陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

順天堂大が1秒差でギリギリの箱根駅伝予選会通過 長門俊介監督「まだまだ発展途上」

10番目に名前が呼ばれ、喜び合う順天堂大の選手たち(撮影・藤井みさ)

第101回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会

10月19日@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園の21.0975km

1位 立教大学   10時間52分36秒
2位 専修大学   10時間53分39秒
3位 山梨学院大学 10時間54分06秒
4位 日本体育大学 10時間55分58秒
5位 中央学院大学 10時間56分01秒
6位 中央大学   10時間56分03秒
7位 日本大学   10時間56分53秒
8位 東京国際大学 10時間58分53秒
9位 神奈川大学  10時間59分12秒
10位 順天堂大学  11時間01分25秒

10月19日に開催された第101回箱根駅伝予選会で、順天堂大学が本戦に進めるギリギリラインの10位に入り、14年連続66回目の出場を決めた。11位の東京農業大学とは、わずか1秒差。長門俊介監督は通過のアナウンスを聞くと、「感情がちょっとおかしくなってます。相当悔しさはありますけど、まずは切符を取らないとリベンジもできない」と感極まった表情で感想を述べた。

言い続けた「1秒が大事だよ」

年始の第100回箱根駅伝で17位に沈んだ順天堂大。2016年に長門監督が指揮を執るようになってからは、3度目の予選会となった。2018年の第95回大会の予選会は2位、2020年の第97回大会はトップ通過。「今までは結構いい位置で通らせてもらった」だけに、今回は結果発表で名前がなかなか呼ばれずにハラハラし、10番目通過が決まると、さまざまな思いがあふれ出た。

発表後はさまざまな感情が入り交じったという長門俊介監督(撮影・井上翔太)

レースプランはエースの浅井皓貴(4年、豊川)と吉岡大翔(2年、佐久長聖)がフリーで走り、そこに続く存在の海老澤憲伸(4年、那須拓陽)と古川達也(2年、市立橘)、荒牧琢登(2年、開新)の3人が一つのグループに。それ以外の選手は主将の服部壮馬(4年、洛南)が後方から仲間を鼓舞しながら進めるというものだった。

午前9時の段階で気温が23度を超え、湿度も高く、日差しを浴びるとさらに体感気温が上がる難しいコンディション。スタートすると各校の留学生選手たちが抜け出し、中央学院大学の吉田礼志(4年、拓大紅陵)と東京大学大学院の古川大晃(博士4年、八代)が続いて、その後ろに大集団ができた。浅井と吉岡は、この集団の前方にいた。

長門監督は「この気象状況だったら僅差(きんさ)になるということは、言い続けていました。ずっと『1秒が大事だよ』と。応援も本当に声がかれるまでしてくれた」と振り返る。10km通過時点で10位、15kmでは12位と際どい勝負に持ち込まれた。浅井がチームトップとなる日本人2位(全体14位)でフィニッシュした一方、吉岡は海老澤と古川に続くチーム4番目、全体では個人98位だった。

17km付近を力走する吉岡大翔(96番)と堀越翔人(左、撮影・藤井みさ)

全日本大学駅伝出場を逃し、チームは変わった

10番目に順天堂大の名前が呼ばれると、選手たちは喜びを爆発させ、涙を流しながら抱き合い、お互いの健闘をたたえた。長門監督が「思うように動いていなかったところでも、粘り強く走れていた」と言えば、服部は「本当に力を出し切れたという選手が、今回は少なかった。正直不安な気持ちの方が大きかったんですけど、10番で呼ばれたときはホッとしました。ただ『本戦に向けて上げていかないと通用しない』ということはチームのみんなに伝えます」と先を見据えた。

第100回箱根駅伝を17位で終え、新チームになった後も、チームは苦しみ続けた。「去年の1年間は結果が出なかったので、まずは自信を取り戻すところから始まりました」と長門監督。志半ばのところで迎えたのが、6月の全日本大学駅伝関東地区選考会だった。

浅井皓貴は日本人2位でフィニッシュ、エースとしての役割を果たした(撮影・吉田耕一郎)

このときはエースの浅井が右足首のケガで欠場。服部も調子が上がらず、他の選手と比べて練習も積めていなかったことから「外れるべくして外れた」と本人。1組で本来なら3000m障害(SC)で日本選手権出場を狙えていた村尾雄己(3年、佐久長聖)が出走し、最下位に。他の選手も組の上位に絡むことができず、17位で全日本大学駅伝出場を逃した。服部は「日本選手権を回避させてまで村尾を走らせてしまったのは、申し訳ないですし、ふがいない」と悔いる。

この時期について長門監督は「自信も、これまで積み上げてきたものも崩れかけた」と言う。名誉総監督による不適切な指導で退任に発展する騒動もあった。村尾によると、騒動の後、長門監督から「だからといって、順大が弱くなるわけではない。ぶれない順天堂らしい姿を見せていこう」という話があった。村尾は9月の日本インカレ男子3000mSCで連覇。チームも夏場の苦しい練習を乗り越えてきた。きついとき、周囲に声をかけられる選手が以前に比べると増えた、と服部も実感している。

4年生として最後の駅伝シーズンにかける思いも強い海老澤憲伸(87番、撮影・藤井みさ)

予選会と本戦は別物、「下剋上」を

今シーズンの順天堂大は「下剋上」をスローガンに掲げている。長門監督は箱根本戦に向けて「(シード校も合わせると)20番目のチームではありますけども、ここから何校に食い下がれるか、何校を振り落とせるか。まだまだ戦える選手もいますので、しっかりとシード権だけじゃなくて、5位以内を狙いながら戦っていきたい」と意気込みを語った。

確かに今回の箱根予選会は、チームの状態だけでなく気象条件も相まって、守りを固めるプランで進行した。その意味では、今回のレースがそのまま箱根本戦につながるとは言い難く、まったくの別物と考えた方が良さそうだ。「今の順天堂は、まだまだ発展途上。今の世代がいい状態を披露できるのは、箱根駅伝の時期になってからかなと思うので、そこまで辛抱強くやっていきたい」と長門監督は言う。

箱根駅伝本戦で、はい上がってきたチームの集大成を見せる(撮影・藤井みさ)

今シーズン唯一の出場となる箱根駅伝まで、約2カ月半。予選会とは異なり、本戦は単独走の機会も増え、より個人の力が試される。メンバー選考も一度リセットされる予定だ。苦しいところからはい上がってきた今年度のチームは、最後にどんな集大成を迎えるのだろうか。

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