陸上・駅伝

特集:第93回日本学生陸上競技対校選手権大会

順大・村尾雄己が3000mSC連覇 全日本選考会での悔しさ、箱根予選会にぶつける

男子3000mSCで昨年に続いて優勝を果たした順天堂大の村尾雄己(撮影・藤井みさ)

第93回日本学生陸上競技対校選手権大会 男子3000mSC決勝

9月22日@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(神奈川)

優勝 村尾雄己(順天堂大3年)8分34秒83
2位 浦田優斗(中央大4年)8分35秒09
3位 山﨑颯(順天堂大3年)8分50秒42
4位 大園倫太郎(鹿屋体育大4年)8分50秒47
5位 尾島樹(上武大1年)8分55秒01
6位 中林俊(群馬大5年)8分55秒25
7位 小野真忠(東海大1年)8分56秒81
8位 緒方快(関東学院大3年)8分56秒83

9月22日にあった陸上日本インカレの男子3000m障害(SC)で、順天堂大学の村尾雄己(3年、佐久長聖)が連覇を果たした。全日本大学駅伝の関東地区選考会で悔しい走りとなってからの3カ月間は、仲間から信頼されていることを改めて感じた期間だったという。万全の準備を施し、チームとして10月の箱根駅伝予選会に向かう。

浦田優斗とのマッチレース、0秒26差で制す

村尾は日本インカレの決勝で、優勝以上に記録を狙っていた。大学の先輩でパリオリンピック8位入賞の三浦龍司(現・SUBARU)が持っている8分28秒51の大会記録を意識し、「三浦さんの記録に挑戦していくことが、自分の目標。記録が出れば、優勝は間違いないと思う」とスタートラインへ。号砲が鳴った直後から先頭を引っ張った。

序盤から先頭に立ち、レースを引っ張った(撮影・藤井みさ)

2周目に入ったところで、村尾の後ろに中央大学の浦田優斗(4年、國學院久我山)がピタリとつく形でレースが進んだ。最初の1000mを2分52秒で通過し、3番手には東海大学の小野真忠(1年、仙台育英)がつける。4周目に入るところで小野がついていけず、優勝争いは2人に絞られた。

村尾は2000mの通過が5分48秒だったことを悔いた。5分40秒を目標に設定し、2000m地点では一人旅になっていることを想定していたからだ。浦田はまだついてきていた。「ちょっとビビッてるというか、思い切れていない部分があった。『タイムを目標にしている』とは言いつつ、自分の心のどこかで最後に勝ちきる力を残している、という弱さもあったのかなと感じました」

マッチレースで、まず仕掛けたのは浦田だった。ラスト1周を切り、バックストレートでスパートをかけて先頭に立った。村尾は離されず、最後の水濠を越えてから抜き返し、そのまま0秒26差で逃げ切った。自己ベストに迫る8分34秒83を出したが、「過去の自分より遅い。優勝できて安心はありますけど、悔しさもこみ上げてきています」と語った。

中央大の浦田優斗(左)に0秒26先着した(撮影・藤井みさ)

「器の小さい人間だな」と突きつけられた

今年のトラックシーズンは4月29日の織田幹雄記念で三浦と同じレースに臨み、自己ベストとなる8分33秒76をマーク。5月の関東インカレでは男子1部3000mSCで優勝を果たし、好調ぶりが際立った。

しかし、6月の全日本大学駅伝関東地区選考会で暗転した。10000mのレースを4組行ううちの1組目で最下位に沈み、他の選手も上位争いにほぼ絡めず、チームとしては8大会ぶりに本戦出場を逃した。村尾個人としては、その後の日本選手権にも出場できず、関東インカレで下した中央大の柴田大地(2年、洛南)が8分24秒68の好タイムを残して2位に入った。「柴田は小中学校が一緒で幼なじみみたいな関係なんです」と小さな頃から知る友人に先を越され、悔しさばかりが募った。

6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では苦しい走りとなってしまった(撮影・井上翔太)

関東地区選考会での状況についても、本人が振り返る。「『無難に走れるだろう』というおごりがあったんだと思います。チームのことを優先すべきなんですけど、どこかで個人を優先していた。練習はずっと一緒にやっていたけど、『日本選手権で(タイムを)出したい』という気持ちもありました。結局どっちもうまくいかず、選考会ではコテンパンにされてしまった」

再び表舞台に戻ってこられたのは、チームメートの存在が大きかったと話す。関東地区選考会の後、4年生たちから「村尾が1組目を走ることに関して、まったく不安はなかったし、異論も無かった」という話をされた。日本選手権の3000mSC決勝に出場したルーキーの永原颯磨(1年、佐久長聖)は右腕に「村尾雄己」と書いて走った。

「自分はチームのために何もできなかったのに、チームのメンバーは自分の力になることばかりしてくれている。それが見えていなかった。『自分って器の小さな弱い人間だな』と突きつけられました」。7月はうまく走れない時期もあったが、8月から復調。「みんなに支えてもらっているからこそ、結果を出せている」と日本インカレ連覇にも、仲間への感謝の言葉を忘れない。

日本インカレ連覇を決めた後、最後まで競った浦田をたたえる(撮影・藤井みさ)

箱根駅伝予選会へ、万全の準備を

「自分のわがままじゃなくて、人のために、チームのために」。そう意気込む村尾には、まだ雪辱を期すチャンスが残されている。10月19日に開催される第101回箱根駅伝予選会だ。出走メンバーに選ばれるかは、まだ決まっていないが、「それを気にしているようでは、わがまま。自分も練習からチームのために頑張って、世間が何と言おうとも、チームとしては予選会1位通過を目標にしています」と言い、準備だけは怠らない。

昨シーズンは駅伝でシード権を奪えず、今シーズンも残されたチャンスは箱根だけ。勝負の予選会まで残り1カ月を切った状況で、チームはどこまで仕上げてくるか。そこへ、村尾はどう絡んでくるのか。箱根駅伝予選会の注目ポイントが、また一つ増えた。

「チームのために……」10月の箱根駅伝予選会で雪辱を期す

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