陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

3年ぶりの全日本大学女子駅伝に挑む兵庫大学 富士山女子駅伝の出場権獲得を目指して

3年ぶり3度目の全日本大学女子駅伝に挑む兵庫大学女子駅伝部の皆さん(M高史撮影以外、すべて提供・兵庫大学女子駅伝部)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は兵庫大学女子駅伝部のお話です。9月の関西学生女子駅伝で過去最高の3位に入り、3年ぶり3度目の全日本大学女子駅伝出場を決めました。10月27日に迫った本番に向けた練習を取材させていただきました。

グラウンドや寮はなく、資格取得を目指す選手も

兵庫県加古川市に位置する兵庫大学。女子駅伝部は創部15年目です。創部当初からご指導されているのは樽本つぐみ監督(旧姓・福山さん)。大学や実業団でも活躍され、10kmロードの元日本最高記録保持者でもあります(32分12秒。1991年、神戸女子ロードにて樹立)。

選手にお話をする樽本つぐみ監督(左奥、撮影・M高史)

兵庫大学は学内にグラウンドがなく、キャンパスのすぐ裏にある寺田池の遊歩道が主な練習場所となります。週末などは陸上競技場に移動して練習することもあるそうです。また、兵庫大学女子駅伝部には寮がなく、兵庫県内の自宅から通う選手がほとんどで、県外出身の選手は一人暮らしをされているとのこと。限られた環境の中でも全国の舞台へ挑戦し続けてきました。

前回出場したのは現在の4年生が1年生だった3年前でした。今年は全日本の予選に位置づけられる9月28日の関西学生女子駅伝で3位に。シード校(立命館大学、大阪学院大学、関西大学)を除くと、今年は関西から1枠しかない超激戦の中、見事に全日本への切符を獲得しました。

駅伝で全国を目指すとともに、多くの選手が資格を取るのも兵庫大学女子駅伝部の特徴です。管理栄養士、教員免許、保育士、幼稚園教諭、看護師、社会福祉士など学部によって取得できる資格は異なりますが、いずれにしても授業数が多かったり、実習があったりする中、競技にも勉強にもコツコツと取り組んできました。

チームを牽引(けんいん)してきた4年生の3人は、それぞれ資格取得を目指しています。主将の長岡あず選手(4年、姫路商業)は栄養マネジメント学科で管理栄養士、栄養士の資格取得を目指し、白井かすみ選手(4年、神港学園)は健康システム学科で教員免許(保健体育)と健康運動指導士の資格、福永愛佳選手(4年、須磨学園)はこども福祉学科で保育士・幼稚園教諭の免許取得の勉強をしています。

今年の6~7月ごろは、4年生の誰かが実習に行っているような状態で、4年生全員がそろったのは夏前だったそうです。

また、実業団で6年間の競技経験を経て今年入学した樽本知夏選手(1年、須磨学園~日本郵政グループ)は保健体育の教員免許取得を目指しています。母・樽本つぐみ監督のご指導のもと、再び走り出し、関西学生女子駅伝では2区で区間賞を獲得し、チームに流れを引き寄せました。

樽本監督(右奥)が見守る中、さっそうと駆け抜けていく選手の皆さん

皆さんコース取りや折り返しが上手!

皆さんの練習にも参加させていただきました。まずは動きづくり。ラダーなどでしっかり体にスイッチを入れていきます。4年前に伺った時よりも動きづくりのバリエーションが増えていました。選手の皆さんに伺ったところ、年々アップデートしているようです。

樽本監督は元「日本最高記録」保持者 杜の都初出場の兵庫大で走ってきました!
まずは動きづくりから。走りにつながるよう丁寧に行います

続いてキャンパスのすぐ裏にある寺田池へ。1周1560mの寺田池ですが、兵庫大学の練習では1kmを往復するコースを使います。何度も何度も折り返すので、選手の皆さんはコース取りや折り返しがとにかく上手です! 折り返すたびに一瞬置いていかれそうになります。

この日は週末に記録会が控えているということもあり、6kmを集団で走る練習でした。交代でペースを引っ張り、ラスト1kmでグッとペースが上がっても、皆さんまとまって走られており、チームの状態の良さも伝わってきました。

寺田池の遊歩道を使ってのトレーニング。この日は集団で6km走

寺田池は街灯がないため、練習が終わる頃にはだいぶ暗くなってきました。日没の早い冬場は朝練習を長めにやるなど、環境を言い訳にせず、工夫してトレーニングされているそうです。

集団走の後は校舎内に移動して補強トレーニングです。自重でみっちり鍛えます。バランスや姿勢、体の軸などを意識して鍛えられているのが印象的でした。 

走った後は補強トレーニングでしっかり体づくり(撮影・M高史)

そして練習後は、食堂で栄養バランスのとれたおいしい夕食の時間です!

