陸上・駅伝

特集:第92回日本学生陸上競技対校選手権大会

順天堂大ルーキー吉岡大翔 日本インカレ5000mで日本人トップも「まだまだ」

あきらめることなく粘り、日本人トップとなった吉岡(すべて撮影・藤井みさ)

第92回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子5000m決勝

9月16日@熊谷スポーツ文化公園陸上競技場(埼玉)

1位 ムサンガ・ゴッドフリー(駿河台大2年)13分53秒84
2位 チェボティビン・サイラス・キプラガト(第一工科大1年)13分56秒84
3位 吉岡大翔(順天堂大1年)14分00秒43
4位 溜池一太(中央大2年)14分07秒04
5位 亀田仁一路(関西大4年)14分13秒08
6位 織橋巧(創価大1年)14分18秒92
7位 小嶋郁依斗(京都産業大3年)14分29秒57
8位 中戸元貴(新潟大3年)14分32秒78
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当初1位だった創価大のリーキー・カミナはドーピング違反により成績が失効。
以下の記事は発覚前に公開したものです。

9月16日の日本インカレ3日目、男子5000m決勝で順天堂大のスーパールーキー・吉岡大翔(1年、佐久長聖)が4位で日本人トップとなった。留学生から離れたあと、中央大の溜池一太(2年、洛南)との一騎打ちを制した。

ラスト500mで溜池を突き放す

出場したのは16人。スタート直後から創価大のリーキー・カミナ(3年)が先頭に立ち、駿河台大のムサンガ・ゴッドフリー(2年)と入れ替わりで集団を引っ張った。1000mと2000mをともに2分46秒で通過するペースに、2000m手前で早くも先頭集団はカミナ、ゴッドフリー、第一工科大のチェボティビン・サイラス・キプラガト(1年)、吉岡、溜池、創価大の織橋巧(1年、中京)、関西大の亀田仁一路(4年、姫路商)の7人に絞られた。

2000mをすぎると留学生3人が前に出て、織橋と亀田が後退し、吉岡と溜池は2人旅に。吉岡が前を走っていたが、途中で溜池が前に出て、そのままラスト2周まで進んだ。残り500mほどとなったところで吉岡がスパートし、溜池を突き放す。そのまま差を保ち、日本人トップでゴールした。

残り500mほどのところで仕掛け、溜池を突き放した

前日にはチームメートの後田築(1年、創成館)が1500mで優勝していた。「自分も続きたいという思いがありました。日本人トップしか取れませんでしたが、前半シーズンに比べれば少し自信を戻すようなレースができたんじゃないかなと思います」。

吉岡はトラックシーズンでは途中からきつくなり、ずるずると下がってしまうレースばかりだったことを課題に感じていた。今回は留学生から離れたタイミングで溜池との一騎打ちとなり、溜池が吉岡の前に出たことでリズムを作り直すことができた。スタンドからの大声援にも後押しされ、「絶対に勝つんだ」という思いでラスト1周を迎えられた。

「高校時代なら勝たなきゃいけないレース」

ラスト500mで出た意図をたずねると「ラスト1周の鐘が鳴ってから区切りがいいところでスパートするよりも、直線の方が2レーンに膨らんでも影響が少ないとか、1周手前で仕掛けた方が離れやすいと考えてあそこでスパートしました」と話してくれた。とはいえまだ満足はしていないようで「前半シーズンに比べたらある程度はいいと思うんですけど、高校時代だったら勝たなきゃいけないレースだと思っているので、まだまだなんじゃないかなと思います」と自分のいいイメージとのギャップがあることを感じさせた。

順天堂大は夏、3回に分けて合宿を行い、吉岡はすべてに参加。練習を100%消化し、長門俊介監督は「ものが違う」と吉岡を評価していた。本人は「しっかりけがなく乗り越えられたので、成長できて正しく夏合宿を終えられたのかなと思います」と淡々とした自己評価だ。

高校時代ならもっと…自分のいいイメージとのギャップがまだあると感じさせた

今回のレースをトラックシーズンの集大成というよりは、駅伝につながるものだと考えて臨んだという吉岡。その点では「いい収穫だったんじゃないかなと思います」と言いながらも、厳しい言葉も口をついて出た。

「駅伝になればチームで戦わなきゃいけない中で、今回自分より前でゴールされた留学生の選手とも戦わないといけません。そういった選手に自分が負けた1秒が、結果的にチームとしての大きな差になってしまうと思うので、『チームで走る』ということに対して責任感を持って、今回感じた差をしっかりと縮められるようにしていきたいと思います」と話す。「任された区間で区間賞を取ってチームに貢献できれば」とも言い、すでに順天堂大の主力としての自覚をしっかりと持っている。

目指すは世界、もっと成長を

高校時代からU-20日本代表として3000m、5000m、クロカンで世界のレースを体験した吉岡。チームの主将である三浦龍司(4年、洛南)はオリンピック、世界陸上で入賞し、世界レベルの実力を持つランナーとなった。三浦と同じチームで戦えるのは今年だけ。実際に襷をつなぐかどうかはわかりませんが、と前置きし「一緒に走れるからこそ1つでも上の順位であったり、目標としているものに貢献していって、最後笑って卒業していってほしいなと思います」と頼もしい。

順大の頼もしい戦力として、駅伝シーズンの活躍も楽しみだ

三浦は3000mSCで世界と戦うが、吉岡は5000m、10000mで勝負したいと考えている。しかしまだ、同じ日本の大学生の中でも勝てていない。同級生の前田和摩(東農大1年、報徳学園)や1つ上の佐藤圭汰(駒澤大2年、洛南)やOBの塩尻和也(現・富士通)の名前をあげ、「いろんな選手を見て、まだまだもっと頑張らなきゃって思っています」と話す。

単なる「スーパールーキー」にとどまらず、世界を意識し自分に満足することのない吉岡。向上心と大きな目標を持った吉岡のこれからの成長と、駅伝シーズンの活躍がますます楽しみになった。

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