箱根駅伝予選会に挑む東京大学、東京大学大学院の練習へ! 古川大晃選手と陸上談議も
今回の「M高史の陸上まるかじり」は箱根駅伝予選会に挑む東京大学と東京大学大学院のお話です。大学も大学院も同じグラウンドで一緒に活動していますが、関東学連の大会では別々の登録になるため、それぞれ別のチームとして箱根駅伝予選会に挑みます。予選会に向けたポイント練習に参加させていただきました!
それぞれのチームで箱根予選会に挑戦
直近20年間、東京大学のユニホームで箱根駅伝を走ったのは、関東学連選抜チームの松本翔さん(第81回8区)、関東学生連合チームの近藤秀一さん(第95回1区)、阿部飛雄馬さん(第96回10区)の3人。学業と競技を両立しながら出場してきました。
さらには第98回、99回大会で東京大学大学院の古川大晃選手(博士4年、八代)がエントリーメンバー入り。どちらも出走はならなかったため、ラストイヤーとなる今年にかけています。
今年の東京大学は秋吉拓真選手(3年、六甲学院)が1500m、5000m、10000m、ハーフマラソンの4種目で東大記録を更新。9月の日本インカレ5000mでは5位入賞を果たし、関東学生連合チーム入りを目指しています。
東京大学と東京大学大学院は別チームのため、それぞれから関東学生連合に選ばれる可能性もありますし、「お互いのチームに負けたくない」という思いも持っているそうです。手の内を知り尽くしているだけに、どちらに軍配が上がるかにも注目です。
長めのダウンジョグでスタミナ強化も
取材に伺ったのは、予選会に向けて大事なポイント練習となった日でした。雨が降りしきる中でしたが、選手の皆さんからは肌寒さを吹き飛ばす熱量が伝わってきました。
両チームともに、普段は授業や研究でなかなか同じ時間帯に練習できないため、決められたポイント練習に集まって、それ以外は各自で練習することが多いそうです。その分、自主性も求められます。ポイント練習の日も設定ペースは決められていますが、どのペースで走るかは各自の判断に任されています。この日は3000mを3本というインターバル練習。予選会に向けてレースのペースを意識した実践的な練習です。
M高史も、予選会に出場する皆さんと一緒に参加させていただきました。やはり大学生、大学院生の皆さんは速くて、強いです! 僕自身は苦しい走りで練習の後半は離されてしまいました。
トラックを周回するため、前述した古川選手や秋吉選手に何度も抜かれました。降りしきる雨の中、軽快にピッチを刻み、順調な仕上がり具合が伺えました。そして雨の中、タイムを読み、写真を撮っていただいたマネージャーさんたちに感謝です!
ポイント練習を終えると、古川選手とダウンジョグをさせていただきました。古川選手や秋吉選手をはじめ、普段から長めにダウンジョグをされる選手もいるそうです。研究やアルバイトなどで時間が限られている中、スタミナ強化の一貫という面もあるのかもしれません。東大、東大院の選手の多くは塾講師、家庭教師、大学の研究の手伝いなどのアルバイトをしながら、学業と競技を続けています。アルバイトでためたお金でシューズを買ったり、合宿費に充てたり。そういう環境でも箱根予選会に出場し、選抜チームや連合チームを目指してきました。
古川選手は9月の日本インカレ10000mで、前半から留学生集団に日本人でただ一人果敢についていき、後半も粘りの走りで10位(日本人4位)に入りました。98回大会が個人88位、99回大会が個人100位でいずれも関東学生連合チーム入りを果たしましたが、どちらも本戦出場はなりませんでした。
古川選手といえば、左右それぞれ違うシューズを履いて出走したことがあることも話題になりました。低酸素トレーニングのジムに通っていて、傾斜を下り坂に設定できるトレッドミルを使い、1km走を低酸素環境で2分22秒で走破するなど、スピードにも磨きをかけてきました。また、最近は一本歯下駄(げた)に興味を持ち、箱根予選会に向けて下駄をトレーニングに採り入れるなど、速くなるための探求を惜しみません。
と、古川選手と陸上談議をしながら走っていたら、ダウンジョグだけであっという間に7kmほど走ってしまいましたが、古川選手にとってはいつも通りとのこと。地元の熊本城マラソンで4度の優勝経験がある古川選手のスタミナは、こういった日ごろの積み重ねから来ているんですね!