寮がない兵庫大学女子駅伝部では、自宅から通学している選手が多く、中には片道1時間以上かかる選手もいます。練習を終えたら、なるべく早めに食事をして、栄養補給することがアスリートにとってはとても大切ということで、練習後に学食で食事をとる態勢がとられています。

M高史も皆さんと夕食をご一緒させていただきました。

練習後、学食で夕食をとる選手の皆さん(撮影・M高史)

4年生にとっては1年時以来となる杜の都へ

監督、選手の皆さんにも取材させていただきました。

樽本つぐみ監督
「(4年生にとっては1年以来の全日本ということで)『駅伝はチームやで』と言ってきて、最後の年に頑張ってくれました。4年生は実習がある中でも頑張ってくれましたね。(関西学生女子駅伝では)過去最高順位ということでびっくりです。1区が長くなって牽制(けんせい)していたこともあり、うまく乗っていけました。ただ、3番といえど(トップの)大阪学院大学さんとは3分の差がありました。全日本大学女子駅伝では初出場の時が21位で前回が17位。四つ上がってきているので、今回四つ上がれば13位。でもここまで来たら12位、11位を目指してシード校や関東の強い大学さんと少しでも近くで走りたいです。(12位までに入れば富士山女子駅伝出場権獲得となり)選抜チームで富士山には何人か出場してきましたが、チームで出たいなと思います」

主将・長岡あず選手(4年、姫路商業)
「(全日本は)1年生の時に行けて、2年、3年と行けなくて悔しかったので、最後の年に行きたいと思っていました。(関西学生女子駅伝では)1区からいい流れでつないで、最後の年にもう一度決められて良かったなと思います。今年は『誰でも長い区間行けるようにしてほしい』とみんなに言ってきましたし、全員で誰が何区を走りたいというコミュニケーションは、早い段階からしていました。日頃から駅伝のことを想定した練習、声かけもしていました。1年生の時は4年生の先輩に支えてもらってたなと、いま自分が4年生になって感じます。全日本ではどの区間を走ってもしっかりチームを勢いづける走りをして、過去最高順位を狙っていきたいです。まずは12位に入って富士山の出場権を取りたいです」

白井かすみ選手(4年、神港学園)
「関西ではアンカーで、みんながいい形でもってきてくれたからこそ、逆に緊張もありましたが、走る前に長岡が来てくれて『絶対全国行こう!』と言ってくれて、絶対行けると思ってスタートしました。アンカーで最後のトラックに入る前にみんなの顔が見えて、最後はずっと笑顔で走れました。全日本では1年生の時はアンカーを走って、その時は何もできず、ただ走って終わってしまいましたが、今回は挑戦できるくらいの力がついたかなと思います。勢いと自信を持って、もっともっと上を目指せるように頑張っていけたらなと思います」

福永愛佳選手(4年、須磨学園)
「関西では4区を走らせてもらって、緊張感もある中、楽しいという気持ちをもって走れたと思います。自分たちは大学にトラックがない分、ロードで力を磨いてきました。全日本ではチームとしては12位に入って富士山女子駅伝出場権獲得、さらには8位のシード権というのも視野に入れながら、個人としても区間順位も意識していきたいです」

左から白井かすみ選手、長岡あず選手、福永愛佳選手。字は3年生の尾中花和選手が書かれました(撮影・M高史)

4年生の3人にとっても1年生以来の全日本。そして富士山女子駅伝初出場を目指しています。兵庫大学では地域の方や学校の先生からも声をかけてくださったり、応援してくださったりしてくれるそうです。

部員12人の思いを襷(たすき)に込めて、さらには卒業生や地域の方、先生方の応援を力に変えて、兵庫大学の皆さんは3年ぶりの全日本大学女子駅伝に挑みます!

M高史の陸上まるかじり

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