陸上・駅伝

特集:New Leaders2023

順天堂大・藤原優希 三浦龍司と共同主将、それぞれの役割「象徴は三浦、実務は自分」

桜が満開だった順天堂大さくらキャンパス内で(撮影・井上翔太)

今季のチームスローガンに「呼応と結束」を掲げる順天堂大学は、今年の箱根駅伝で9区を走った藤原優希(4年、水島工業)と2021年の東京オリンピック男子3000m障害で7位入賞を果たした三浦龍司(4年、洛南)による「共同主将」体制を取る。まず三浦が主将就任を志願し、もう一人に藤原を選び、最終的に新4年生と監督でミーティングを重ねて決めたという。今回は藤原に三浦との役割分担や今季の意気込みを尋ねた。

トラックのキャプテンとロードのキャプテン

例年だと、箱根駅伝の前に新チームから最上級生になる学年の選手たちで話し合って、主将をおおよそ決めているという順天堂大。今回は少し変わったケースだった。三浦が「キャプテンをやりたい」と立候補し、他の選手からの信頼もすでにあったため、まずは三浦の主将就任が決まった。

ただ世界の舞台でも戦う三浦は海外遠征もあり、チーム全体をつぶさに把握することが難しい時期がどうしても発生する。そこでチームのメンタルトレーナーから「共同主将という形もある」と提案された。新4年生たちで検討し、採り入れることに決めた。

もう1人を決める前、藤原のもとに三浦からLINEが届き「キャプテンをお願いするかもしれない」という内容を伝えられた。「自分はもともと学年リーダーをしていて、経験もある斎藤(舜太、4年、桐生)に任せていいんじゃないのかとも思ったんですけど(苦笑)。自分を推してくれる意見も多かったので、『やってみよう』と決めました」。長門俊介監督からは「トラックのキャプテンとロードのキャプテンに分けて、それぞれでやっていこう」という話があり、藤原はロードタイプだったことも後押しした。

藤原はロードレースが得意だ(撮影・井上翔太)

三浦は「チームの象徴みたいな存在で、背中で引っ張っていくタイプの主将」。一方で藤原自身は「他の選手と同じ目線、立場に立って、一緒に盛り上げていくようなキャプテンになれればいいなと思っています」。たとえばメディアで主将として発信するような役割を三浦が担当し、朝の体操で音頭を取る選手を指名したり、毎日の点呼で新しいチームの取り組みや注意ごとを伝えたり、日々の細かな業務を藤原が担うイメージだという。

高校時代は「地区代表枠」で都大路を経験

藤原は小学校のマラソン大会で1位になったことがきっかけで、中学から長距離を始めた。「球技とか水泳が得意じゃなかったので、走る方が自分には向いているなと思って」。中学時代、3000mのベストは9分ちょうどぐらい。岡山県予選を突破し中国大会にも出場した。

岡山県内の強豪校と言えば、45年連続で全国高校駅伝に出場し、昨年の都大路を制した倉敷高校が有名だ。ただ藤原自身は「もともと大学で競技を続ける考えはなくて、中学の頃は建築系の仕事に就きたいと思っていました。高校で陸上も続けられて建築科もある学校ということで、水工を選びました」。昔からプラモデルなどの物作りが好きだった。

高校3年のときは都大路を走った。岡山県予選では倉敷高校に敗れたが中国大会で勝ち抜き、第70回の記念大会で採用された「地区代表枠」としての出場だった。「中国大会の方が緊張してました。全国はその先につながる予選とかではないので、とにかくやれることだけやろうと、気持ちよく走れました」。当時はチームのエースとして活躍し、5000mの自己ベストは14分17秒。自分で想像していたよりも記録が伸びたと言い、「大学でも続けてみたい」と名門の順天堂大で挑戦することにした。

高校での成長が順天堂大で競技を続ける後押しとなった(撮影・井上翔太)

緊張で思うように走れなかった箱根駅伝

3大駅伝の初出走は、今年の箱根駅伝だった。「前日までは全然だったんですけど、当日は緊張しすぎて冷静になれなかったです」。戸塚中継所では創価大学とほぼ同時に6位で襷(たすき)を受け取り、國學院大學、早稲田大学、法政大学と計5人で3位集団を形成した。「『落ち着いて入ろう』と頭の中では考えても、最初の1kmでガーッと突っ込んでしまいました」。体が軽く、ふわふわしている感覚があったと振り返る。「そこからすぐに体が重くなってしまいました」

集団走となっても他の選手のことを気にせず、自分の走りに集中していたつもりだった。ただすぐ前に選手がいると、焦りもあって追いつきたくなったと振り返る。後ろからは青山学院大学の岸本大紀(現・GMOインターネットグループ)が猛追してきて、「誰もついていけないぐらいの速さで、僕は追いつかれる前にきつくなってしまっていました」。区間16位。アンカーで前主将の西澤侑真(現・トヨタ紡織)には8位で襷を渡した。初の箱根路で課題は明白になったが、当日までにピークを合わせる練習方法には手応えを得た。

「箱根までの流れはすごくよくて、調子もバッチリあっていたので、ちゃんと自分の走りができればもっといけるだろうという自信はつきました」

緊張したという箱根駅伝は平駿介(左)から襷を受けた(撮影・井上翔太)

お互いに声を掛け合い、高め合うチームに

「呼応と結束」というスローガンには、順天堂大の強みである仲の良さと結束力の強さを大切にしたいという意味を込めた。チームとしての目標には「箱根駅伝総合3位以内」を掲げる。実現させるために、周りの選手たちには「練習がきつかったり、ちょっとさぼりたいなって思ったりするときもあると思うんですけど、目標を一つ強く持って、先を見据えながら練習に取り組んでほしい」と願う。

もう一つ「お互いに声を掛け合って、高め合っていくようなチームであってほしい」という思いもある。それぞれが目標を言い合ったり、こうした方がいいと指摘したりするなど、呼びかけ合えるチームをめざす。これまでは個性派ぞろいの選手たちを西澤が強いリーダーシップを発揮してまとめた1学年上の先輩たちに、付いていく姿勢になりがちだった。これからは選手一人ひとりのさらなる自立が求められる。

箱根駅伝で西澤(右)につないだ藤原。今季は自分なりのキャプテン像を追う(撮影・北川直樹)

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