陸上・駅伝

特集:東京オリンピック・パラリンピック

順天堂大・三浦龍司 東京五輪3000mSC日本代表として日本記録更新と決勝進出を

初めてのオリンピックを前に「楽しみ」と語る三浦(提供・順天堂大学)

7月8日に順天堂大学主催のオンライン会見が開催され、東京オリンピック男子3000mSC日本代表に内定した三浦龍司(2年、洛南)が取材に応じた。

五輪では日本記録更新と決勝進出が目標

はじめに、オリンピックに向けての意気込みを問われると「まずは日本記録更新、決勝進出。2つの目標を最優先で頑張っていきたいと思います」と答えた。5月9日のREADY STEADY TOKYOで8分17秒46のタイムで優勝し、18年ぶりに日本記録を更新するとともに五輪参加標準記録を突破。6月26日の日本選手権では8分15秒99で優勝、自らの記録をさらに更新した。この先は「(8分)15秒はいけると思っているので、12~13秒は視野に入れています」という。

三浦にとって、世界のシニアの選手と走るのはこのオリンピックが初めてとなる。オリンピックではどのようなレースをしたら勝負できると思いますか? との質問には「予選は特に最後の1000m、2周ぐらいが鍵になると思います。そこからのペースが爆発的に上がると思うので、そこに食いついていけるようにしたいです。もし切り替わったとしても、トップスピードを維持したまま障害を超えていけばついていけると思うので、そこがポイントだと思います」。冷静に決勝進出のためのプランを描いている。

6月の日本選手権でははじめからトップを走り続けた(撮影・池田良)

とはいえ、本番のレース展開はその時次第になるし、ともに戦う選手たちのレベルも格段に上がる。まだ19歳の三浦はこのタイミングでチャレンジできることを「楽しみ」と表現し、「これからの競技に向けても生きてくると思うので、しっかり戦いながら吸収できたらと思います」と語る。

三浦の適性を見抜いた郷里の恩師

三浦は島根・浜田市の陸上クラブ・浜田JASで陸上をはじめた。コーチの上ヶ迫定夫(かみがさこ・さだお)さんの「陸上を楽しむ」というクラブの方針のもと、短距離のハードルをはじめとしたさまざまな種目に取り組んでいた。三浦のハードリングのうまさを見抜いていた上ヶ迫コーチが、三浦が洛南高校に進学する際に奥村隆太郎監督に話し、3000mSCに取り組むことになった。

中学までは見る機会もほぼなかった種目。しかし始めてみると、3000mの距離の中に水濠や大障害などのバリエーションがあり、戦略も必要。やってみて楽しいと感じられた。19年の高校3年時には日本選手権で8分39秒37をマークし、高校新記録とU18日本新記録を塗り替えた。

三浦の走りの特徴はなめらかなハードリングと、水濠の手前での加速にある。振り返ってみると、小学生のときにハードルに取り組んでいたことが、スピードを落とさずに障害を超えられることにつながっているのではともいう。そして大学に入り1000m障害3本などのインターバル練習、スピードに移行しやすい動きづくりなどに取り組んだこともあり、土台ができて飛躍的に記録を伸ばした。

順天堂大学の自主性を重んじる雰囲気も、三浦にぴったりあっているという(提供・順天堂大学)

昨年7月のホクレンディスタンスチャレンジで8分19秒37のU20日本記録を樹立。秋からの駅伝シーズンには箱根駅伝予選会、全日本大学駅伝、箱根駅伝に出場するなど長い距離にも取り組み、それが結果的にスタミナをつけること、丈夫な体をつくることにもつながっている。

2年生になってから、水濠の前でも怖気づくことがなくなり、無意識に跳ぶ前に加速できるようになったことも記録の伸びを後押ししている。水濠では跳ぼうと思えば水のないところまで跳べるが、水濠の斜面となっているところに接地したほうが次の動きにスムーズに移行できるため、ギリギリのところで着地するようにしているとも明かした。

自分の走りで3000mSCをもっと高みへ

3000mSCを高校から始めてみて、「夢中になれる競技に出会えて嬉しかった」と笑う三浦。それと同時に、自分の適性を幼い頃から見抜いていた上ヶ迫さんの慧眼にも改めて驚きを口にする。だが、走れて結果を出せてきたからこそ、この競技の認知度の低さを感じもする。「3障の競技レベルも、意識も、変化を生み出せるような走りをしていきたい」という言葉には、19歳にして日本の3000mSCの第一人者となった自覚が感じられた。

ともに日本記録保持者となった三浦と泉谷。世界とどのように戦うか注目だ(提供・順天堂大学)

順天堂大学からはもう1人、泉谷駿介(4年、武相)が男子110mHで代表に内定している。普段から同じフィールドで練習し、言葉を交わす機会は少ないがその姿に刺激を受けてきた。大きな大会などで一緒になることも多い。「泉谷さんは緊張しないタイプというか、試合前でもリラックスしている印象が強いです。心に余裕あるというか、憧れです。ああいう選手、心持ちになりたいなと思います」。日本選手権でともに五輪代表内定を決めたあとは、順大から短距離、長距離とそれぞれ出られてすごくよかった、と言葉を交わした。

可能性と伸びしろしかない三浦が将来的に見すえるのは、2024年のパリオリンピックで順位を狙うこと、そして8分1桁台。将来像への第一歩として、大舞台でどのようなレースを見せてくれるのか楽しみしかない。男子3000mSC予選は、7月30日に行われる予定だ。

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