順天堂大・村尾雄己 決勝前に三浦龍司のレースを確認、「大船乗り」3000m障害V
第92回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子3000m障害決勝
9月17日@熊谷スポーツ文化公園陸上競技場(埼玉)
1位 村尾雄己(順天堂大2年) 8分43秒07
2位 大吉優亮(帝京大4年) 8分43秒12
3位 花谷そら(福岡大4年) 8分48秒02
4位 諸冨湧(早稲田大4年) 8分49秒29
5位 大園倫太郎(鹿屋体育大3年)8分49秒54
6位 湯田陽平兵(法政大1年) 8分53秒74
7位 安達京摩(国士舘大4年) 8分55秒89
8位 北村光(早稲田大4年) 8分58秒11
日本インカレ最終日の9月17日に行われた男子3000m障害で、順天堂大学の村尾雄己(2年、佐久長聖)が8分43秒07で優勝を飾った。大会連覇を狙った帝京大学の大吉(おおよし)優亮(4年、市立船橋)を最後の直線でかわした。この日の早朝には、アメリカ・オレゴン州ユージンで開催されたダイヤモンドリーグファイナルで順天堂大の三浦龍司(4年、洛南)が8分15秒45をマークして5位に。村尾も先輩の走りに刺激を受けたという。
ゴール直前、大吉優亮をかわして0秒05先着
日本インカレには日本記録を持つ第一人者の三浦のほか、4月の学生個人選手権と5月の関東インカレ1部を制した早稲田大学の菖蒲敦司(4年、西京)、関東インカレ2部でワンツーフィニッシュを飾った青山学院大学勢の小原響(4年、仙台二華)、黒田朝日(2年、玉野光南)といった有力選手がエントリーされなかった。持ちタイムの上では、ともに8分41秒台の記録を持つ村尾と大吉による一騎打ちの様相だった。
レースは2000mを通過したところで、大吉が一気に仕掛けた。その姿を見た2番手の村尾は「ここで行くんだ」と少し不意を突かれたという。最大で30mほどの差をつけられたが「そこまでペースも上がっていないから、まだとらえられる」と頭の中は冷静だった。もともと考えていたラスト600mで、村尾もスパート。「自分の想定以上に大吉さんがラストでしっかり上げてきていた」。わずか0秒05差で先着し、「最後は本当にギリギリでした。自分のレース展開を貫いて、順大のすごい応援も後押しにしっかりと勝ち切れたことは、本当に自分にとって良かったと思います」と喜びを口にした。
三浦龍司のレースを「スローモーション」で研究
チームメートたちの活躍が、村尾の背中を押した面もあるようだ。日本インカレ2日目にあった男子1500m予選で同学年の塩原匠(2年、東農大二)が自己ベストをマークすると、同日夕方の決勝でルーキーの後田築(1年、創成館)が優勝。3日目の男子5000m決勝は同じくルーキーの吉岡大翔(1年、佐久長聖)が日本選手トップとなり、日本時間の17日早朝は三浦が快走していた。村尾は「自分には追い風しかない」と感じ、「大船に乗ったつもり」で気負わずレースに臨めた。
17日午前5時過ぎにスタートした三浦のレースを、村尾もチェックしたという。「5時半から朝練習をするつもりだったので『あ、ちょうどいいな』と。仮に1時間早くても見るつもりでしたけど(笑)。自分のレースも大事なんですけど、やっぱりキャプテンのレースをしっかりとそのときに見て、感じるものがあるからこそレースにつながる部分もあると思ったので、そこは何があっても見ようと思いました」
村尾は「まだまだ力が及ばなくて、おこがましいんですけど」と前置きした上で、三浦の走りやハードリングをよく研究していると明かした。「三浦さんが競技場で行う障害練習やレースをスローモーションで見るのが好きで、参考にしながら走っている部分もあります」。三浦から走りを指摘されることもあるという。
中長距離種目のメンバーとは静岡県御殿場市で直前まで調整合宿を行い、三浦はダイヤモンドリーグファイナル、村尾は日本インカレに向けてお互いの技術を確認し合いつつ、本番のスタートラインに立った。春先はハードリングでスピードが落ちてしまうことを課題にしていたが「並んで走っていて、前に出るつもりがなくても出ちゃっているときがあるので、少しずつ改善されてきています」と手応えを感じている。
もともと苦手としていたラストスパートは、練習の段階から監督の指示がなくても最後の200mで全力を出し切り、最後は倒れ込んでしまうほど自分を追い込むことで克服してきた。ただ、1年のときにマークした自己ベストの更新はお預けに。「今年の3000m障害は終わりになるので、力をつけて、来年は勝負をしつつもベストを狙って、さらに上の舞台で戦っていけるようになりたい」と意気込む。
箱根駅伝山下りで味わった悔しさ、雪辱を期す
今後は駅伝シーズンに入る。ルーキーイヤーの昨年度、学生3大駅伝のうち村尾が出走したのは箱根駅伝だけだった。6区の山下りを託されたが途中で差し込み(脇腹痛)を起こしてしまい、区間17位と不本意な結果になってしまった。
「自分の調整ミスというか、自分の力不足が招いたことでもある。今年は勝負強さを身につけてきたつもりなので、出雲、全日本、箱根へとステップが上がるごとに力を出し切って、チームの勝ちにつなげられる走りをしていきたいです」。駅伝デビュー戦に味わった悔しさを忘れず、同じ失敗はもう繰り返さない。