陸上・駅伝

特集:2022日本学生陸上競技個人選手権大会

順天堂大・服部壮馬が個人選手権3000mSCで2位 三浦龍司は憧れから目標へ

服部は個人選手権3000mSCで2位になった(撮影・すべて藤井みさ)

2022日本学生陸上競技個人選手権大会 男子3000m障害決勝

4月17日@レモンガススタジアム平塚(神奈川)
優勝 菖蒲敦司(早稲田大3年)8分40秒57
2位 服部壮馬(順天堂大2年)8分45秒84
3位 山口翔平(帝京大1年) 8分48秒11

4月17日の学生個人選手権最終日、男子3000m障害(SC)で順天堂大学の服部壮馬(2年、洛南)はスタートから一人飛び出し、独走態勢でレースを進めた。ラスト1周で菖蒲敦司(3年、西京)に敗れての2位だったが、服部らしい攻めの走りを見せつけた。

いきなり飛び出し独走「自分のリズムで」

服部は4月10日にあった四大学対校陸上競技大会の3000mSCにも出場。8分54秒51で1位となったものの、自らの走りには「いまいちだったな」という感触が残った。しかし4月14日のポイント練習でいつもより走れたという手応えを得て、今回のレースに臨んだ。

長門監督からは「好きなようにしたらいいし、リズムが悪かったら(前に自分のペースで)行った方が流れに乗れるよ」と言葉をかけ、服部はそれを頭に入れてスタートした。練習のいいイメージを持ってスタートしたら、いきなり一人飛び出してしまい、誰もついてこなかった。「そしたら自分のリズムでいけばいいかな」と考え、独走態勢で周回を重ねた。

服部は最後の1周まではトップで走り続けた

第2集団は大きなひとかたまりとなって進んでいたが、ラスト2周となったところで早稲田大学の菖蒲敦司(3年、西京)と帝京大学の山口翔平(1年、西京)が集団から抜け出し、徐々に服部の背中に迫ってきた。ラスト300mで後ろからきた菖蒲に捉えられると、スパートについていけず差が徐々に開く。そのまま菖蒲がトップでゴールし、服部は菖蒲とは5秒差の2位となった。

序盤から独走し、ラスト1周で菖蒲に抜かされて2位となる展開は、昨年5月の関東インカレとほぼ同じ展開だ。「菖蒲さんが(後ろから)来た時、『うわ、また来たか』と思って、(抜かされてから)つこうと思ったんですけど、速すぎてつけなかったので……ゴールしてから、また関カレみたいになったなと思いました」と苦笑する。

レース後、笑顔で菖蒲と握手

冬季練習でスタミナを強化

服部は1年生の時から関東インカレのメンバーに選ばれるなど、期待の選手であることは間違いない。3000mSCも駅伝もやりたいと考えて入学し、出雲駅伝で大学駅伝デビュー。この時は季節外れの暑さも影響したか、4区区間14位と思うように力を発揮できなかった。全日本大学駅伝ではエントリーメンバーに入れず、箱根駅伝では6区にエントリーされたものの、当日変更で主将の牧瀬圭斗(現・トヨタ自動車九州)が入り、箱根路デビューとはならなかった。

服部が課題と考えているのは「スタミナ」だ。駅伝に絡めなかったのも、スタミナ不足が原因だと自覚している。そのため冬季はロングジョグをメインに取り組んだ。1日30km以上、走れる時には40km以上走ることもあったという。「取り組み始めた頃は20kmぐらいできついな、やめたいなと思うことが多かったんですけど、練習を重ねるにつれて『まだいけるかな』という気持ちになってきました」と手応えを語る。

冬季練習では1日40km以上走ることもあったという

三浦に少しでも近づき、差を埋めていけるように

その上で、トラックシーズンに入るにあたってスピードの強化にも取り組んできた。先輩の三浦龍司(3年、洛南)が常々、「スピードがないと世界と戦えない」と口にしているが、服部ももっとスピードを身につけていきたいと考えている。3000mSCの日本記録保持者、学生オリンピアンという最高のお手本が近くにいる状況だが、服部は去年1年間、三浦のことを「憧れ」だと思って過ごしてきた。だが少し心境が変わってきた。

「憧れだと超えられないので、今年からは三浦さんを一つの『目標』として置いていこうと思っています」。三浦は4月9日の金栗記念で1500mに出場し、日本記録まであと1秒ほどと迫る3分36秒59のタイムで走った。そのことに触れ、「三浦さんに比べるとまだスピードは足りないけど、来年、再来年と年を重ねるうちに差を埋めていければいいなと思います」と話す。服部は2024年に開催されるパリオリンピックを目標にしており、それは三浦との勝負にもなる。

世界を目指し、「目標」である三浦に少しでも近づきたい(左が服部)

この日、服部が着ていたユニホームは、「赤マルサ」と呼ばれる大きな大会で結果を残した者にのみ与えられるユニホームだった。実は寮を出る前に自分のユニホームが見つからず、同部屋の三浦に相談したら貸してくれたのだという。三浦からは「頑張ってこいよ」と声をかけられ、先輩のユニホームを身につけることで「背中を押してもらった」という気持ちもあった。偉大な先輩の背中は大きくまだ遠いが、服部はその背中に近づくべく、一つひとつ力をつけている。

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