陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

東京大学・秋吉拓真 大学受験の頃から夢見た箱根駅伝に近づく好走「1区を走りたい」

10000m記録挑戦競技会で全体トップとなった東大の秋吉拓真(すべて撮影・井上翔太)

10000m記録挑戦競技会 4組

11月16日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)
1着 秋吉拓真(東京大3年)   28分52秒31
2着 栗原舜(明治学院大4年)  29分00秒11
3着 溝上稜斗(明治大4年)   29分03秒08
4着 長谷川瑠(流通経済大4年) 29分06秒48
5着 森川蒼太(流通経済大4年) 29分12秒79
6着 佐野颯人(武蔵野学院大2年)29分17秒96
7着 福本陽樹(武蔵野学院大4年)29分25秒88
8着 辻本幸翼(上武大4年)   29分40秒45

※太字の名前は第101回箱根駅伝の関東学生連合チーム選出選手

11月16日に相模原ギオンスタジアム(神奈川)で開催された10000m記録挑戦競技会で、東京大学の秋吉拓真(3年、六甲学院)が28分52秒31をマークし、全体トップとなった。秋吉を含め、第101回箱根駅伝の関東学生連合チームに選ばれた選手が多く出場した中での好走。東大を受験する頃から夢見た箱根路の舞台に近づいた。

組の中での順位にはこだわっていた

レースには秋吉の他、東京大学大学院の古川大晃(D4年、八代)や明治大学の溝上稜斗(4年、九州学院)ら、関東学生連合チームに選ばれた16選手のうち、11選手が出場。箱根駅伝10区間の出走に向けた一つの指標にもなるため、タイムだけでなく、学連チーム選出選手内での順位という点でも注目された。

レース後は関東学生連合チームのメンバーがそろい、取材の機会が設けられた

平成国際大学のジョセフ・ムイガイ(2年)がペースメーカーを務め、秋吉はレース序盤から集団の前方につけた。最初の1000mを2分51秒、その後も2分52秒~2分53秒でペースが刻まれ、徐々に集団で走る選手たちの間が開き始めた。5000mを14分21秒で通過し、秋吉は流通経済大学の長谷川瑠(4年、波崎)に続く2番手。8000mを過ぎてペースメーカーが外れた後、秋吉は明治学院大学の栗原舜(4年、三浦学苑)との一騎打ちを制した。

「この組の中での順位にはこだわっていたので、そこで1着を取れたことはすごくうれしいです。ただ自己ベスト(28分49秒27)を出したいと思っていたので、そこにわずかに及ばなかったというところは、まだまだ課題かなと思います」。レース後、秋吉は収穫と課題の両方を口にした。

ペースメーカーが外れた後、栗原(左)との一騎打ちを制した

校内行事の30km走で負け知らずの3連覇

幼稚園の年長ぐらいから、サッカーに打ち込んでいた。高校から陸上に切り替える大きなきっかけとなったのが、中高一貫の六甲学院で開催された校内行事だ。「中学1年生から高校2年生までの全員が30kmを走るという学校行事が、年に1回あるんです。中学1年生のときは中止になっちゃったんですけど、中学2年で初めて走ったときに全校生徒の中で優勝して、高校1年まで3連覇しました」

高校2年のときは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった。高校3年生は受験が近いため、全員が参加しない。つまり秋吉は、参加した30km走を負け知らずのまま、六甲学院での生活を終えた。「サッカーをやめるときも、結構葛藤があったんですけど、陸上をやった方が高みを目指せるんじゃないかと思いました」

競技者として、より上を目指すためにサッカーから転向

記憶が明確ではないが、本人によると高校最初のレースは5000mで16分20秒あたり。以降、毎年30秒程度ずつ縮め、高校3年で14分台に突入した。サッカーをやめて良かったのかという気持ちも徐々に小さくなり、練習すればするほどタイムに表れる陸上の面白さに、のめり込んでいった。

「勉強も精いっぱい食らいついています」

「大学でもレベルが高い環境で学びたい」という理由から東京大学を志した。なぜ、関西の京都大学や大阪大学ではないのか、という話になると、当時から学生連合チームの一員として箱根駅伝を走りたいという思いがあったと教えてくれた。「高校で陸上を始めてから(思いが)出てきました。『受験勉強で自分が逃げないようにするための理由』みたいなところもあるんですけど、そこをモチベーションに頑張ってきました」。現在は工学部機械情報学科で、ソフトウェアとハードウェアの両面からものづくりを学んでいる。この日の走りのように「勉強の方も精いっぱい食らいついています」。

10月の箱根駅伝予選会では全体77位だった

箱根駅伝では「1区を走りたいと思っています」。その心は「特に自分が見てきた箱根駅伝の中では、中央大学の吉居大和選手(現・トヨタ自動車)や、前々回の新田颯選手(元・育英大学)の走り。集団の先頭を走る姿に憧れているので、自分もそういう姿を箱根路で見せたいなという思いがあります」。普段のポイント練習は週に2、3日。それ以外の日は、20kmのジョグをするということを秋吉の中で決めており、ジョグの最中に自分が箱根路を駆け抜ける姿を想像したり、レースプランを組み立てたりすることもあるという。

今回の学生連合チームでは、普段から一緒に練習している古川がキャプテンを務めることとなった。チームを率いる東京農業大学の小指徹監督は「最年長でもありますし、文武両道で頑張っていますし、周りの選手への求心力があるのかなと思って、私の方からお願いしました」。チームメートに先輩がいることについて秋吉に尋ねると、「自分が大学に入ったときから、ずっと古川さんの背中を追ってきました。今は一緒に高め合えているので、本当に感謝しかないですし、一緒に箱根路を走れたら最高だなと思ってます」と力強く答えてくれた。

東大院に所属する古川、秋吉ともに箱根駅伝出走なるか

出走すれば第96回大会の阿部飛雄馬さん以来

関西で過ごした高校時代から箱根駅伝をめざし、学業も部活も食らいついて粘った末にいま、夢の実現が近づいている。出走すれば、第96回大会で最終10区を走った阿部飛雄馬さん以来。年明けの箱根駅伝は優勝争いだけでなく、東大ランナーが出走するかという点でも注目を集めそうだ。

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