陸上・駅伝

特集:第30回ユニバーシアード

東海大・阪口竜平 3000m障害優勝の先に、見すえる世界

軽やかなハードリングでトップに立つ阪口

兵庫リレーカーニバル 男子グランプリ3000m障害

4月21日@ユニバー記念競技場
優勝 阪口竜平(東海大学4年)8分37秒48

「3000m障害で東京オリンピックを目指すと決めました」。阪口竜平(4年、洛南)は優勝後の取材に、穏やかながらきっぱりとした口調で言った。ラスト1周のホームストレートで滋野聖也(星槎国際道都大~プレス工業)とのデッドヒートに競り勝ち、大きくガッツポーズ。「残り2周で先頭との差を見たときに、この差だったら絶対にいけるなという自信がありました。最後は僅差になってしまいましたけど、ラストスパートはこの春磨いてきたので、それが結果につながったと思います」。最後の水濠を越えると、近くに陣取っていた東海大の両角速監督から「アメリカでやってきたことをしっかり出せ!!」との檄が飛んだ。それで「負けちゃいけない」と気合が入ったのも大きかった。

トップでゴールした阪口は、大きくガッツポーズ

けがの恐怖を乗り越えて

阪口は昨年7月4日、ホクレン・ディスタンスチャレンジの2000m障害で水濠から飛んだ際に骨折し、3カ月ほど走るのもままならなかった。両角監督には「お前にはもう3障を走らせない」と言われたこともあったという。転機となったのは今年2月から2カ月間のアメリカ合宿だ。ハードリングやスピードに磨きをかける練習に取り組み、体を4kg絞った。「走行距離は1カ月925kmで、箱根前よりも走り込みました。技術も教えてもらって、それがハードリングの軽さにもつながったと思います。充実した2カ月間でした」

けがをした昨年7月以来初めて水濠を飛んだときは、恐怖が先に立ち、思わず転倒したという。いまも恐怖は若干ある。「けがの前と比べると、まだ思い切って飛べてなくて、着地の瞬間に無意識にかばってしまうこともあります。ここを克服できれば、もっとタイムが伸びると思います」。恐怖があるといいながらも、自己ベストをわずかながら更新。恐怖に打ち勝てれば、まだまだタイムは伸びるだろう。

水濠を飛ぶときは、まだ少し恐怖が残っているという

目指すは「塩尻越え」で東京オリンピック

このレースはユニバーシアードの代表選考会も兼ねていた。今年は大阪でのセイコーゴールデングランプリ、ドーハでの世界陸上と、海外の選手と戦える大会が控えている。「まずはそこを目指しているので、このメンバーだったら勝ちきらないといけないと思ってました」。今後の目標は、まずは東京オリンピックの参加標準記録である8分22秒00を切ること。「そこを切れれば、日本記録(8分18秒93)も見えてくると思うので。最終的にはそこが目標です」。アメリカでもコーチに走りを見てもらい、現在の日本記録を伝えたら「お前なら十分更新できる可能性がある」と言われたという。「海外のコーチにも恩返しできるようにしていきたいです」

日本で勝つ、だけではない。阪口の視線は世界にある

しかし日本の3000m障害には第一人者の塩尻和也(順天堂大学~富士通)がいる。塩尻はこの種目で全日本インカレ4連覇、昨年の日本選手権でも優勝。くしくもこの日、塩尻がアジア選手権で銅メダルを獲得。ライバルは1歩も2歩も先を行っている状況だが、阪口は自分の力を信じている。「塩尻さんを倒さないと代表には選ばれないので。8分20秒を切る走りができれば、十分それも可能だと思います。勝って当たり前という力をつけていきたいです」と語った。

「いま日本の3000m障害には世界的なスターがいない。でもそんな選手が出てくれば、メジャーになってくるので、この競技をもっと発展させていきたいです。『阪口選手がやってるから、僕もやってみたい』と言われるぐらいになるように、レベルを上げていければと思います」。阪口が見すえるのは、あくまで世界だ。飛躍の1年に期待したい。

in Additionあわせて読みたい