名城大学が全日本大学女子駅伝7連覇! エース不在も「部員全員でつかみ取った」優勝
第41回 全日本大学女子駅伝対校選手権
10月29日@弘進ゴムアスリートパーク仙台発着
優勝 名城大学 2時間04分29秒
2位 大東文化大学 2時間05分21秒
3位 立命館大学 2時間05分21秒
4位 城西大学 2時間06分06秒
5位 日本体育大学 2時間06分45秒
6位 大阪学院大学 2時間07分19秒
7位 関西大学 2時間07分44秒
8位 東北福祉大学 2時間08分57秒
10月29日、仙台市で第41回全日本大学女子駅伝(6区間、38.0km)が開催され、名城大学が7年連続8度目の優勝を果たした。直近4年間は2位とのタイム差が2分30秒を超えていたが、今年は2位・大東文化大学との差は52秒。例年以上に混戦模様となった今大会を制し、絶対女王の強さを見せつけた。
結果を残せなかったトラックシーズン
2年連続で1区を任された米澤奈々香(2年、仙台育英)は、立命館大学・村松灯(3年、立命館宇治)との一騎打ちに敗れたが、3秒差の区間2位と好スタートを切った。2区の力丸楓(1年、仙台一)も一時トップに立つなど奮闘。首位で3区に襷(たすき)をつなぐことはできなかったものの、「仙台コンビ」の力走で後半区間に実力者が並んだ大東文化大や日本体育大学には大きな差をつけた。
3区でこの日が20歳の誕生日だった石松愛朱加(2年、須磨学園)が区間賞の走りを披露してトップに立つと、その後は独走状態に。4区は実績豊富な1年生・薮谷奈瑠(1年、大阪薫英女学院)、5区はFISUワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソン代表でもある原田紗希(2年、小林)がつなぎ、首位を堅守。最後はアンカーを務めた谷本七星(3年、舟入)が笑顔でゴールテープを切り、歓喜の瞬間を迎えた。
昨年は1区から一度も先頭を譲らずに優勝。全6区間のうち5人が区間賞を獲得し、他大学を圧倒した。しかし、昨年優勝メンバーの中心で国内屈指の実力を誇る小林成美(現・三井住友海上)、山本有真(現・積水化学)が卒業した上、新チームでは故障者や体調不良者が続出。またトラックシーズンは各選手が結果を残せず、米田勝朗監督は「新チームになってからうまくチームが機能しなかった。夏まではまともに走れる選手がほとんどいない状態だった」と振り返る。
そんな中、インターハイ出場経験のない力丸をはじめ下級生が急成長。今大会は登録メンバー10人中、8人が1、2年生で、出走メンバーも谷本以外は下級生が名を連ねた。「エースがいないんだったら総合力で戦うしかない」(米田監督)。優勝を確信はできなくとも、それを十分に狙えるほどの布陣は整った。
米田勝朗監督の想定を超えた5区・原田紗希の激走
米田監督は「簡単に勝てる展開にはならないだろう」と考え、「3区でなんとか先頭に立って、4区でできるだけ差を広げる。5区は場合によっては負けてもいい。30秒くらいの負けなら、アンカーの谷本が逆転できる」というレースプランを思い描いていた。
プラン通り3区でトップに立ったが、第3中継所で31秒差だった2位・立命館大とのタイム差は第4中継所で13秒差まで縮まった。勝敗のカギを握る最長区間(9.2km)の5区。原田は「とにかく前だけ見て粘る、自分の走りをすることだけを考えた」と懸命に走った。大東文化大のサラ・ワンジル(1年、帝京長岡)の猛追を振り切り、「30秒くらいの負け」どころか2位と15秒差の首位でアンカー区間につないだ。
昨年は大会直前にメンバーを外れ、「優勝はうれしかったけど、正直、悔しい思いの方が強かった」。今年は念願のメンバー入り。重要な区間を任されたことに喜びを覚えた一方、「5区には強い選手が集まってくる。自分が抜かれて連覇を途絶えさせてしまったらどうしよう」と不安にさいなまれていた。
名城大の昨年の5区は前主将の小林が務めた。今大会は5区にワンジルのほか、日本体育大・山﨑りさ(3年、成田)ら各チームのエースがずらりと並んだ。「自分はただ長い距離が走れるというだけで、エースだから5区に入ったわけではない」。そう謙遜しながらも大舞台で「自分の走り」を存分に発揮し、谷本には「七星先輩に渡せば大丈夫」と信じて襷を託した。
「いつか負ける」危機感持ちつつ手にした栄冠
アンカーの谷本は1年生の時からメンバー入りしており、一昨年、昨年は4区で区間新記録をたたき出した。米田監督や後輩たちからの信頼度は誰よりも高い選手だが、谷本も「周りから『安定している』『安心だ』と言われていたけど、実際は首位で(襷を)もらっても怖さがあったし、脱水になったらどうしよう」と不安を抱えながら走り出していた。それでも、沿道の応援や脳裏に浮かんだチームメートの思いを力に変えて快走。終始笑顔で走り切り、区間賞にも輝いた。
谷本は記者会見で出走メンバー全員の走りを称賛し、感謝した。また3年連続区間賞ながら、今大会は補欠に回った主将・増渕祐香(4年、錦城学園)の名前も挙げた上で、「走った6人だけでなく、キャプテンを含めて部員全員でつかみ取った7連覇」と胸を張った。
米田監督は「去年までのような独走ではなく接戦だった。『このままでは自分たちはいつか負ける』という危機感を持ちながら勝ち切れたのはよかった。今年の優勝が来年以降、彼女たちをさらに強くする大きな力になると思う」と今大会を総括した。
1年生の薮谷が「私たちが4年生になった時に10連覇を達成できるように、もっと強くなりたい」と話したように、選手たちは早くも次を見据えていた。12月には富士山女子駅伝も控える。逆境を乗り越え一つになった名城大は、ここからさらに強くなる。