陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

東大・秋吉拓真が箱根駅伝で夢実現 今後は「学生トップランナー」と認められる選手に

東京大学の秋吉拓真は8区区間7位相当の力走を見せた(撮影・藤井みさ)

第101回箱根駅伝

1月2・3日@東京・大手町~箱根・芦ノ湖間往復の217.1km
関東学生連合 11時間06分53秒(参考記録、16位相当)
8区 秋吉拓真 1時間04分45秒(同、7位相当)

1月2日、3日に開催された第101回箱根駅伝で、東京大学の秋吉拓真(3年、六甲学院)が、東大ランナーとしては2020年の第96回大会で10区を走った阿部飛雄馬さん以来となる出走を果たした。8区を任され、復路の戸塚中継所では普段から一緒に練習することも多い東京大学大学院・古川大晃(D4年、八代)との「赤門襷(たすき)リレー」も実現。「楽しく走りきることができました」と振り返った。

前半は「区間新記録ペースで行く」を実行

昨年10月の箱根駅伝予選会を通過できなかった大学のうち、個人成績が上位だった選手の中から、本戦をまだ走ったことがない選手たち(1校あたり1人)で構成される関東学生連合チーム。秋吉は予選会で全体77位となり、選出されたメンバーの中では11番手。その後、選考レースの一つとなる昨年11月の10000m記録挑戦競技会で最終組のトップとなり、本戦出走に前進。「1区を走りたい」と意気込みを語っていた。

東京大学・秋吉拓真 大学受験の頃から夢見た箱根駅伝に近づく好走「1区を走りたい」
関東学生連合チーム内の争いを制し、箱根駅伝出走を勝ち取った(撮影・藤井みさ)

オープン参加となり、チームも個人も参考記録になるが、今回関東学生連合チームがめざしていたのは「8位相当」。秋吉にとって自身初の箱根路で任されたのは、復路の8区だった。古川がその意図を推察する。「秋吉の走力的には往路に回っても良かったかなと思うんですけど、復路のシード権争いのところでしっかり勝ちきるという戦略も大事。イメージ的には秋吉で(順位を)上げて、僕のところで粘って、最後は福本君(陽樹、武蔵野学院大学4年、深谷商業)でシード圏内というのが理想の展開だったんじゃないかなと思います」

16位相当で襷を受けた秋吉は、「区間新記録ペースで行く」という強い思いを持って平塚中継所をスタートした。海岸線を走る前半はその言葉通り、1km2分58秒ほどのペースで軽快にリズムを刻んだ。序盤は結果的に区間賞を獲得した青山学院大学の塩出翔太(3年、世羅)よりも速いペースで、レースを進めた。ただ、この区間のポイントは16km手前から約500m続く「遊行寺の坂」。秋吉はここを「ある程度覚悟して行った」が、坂が終わって平地になった後、小刻みなアップダウンがあるところで「完全に足が止まってしまった」。それでも1時間04分45秒の区間7位相当という好走を披露した。

「区間新記録ペース」を意識して遊行寺の上り坂へ駆けて行った(撮影・藤井みさ)

「絶対に繰り上げさせない」気持ちで

戸塚中継所で待ち受けていたのは、古川だった。秋吉が「自分は区間新ペースで行くんで安心して待っていてください、と大口をたたいていました。実際に渡すことができて、非常にいい襷リレーになったと思います」と言えば、古川は「特にこの1年は一緒にきつい練習をやってきた。彼は『過去の僕史上最強のチームメート』だったので、そうした彼と襷をつなげたことは幸運なことだなと思っています」と感慨深げに語った。

復路は先頭から20分差がつくと繰り上げスタートになるため、終盤区間になるにつれて、その可能性が高まる。復路の戸塚中継所は、往路と合わせて計8カ所あるうちの7カ所目。つまり秋吉を含め、それまで走ってきた関東学生連合チームの選手たちに大ブレーキがあると「赤門襷リレー」も実現されない可能性もあった。トップと17分21秒差で駆け出した秋吉は、「ずっとお世話になってきた先輩なので、『絶対に繰り上げとかはさせない』という気持ちでした」。繰り上げスタートの重圧は感じず、むしろ区間新にチャレンジしていくという気持ちの方が大きかった。

9区を走った古川大晃との「赤門リレー」を実現(撮影・浅野有美)

出るだけじゃなくて、勝負したい

大学受験の頃から「箱根駅伝に出場する」ことを夢見て東京大学をめざし、3年目でその夢をつかみ取った。残りの大学生活は何をめざし、今回の箱根路を今後の競技生活にどう生かしていくのか。本人に尋ねると、「箱根駅伝をめざしていく過程で『出るだけじゃなくて、勝負したい』という気持ちも出てきました。現にその気持ちは今回の走りで示せたかなと思うんですけど、そこは箱根だけはなくて、あと1回残っている関東インカレとかでしっかりと勝負して、学生トップランナーと認めてもらえるような選手になりたいです」と答えてくれた。

昨年の箱根予選会から、10000m記録挑戦競技会、そして箱根本戦を通じて「調子が上がったというよりも、力がついてきたというところをすごく感じています」と手応えを口にした秋吉。東京大学の陸上運動部長距離パートは「チームとして記録も大事にしている」と言うように、これからも一つひとつのレースで、過去の自分たちを超えることをめざし、レベルアップを図る。

これからも過去の自分を上回るべく、走り続ける(撮影・浅野有美)

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