは4連勝と優勝へ向け突き進んだ。
亜細亜大と対戦した4カード目、1回戦では初回、2死二塁から先制の内野安打を放った。2回戦では二回に先制の2号ソロ本塁打。初回の守備では亜細亜大に流れがいきそうな場面で走塁を刺し、チームのピンチを救った。國學院大はこの連勝で優勝に王手をかけた。

シンプルに、やるべきことをやろう

やってきた練習、積み重ねてきた努力、試合への準備……、自分たちがここまでやってきたことに福永は自信を持っている。学生コーチやデータ班、マネージャーほか、チームを支える部員の働きぶりにも自信を持っている。だから、福永はこの秋、部員たちの前でこう言い続けた。

「シンプルに、考え過ぎず、やるべきことをやろう」
「自分たちの、いつもの野球をやろう」

鳥山監督は「福永は主将であり捕手であり4番打者。いくつもの役割を彼に背負わせてしまったが、背負ったものを自分の力に変えるぐらいの器を持った男だと思っています」と全幅の信頼を寄せる。
春のリーグ戦12試合でチーム打率.262、69得点と打ちまくった國學院打線が、秋は10試合31得点、チーム打率.196と数字を落としながらも連覇を成し遂げた。福永は打率.323(リーグ6位)、2本塁打、7打点と打線を引っ張り、強肩・好リードで投手陣を支え、最高殊勲選手に選ばれた。

優勝を決めた試合でも一回にチーム初安打で先制点のお膳立て

横浜高時代は2年夏、3年夏の甲子園に出場。最上級生時は主将を務めた。大学では2年春からリーグ戦に出場し、3年秋に正捕手の座を獲得(3年春はコロナ禍によりリーグ戦中止)。最上級生になった今年は主将として春秋連覇に大きく貢献した。

10月11日に行われたドラフト会議ではオリックスから3位指名を受けた。二塁送球タイム常時2秒を切る強肩と強いキャプテンシーを武器に、来シーズンはパ・リーグのチャンピオンチームでレギュラー獲りとリーグ連覇に挑むことになる。

神宮大会で初の大学日本一に挑む

リーグ戦は最高の形で終えることができたが、最後にまだ大きな仕事が残っている。
「神宮大会へ向けて気持ちを切り替えてやっていきたい。全日本大学野球選手権では準々決勝で負けてしまい、その悔しさを忘れずに全員で頑張ってきました。東都の代表としてふさわしいプレーができるように、これからまたやっていきたいです」

優勝旗を持つ福永と選手たちは、スタンドの関係者に笑顔でこたえた

6月の全日本大学野球選手権で國學院大は初戦、富士大(北東北大学)を4ー2で破ったが、続く準々決勝では福岡大(九州六大学)に延長十回タイブレークで1ー2と悔しいサヨナラ負けを喫した。チームとして初の大学日本一を目指し、11月20日からの明治神宮大会に挑む。初戦の相手は仙台大(東北3連盟・仙台六大学)と決まった。リーグ戦春秋連覇に加え、もう1つの勲章を手に入れてプロへの手土産にしたい。

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