青学・吉田圭太 留学からの弾丸帰国で確認した「現在地」
兵庫リレーカーニバルのエントリーリストを見て真っ先に考えたのは「本当に彼は出場するのだろうか?」ということだった。なぜなら、吉田圭太は在籍する青学大地球社会共生学部のカリキュラムで、2月21日から5カ月間ニュージーランドに留学中のはずだったからだ。先日、原監督に取材する機会があり、吉田のことを尋ねると、「帰国して出場するのは本当だよ」。確かにユニバー記念競技場には、2月17日の熊日30キロロードレース以来で緑のユニフォームに身を包んだ吉田の姿があった。
5000mまでは上々だったが……
序盤は飛び出した外国人選手3人に次ぐ第2集団につけた吉田。スピードを落とすことなく、一時は村山紘太(城西大学~旭化成)、河合代二(麗澤大学~トーエネック)と日本勢トップを争う積極的な走りだった。5000mの通過は14分5秒。自己ベストの28分27秒40を大幅に更新することは間違いないと思われた。
しかし後半、徐々に後退。村山に離された。単独走になってからは、追い上げてきた東洋大の西山和弥(3年、東農大二)や城西大の荻久保寛也(4年、三郷工)にもかわされ、11位でのフィニッシュとなった。「やっぱり走り込めてない分、後半もたないです。5000mだったらいけたかもしれないですけど、一人になってからがキツかった」。
NZで試行錯誤の日々
ニュージーランドでは勉強のかたわら、チームメイトの神林勇太(3年、九州学院)と二人で練習している。やはり日本とは勝手の違う環境に、とまどいもあるようだ。通っている大学にはトラックがなく、練習は授業のあと。ホームステイ先の家から大学までは8kmの距離があり、毎日自転車で往復している。「やっぱり、距離走ができないのがつらいです。いいコースはあるんですけど、家から遠くて、日曜日に大家さんに車で連れて行ってもらわないといけなくて……」。学部からの留学なので勉強中心の生活となり、練習時間はもちろん、なかなか自分の時間が取れないのもストレスに感じているようだ。
弾丸帰国してレースに出場すると決めたのは、今大会がユニバーシアードの代表選考会を兼ねていたこともあった。さらに南半球のニュージーランドはいま、トラックレースのオフシーズン。試合勘を失いたくないという事情もあったようだ。「スピードへの対応はできても、続きの脚ができてないという課題がここで分かったので、残りの留学期間はそこをメインに負荷をかけていきたいです。必ずどこかでこの留学は生きてくると思うので、プラスに考えて頑張りたいです」
23日には再びニュージーランドに向かう吉田。留学期間は7月8日までだ。「2人しかいないので、どうしても楽したい気持ちも出てきちゃって……。毎日の闘いもあります」。マネージャーには「強くなったな!!」と声をかけられていた吉田。慣れない環境にとまどいながらも、自分の現在地をしっかり把握している姿には、頼もしさを感じさせた。7月に本帰国した際は、より強くなった「青学のエース」としての彼が見られるのを期待したい。
※吉田選手の「吉」の字は本来口の上が土の「𠮷」ですが、機種依存文字のため「吉」で表記しています。