神奈川大・志食隆希　練習生から正式部員になった「鉄人」が箱根駅伝予選会通過に貢献

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10月19日の第101回箱根駅伝予選会で、神奈川大学が9位に入り、2年連続55回目の本戦出場を決めた。1月に就任した中野剛監督とって、初めての予選会。例年より気温が上がり、タフさが求められた中、通過をたぐり寄せる走りを見せたのが、一般受験で入学して練習生から部員となった志食（しじき）隆希（3年、平田）だった。

季節外れの暑さで生じた誤算

レース後、中野監督は「暑い中での距離走もやってきましたし、対策について学生ミーティングで話し合ってきましたが、それでも、この暑さは学生にはこたえたみたいですね」と語った。レ－スプランとしては、宮本陽叶（3年、洛南）と中野蒼心（3年、三浦学苑）を先行させてタイムを稼ぎ、残りの酒井健成（3年、愛知）や大岩蓮（2年、愛知）らが、集団走でゴールする形を描いていた。

しかし、スタート前の午前9時に気温は20度を超え、日差しも強い中でのレースとなり、宮本と中野が思ったように走れないという誤算が生じた。集団走でレースに臨んだ選手のうち、数人がスタートで出遅れ、タイムをロスするアクシデントも発生。ただ、5kmを過ぎてから遅れていた選手が集団に合流した後は、落ち着いてレースを展開。15kmを過ぎてからは、それぞれがペースを上げてゴールし、全体9位に滑り込んだ。

中野監督は「6年ぶりに（全日本大学駅伝と箱根駅伝の）二つを走ることができるようになって、ホッとしています。後は、思いっきり走ってくれたら何も言うことはありません」と話した。レースについては「全日本大学駅伝の選考まで2年生が中心でしたが、今日は、3年生がよく頑張ってくれました」と振り返り、チームで3番だった志食を立役者の一人に挙げた。

志食は、この日のレースで酒井とともに集団を引っ張り、1時間5分16秒でフィニッシュ。個人59位に入った。持ち味は、中野監督が「鉄人」と評するように、タフなフィジカルとメンタルにある。高校時代にも、暑い中で自己ベストに近いタイムを出したことがあったという志食。この日のレースを振り返る時も「めちゃめちゃ、しんどいんですけど、暑い方がうれしいというのはありました」と笑った。

自己ベストを出して正式な部員に

志食の大学駅伝は、練習生からの出発だった。島根県立平田高校時代、5000mのベストタイムは、14分48秒。「箱根駅伝を走りたい」という夢をかなえるため、一般受験を経て神奈川大学に入学し、練習生として駅伝チームに入った。正式な部員になるために課されたのは、ベストの更新というハードル。チームの中で練習を積み、入学した年の12月に14分46秒をマークして、正式な部員として迎え入れられた。それからは、寮生活を送りながら駅伝練習を中心に生活を送ってきた。

転機は、今年7月に北海道で行われた「士別ハーフマラソン大会」の後に訪れた。実業団の選手も出場する中、同期の中野に次いで9位に入った走りが見込まれ、BチームからAチームにランクアップ。よりレベルの高い練習で、駅伝シーズンに向けてトレーニングを積み、箱根駅伝の予選会を迎えた。

この日のレースの成果と課題について「15kmからしっかりペースを上げられたが、ラスト1kmであまり上げることができなかった。勝負どころでスピードを上げられるようにしたい」と話した志食。自ら参加した予選会で本戦出場を決め、夢の舞台だった箱根駅伝が現実味を帯び始めてきた。

「出場」から「区間賞」に変わった目標

芽生えてきたのは、出場できるかもしれないという喜びだけではない。「力が無くて練習生として入って、ずっと『箱根駅伝に出たい』という思いでやってきた。今は、自分がチームを勝たせないといけない立場になった。出ることが目標じゃなくて『どう勝つか』ということをしっかり考えないといけない」。夏を越えて、目標は、出場から区間賞獲得に変わった。そこまで段階的に強くなっていきたいと志食は語る。プラウドブルーのユニホームを身にまとった鉄人が、正月の箱根駅伝でタフな走りを見せることが、今から待ち遠しい。