箱根予選会の目標や研究・学業について聞きました
続いて東大院の皆さん、東大の皆さんの注目選手インタビューです。「今シーズンの振り返り」「箱根予選会の目標」「研究や学業について」それぞれお話を伺いました。
まずは東大院チームの皆さんです。
古川大晃選手(博士4年、八代高校〜熊本大学〜九州大学大学院修士)
「今シーズンは部内で競い合う機会が大幅に増えたことや、コーチの練習メニュー作成など様々なことが重なり、昨年までできてこなかった質の高い練習ができてきています。万全の状態で箱根駅伝予選会に挑みたいです。予選会では個人40位以内が目標です。(大学院では)人と走るとなぜ楽に感じるのか、集団走の効果のメカニズムについて研究をしています」
柚木﨑正彦選手(博士1年、西武文理高校〜学習院大学〜東京大学大学院修士)
「今シーズンは学部生と練習することで、スピードの質を高められました。そのおかげで1500mや3000mでベストを更新できました。(予選会の目標は)チームでは院生記録の更新、個人では68分台を目指して走ります。予選会以降は5000m以上の距離でベストを更新したいです。(大学院では)理学系研究科で物理学を専攻しています。電子の電荷とスピンの双方の性質を応用するスピントロニクス分野の研究を行っています」
中根美七海選手(修士2年、岡崎高校〜東京大学)
「今年は例年と比べても、しっかり練習を積めていると感じているので、秋冬シーズンでロード、トラックともに自己ベストを狙っていきます。予選会ではここ2年、終盤に失速する悔しいレースが続いているので、今年は前半に余裕を持ってレースを進め、後半に上げていけるような走りをすること、自己ベストの67分台を出すことを目標にしています。私は理学系研究科物理学専攻に所属し、天文の研究を行っています。今から約130億年前に存在した超昔の銀河に、鉄はどれくらい存在しているのか、ということです。銀河や130億年前といった話は、私たちからすると遠い話に感じますが、実際に観測されたデータと向き合うことで宇宙の謎に迫れることに魅力を感じています」
続いて東大チームです。
西田大晟選手(4年、広島大附属)
「今シーズンは暑さなどでうまく練習が積めない時期もあったものの、重要なレースには調子を合わせて自己ベストを出せているので、箱根予選会でもうまく調子を合わせていきたいです。昨年の記録(65分48秒)を超えるのが目標です。昨年の予選会で大幅に自己記録を更新して、強豪校の選手と戦える可能性が見えてきたので、今年はさらに記録と順位を上げて来年以降につなげていきたいです。(大学では)物性物理学の研究を行っています。現在は実験系の研究室で試料の合成や測定を主に行っていますが、大学院入学後に同分野で理論研究を行う予定です」
秋吉拓真選手(3年、六甲学院)
「今シーズン前半は関東インカレで決勝に残ることや、日本インカレで5位入賞することができ、良い経験を積めました。また、1500mで東大記録を更新することもでき、スピード面を磨くこともできました。一方で、関東インカレの決勝では強豪校の選手相手に勝負ができず、悔しい思いもしました。予選会ではこの悔しさを糧に今までやってきたことをぶつけたいです。箱根予選会での目標は『今の自分にできる最高のパフォーマンスをすること』です。この1年で着実に力はついているので、個人の記録もチームの記録もついてくると思います。大学では工学部機械情報工学科に在籍していて、ものづくりに必要な知識を勉強しています。4年生からは研究室にも配属されるので、ロボットを扱った研究をしたいと思っています」
渡邉慶大選手(2年、聖光学院)
「なかなか練習の割にタイムが出ずに苦しい時期もありましたが、地道にジョグを続けていたら結果が出てきたので、粘りのシーズンでした。箱根予選会では66分台を目標にしています。大学では医学、特に整形外科学に興味があります」
第101回箱根駅伝予選会は10月19日(土)に開催されます。予選会参加のための標準記録を突破した選手たちによる、人生をかけた挑戦の先に箱根路が待っています。東京大学、東京大学院の皆さんにも注目です! 現状打破!