陸上・駅伝

順天堂大・三浦龍司、世界陸上で実感したスピード 結果を出して「学生駅伝三冠」へ

三浦(中央)は自身初の世界陸上を前にして、「決勝に残ることが大前提」と話していた(代表撮影)

7月15日、順天堂大学の三浦龍司(3年、洛南)はアメリカ・オレゴン州ユージンで開催された世界陸上3000m障害(SC)予選に出場。21日に帰国し、夏合宿には初日の30日から加わった。その後もトラックレースを予定していた三浦であれば、別スケジュールを組むこともできただろうが、「毎シーズンやっていることなので例年通り」とさらり。自分は駅伝に特化していないとしても、チームとして同じ気持ちで戦いたいという思いが、そこにはある。

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3000mSCのラスト1000mが2分40秒という世界

昨夏の東京オリンピックで7位入賞を果たしただけに、三浦が世界陸上でどんな走りをするのか、多くの人が注目していた。三浦自身、海外レースはそれまで2回しか経験がなく、6月30日にIAAFダイヤモンドリーグ(スウェーデン・ストックホルム)に出場した上で、世界陸上を迎えた。

ベストコンディションだった三浦は積極的に集団の前方でレースを進め、2000mから先頭のペースが上がると三浦も食らいつく。だがラスト1周で前の4人との差が開き、8分21秒80の5着でゴール。各組3着までが順位で決勝に進出、残る6人はタイム順だったが、三浦は前とわずか0.74秒差での7番目で予選敗退となった。

先頭集団がラスト1000mを2分40秒ほどでレースを進める姿を目の当たりにし、世界のレベルの高さを痛感。何より、海外レースの経験が必要だと実感した。長門俊介監督も「(過去に経験してきた世界大会の)ジュニアとはまったく違いますし、選手権でしか味わえない駆け引きもあります。直近で言えば2024年のパリオリンピックに向け、経験を積むことが彼にとっても私にとってもいい経験になると思う」と話す。その第一歩として、三浦は夏合宿を挟み、8月26日はIAAFダイヤモンドリーグ(スイス・ローザンヌ)に挑んだ。

「自分のスキル、技術をまだまだ伸ばしていかないといかないと、世界の舞台に出た時に通用しない」と三浦(中央)は言う(代表撮影)

日々の練習でも課題を感じている。「3000mSCはすごく総合的な種目だと僕は思っています。ハードリング技術はもちろん、1500mのスピードや、5000mで13分一桁や10秒台を出せるようなスピード持久力はスタンダードの力として必要です」。どんなレース展開になったとしても勝ちきるため、技術や走力を磨き、体作りや動き作りを一から見直す。世界陸上は自分の現在地を知るきっかけとなった。

また、世界陸上は同じ日本代表として戦う選手たちと交流を深める場にもなった。特に田澤廉(駒澤大4年、青森山田)など長距離種目の選手たちとは同じスケジュールで行動し、レース後には自分が得たもの、感覚、印象などをじっくり話し合う機会に恵まれた。「そうした交流も、充実感が増すものだったと思います」と三浦は振り返る。

全日本で2年連続区間賞、箱根で知った吉居のすごさ

昨年は8月に東京オリンピックがあったこともあり、トラックレースからロードレースへの切り替えはチームより遅れて8月後半になった。夏合宿ではチームメートと20~30km走のほか、ケガへのリスク回避からクロカンコースでのファルトレクで距離を踏むメニューにも取り組んだ。9月の日本インカレでは3000mSCで2連覇を果たしたが、その後、足に痛みが出たため、10月の出雲駅伝はメンバーから外れた。

だが続く全日本大学駅伝では昨年の1区区間賞に続き、2区区間賞の走りで10人抜いて首位に立ち、チームの3位に貢献。今年1月の箱根駅伝でも2区を任され、区間11位だった。前回大会では1区区間10位だったこともあり、三浦自身、レースの2~3週間前に2区を打診されるまでは1区を見据えて準備をしていたという。

昨年の全日本大学駅伝で、三浦(左から2人目)は2区で10人抜いてトップに立った(撮影・西畑志朗)

その1区で同学年である中央大学の吉居大和(現3年、仙台育英)が、区間記録を15年ぶりに更新する1時間00分40秒の区間新記録を樹立している。「圧倒的過ぎて。1年生だった時と比べても、ですが、あのペースに自分はついていけないですし、これからその上をいく走りができるかは……。すごいなと思います」。そうは言ったものの、もし自分が次の箱根駅伝で同じ1区を走ることになれば、「負けるよりは勝った方がいいので、そこはしっかり勝ちたいなと思います」と三浦は言い切った。

自分の役割は結果を出すこと

チームの目標は「学生駅伝三冠」であり、主将の西澤侑真(4年、浜松日体)は常日頃から選手一人ひとりに意識付けをしている。三浦は「僕が入学した時からすでに、西澤さんの存在感は大きかった」と言い、練習では踏ん張りどころで西澤が前に出てチームメートを引っ張ってくれる姿は心強かった。「そんな西澤さんが声をかけ、具体的な目標を掲げてくれることで、チームが一つになっていると思います」

三浦も3年生になり、上級生となった。チームに対する役割も変わってきたが、「自分は駅伝特化ではないので、どうしてもチームを離れることがあり、チームを見ることができてない時もあるので、自分としてはまだまだ不十分だと思います」と現状を捉えている。だからこそ、「自分が結果を出して背中を見せられたら一番うれしいです」と言う。

三浦は今年のチームを「各学年の結びつき強くて仲がよく、お互いに刺激し合いやすい関係」と紹介してくれた(撮影・松永早弥香)

駅伝であれば走りやすいのは前半区間であり、そこで力を発揮したいと考えている。目標をたずねても、自発的に「区間賞」と口にしなかったのは、チームの目標を優先してのことだろう。チームを勢いづける走りで、順天堂大にとって2000年度以来となる「学生駅伝三冠」をたぐり寄せる。

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