陸上・駅伝

特集:New Leaders2024

順天堂大・服部壮馬主将 自分のことよりチーム優先、駅伝に絞って挑むラストシーズン

復活を期す順天堂大で今シーズンの駅伝主将を務める服部(撮影・井上翔太)

昨シーズンは、全日本大学駅伝でも箱根駅伝でも3大会連続でつないできたシード権を逃してしまった順天堂大学。巻き返しを図る今シーズンの駅伝主将には服部壮馬(4年、洛南)が就任した。3000m障害(SC)で昨年の世界選手権6位入賞を果たした三浦龍司(現・SUBARU)とは高校からの仲。種目も3000mSCを専門としてきた服部だが、ラストイヤーは駅伝だけにかける。

【新主将特集】New Leaders2024

三浦龍司のレースを見て「かっこいい」

京都出身の服部は、6歳上と2歳上のお姉さんの影響で陸上競技を始めた。小学生の頃は、2歳上の姉の練習に交ぜてもらったこともあり「中学の先生から『中学に入ったら陸上をやってみないか』と声を掛けてもらったことが大きかったです」。当初から長距離種目が専門で、中学3年のときに三浦のレースを見たことがきっかけで「かっこいい」と思い、高校1年から3000mSCに取り組むようになった。

3000mSCは、走る間に障害物を28回、水濠を7回越える。最初のレースで服部は「きつい」よりも「楽しい」という感情が先に来たという。「普通に走っているだけじゃなくて、障害を跳びながらの駆け引きとかが楽しいと感じました」。憧れの存在だった三浦や早稲田大学に進んだ諸富湧といった先輩たちにも恵まれ、めきめきと力をつけた。高3の10月に行われた全国高校陸上では、分須尊紀(現・日本体育大学4年、東農大二)、黒田朝日(現・青山学院大学3年、玉野光南)に続く3位。全国高校駅伝では4区を走り、チームの3位入賞に貢献した。

諸富湧や三浦龍司に憧れ、高校から3000mSCに取り組んだ(撮影・藤井みさ)

3000mSCと駅伝の両立めざして順大へ

順天堂大に進んだのは「3000m障害と駅伝を両立できる大学を考えていたことと、中学校のときから体育の先生をめざしてみたい」と感じていたから。入部間もない5月に開催された関東インカレ男子1部3000mSCで2位に入り、いきなり頭角を現した。この年、三浦は東京オリンピックで7位入賞。日本選手として初の快挙に「やっぱりすごい」と感じる一方、「あのレベルまでいきたい」とも思うようになった。

「大学1年のときは結構タイムが出ていたので、2年になる頃には『憧れる』よりも『目標』にして、数年後は一緒の舞台で勝負したいと思うようになりました。憧れだと遠い存在のように見えますが、超えていかないといけない存在にした方が、めざしやすいというのもありました」

ルーキーイヤーから関東インカレ男子1部で2位に入った(撮影・藤井みさ)

2年目も学生個人選手権で8分45秒84をマークし2位に入ったが、その後は三浦に「離されている」感覚が募った。3大駅伝もルーキーイヤーは出雲駅伝でデビューしたものの、2年目は出走せず。3年目の昨シーズンは学生個人で3000mSCに出場した後、「5000mで力をつける」方針に切り替えた矢先、けがに見舞われた。「8月に左の腓骨筋腱(ひこつきんけん)を痛めてしまって、ほぼ夏合宿はできていませんでした」

再び走れるようになったのは、10月の上旬だった。復帰から2週間後に10000mを走ると、今度は左の腸脛靱帯(ちょうけいじんたい)に違和感が出てきた。それでも11月5日の全日本大学駅伝には1区で出走。13位で三浦に襷(たすき)をつないだ。レース後、違和感は痛みに変わった。「痛みがなくなって走ったら、また同じところに痛みが出てくるということを繰り返していました。箱根駅伝の前も走れていないです。結局走り始めたのは、3月の学生ハーフ(10日)の後でした」

順大ルーキー・服部壮馬 関東インカレ3000mSC2位、三浦龍司の背中を追って
順天堂大・服部壮馬が個人選手権3000mSCで2位 三浦龍司は憧れから目標へ
昨年の全日本で1区を任され13位、左足に違和感を抱えたまま走り抜いた(撮影・杉本康弘)

全日本選考会と箱根予選会でトップ通過を狙う

主将就任は箱根駅伝前の昨年12月に同期で話し合い、最終的に箱根後、長門俊介監督の了承を得て決まった。もともと学年のリーダー的な存在だった服部は、自ら立候補した。「自分自身がチームを引っ張って『強い順大を取り戻す』という気持ちが強いです」

チームとしては今シーズン、全日本大学駅伝関東地区選考会と箱根駅伝予選会をトップで通過し、本戦ではシード権の奪還を目標にしている。そこへ貢献するため、服部個人の目標は10000mで28分20秒、5000mで13分45秒を切ることだ。

決意を尋ねて疑問に思った。「サンショー(3000mSC)は?」

すると服部は「今年はやるつもりはないです」と答えた。

昨シーズンの3大駅伝は出雲が9位、全日本は11位、箱根が17位。全日本の選考会や箱根予選会からはい上がり、シード権を取り戻すためには主将自身が5000mや10000m、ハーフマラソンで結果を残して、チームを盛り上げていかないといけないと判断した。長門監督にも自分の考えを伝えた。「自分がやりたいことじゃなくて、チームに影響を与えられるような走りをしたい」と。

ラストイヤーはチームを優先し、駅伝での復活に絞って取り組む(撮影・井上翔太)

理想の主将像は、2学年先輩の西澤侑真

理想としている姿は、2022年度に主将を務めた西澤侑真(現・トヨタ紡織)だ。「西澤さんは、純粋に勝ちたいという気持ちがぶれていなくて、周りもそれに影響されて気持ちを上げてくれる熱い方でした。自分はまだまだ表に出せなくて、監督から『もっとグイグイ言っていいんじゃない?』とか『厳しい言葉もかけていくように』と言われているんですが……」

今年度の4年生の特徴は「学年間の仲が良くて、競技面も似たタイムを持っている人が多い」。浅井皓貴(4年、豊川)や海老澤憲伸(4年、那須拓陽)を筆頭に、そこへ続く力を持っている選手も多い。「今後も切磋琢磨(せっさたくま)してタイムを伸ばしていかないといけないですという話をチーム内でしています」

4月1日付で「元祖・山の神」と言われた今井正人氏と田中秀幸氏がコーチに就任し、チームに新しい風を吹かせている。ここへ今シーズン、駅伝だけにかける新主将がどんな取り組みを見せてチームを引っ張るのか。その先に順大の復活はある。

in Additionあわせて読みたい