陸上・駅伝

特集:第56回全日本大学駅伝

神奈川大が7位で2大会ぶりの全日本大学駅伝へ 最終組の宮本陽叶「ゾーンに入った」

2大会ぶりに全日本大学駅伝出場を決め、歓喜の声をあげる神奈川大学のメンバー(すべて撮影・松崎敏朗)

第56回全日本大学駅伝対校選手権大会 関東地区選考会

6月23日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)
1位 東海大学   3時間55分28秒21
2位 東洋大学   3時間55分37秒45
3位 早稲田大学  3時間55分50秒18
4位 日本体育大学 3時間55分55秒62 
5位 立教大学   3時間56分19秒26
6位 帝京大学   3時間56分45秒83
7位 神奈川大学  3時間57分33秒67
----------ここまで本戦出場------------
8位 明治大学   3時間57分49秒31
9位 日本大学   3時間58分33秒67
10位 山梨学院大学 3時間59分04秒04

6月23日の全日本大学駅伝関東地区選考会で、神奈川大学が7位となり、2大会ぶり19回目の出場を決めた。今年1月に就任した中野剛監督のもと、2、3年生主体のチームで挑み、3組が終了した時点では暫定8位につけていたが、最終4組でボーダーラインにいた明治大学を逆転した。

1組で2年生の大岩蓮と滝本朗史が快走

本格的なレースが1年ぶりというブランクを感じさせない走りを見せた滝本朗史(右)

1組には、大岩蓮(2年、愛知)と滝本朗史(2年、智弁学園奈良カレッジ)の2年生コンビがエントリーした。序盤は、東洋大学の松井海斗(1年、埼玉栄)が集団を引っ張り、徐々に集団が縦長になっていく中、7000m過ぎに滝本が飛び出す。レース後「6000mまで余裕があった。一瞬、踏みとどまりかけたけど、『ここでいかなきゃ』と思った」と滝本。突出したエースがいない中、稼げる時に、タイムを稼ごうという思惑を持ってのペースアップだったという。

滝本のペースアップに、明治大学の成合洸琉(1年、宮崎日大)が反応し、一時、2人は後続集団との差を5秒に広げた。残り3周を切ったところで、滝本は松井に追い抜かれ、明治大の東原豪輝(4年、大阪)にも先行を許したが、29分29秒70の自己ベストで3着に入った。初めて10000mに出場した大岩も29分33秒32で7着となり、ともに1桁順位でのゴールとなった。

初めての10000mで、1組7着に入った大岩蓮(中央)

けがをしていて、本格的なレースは1年ぶりだったという滝本。中野監督のもとで起きた変化として、練習量が増えたことを挙げ「いっぱいっぱいなところもあるが、実践的な練習の多い点が良い。今回のレースで、自分もチャレンジして成長できたと思う」と語った。

前半を折り返して暫定2位に

出場メンバーのうち、唯一の4年生となる中西亮介(中央)は、スローペースの中、8着でゴールした

2組には、中西良介(4年、関西大北陽)と三原涼雅(2年、日高)が出場した。超スローペースの展開で、早稲田大学の石塚陽士(4年、早稲田実業)、東海大学の檜垣蒼(1年、倉敷)らがトップ集団を牽引(けんいん)。残り2000m付近でペースが上がり、集団が絞られ始めると、中西は第2集団で粘りの走りを見せ、30分04秒33で8着。第3集団から最後の追い上げを見せた三原も、30分05秒76で11着に入った。前半を折り返し、総合成績はトップの東海大から13秒19差の2位につけた。

2組を走り、11位に入った三原涼雅(中央)

3組終了時点で2秒82差の8位に転落

3組を走ったのは、酒井健成(3年、愛知)と高潮瑛(3年、千原台)。東洋大の石田洸介(4年、東農大二)や早稲田大の伊藤大志(4年、佐久長聖)ら、実力派ランナーがそろう中、レースは早々と縦長になり、酒井がトップ集団に食らいつく。しかし、終盤、トップ集団に引き離され、酒井が20着の29分39秒05、高潮が23着の29分42秒55でゴールした。

3組が終わった時点で暫定8位。選考会を通過するには、7位明治大との2秒82差をひっくり返す必要があった。中野監督から「明治大学をロックオンして、1人でも勝ってこい、1秒でも空けろ」と言われて4組に送り出されたのが宮本陽叶(3年、洛南)と新妻玲旺(2年、西脇工)だった。

3組に出場し、29分39秒05で20着に入った酒井健成(右端)と29分42秒55で23着の髙潮瑛(左から3人目)

最後方から徐々に順位を上げた宮本陽叶

昨年に続いて4組での出場となった宮本は、スタート直後から、新妻とともに一番後ろでレースを進める。トラックレースが苦手だったため、チームメートたちから「新妻の後ろについて、一番後ろから攻めればいいんじゃないか」とアドバイスを受けてのプランだった。

レースは、外国人留学生が先行し、早稲田大の山口智規(3年、学法石川)、中央学院大学の吉田礼志(4年、拓大紅陵)らが追いかける展開。その後ろに形成された集団は、東海大の兵藤ジュダ(3年、東海大静岡翔洋)、帝京大学の福島渉太(4年、小林)らが引っ張った。

一番後方から徐々に順位を上げた宮本陽叶(右)と新妻玲旺(左)

後方に陣取った宮本は、遅れ出す選手を徐々に追い抜いて順位を上げ、残り2周でペースを上げて集団を引き離す。しかし、これは周回数を間違えて「残り1周」と勘違いしたラストスパートだった。それでも粘って、29分04秒01の17着でゴール。新妻も、29分54秒95の34着でまとめた。明治大勢は30、31着だった。

宮本は「重圧は、まったく感じなかった。今日はゾーンに入っていた。滝本も大岩も、ずっとけがをしていたけど、ここで爆発してくれた。その頑張りに応えたかった」と振り返った。中野監督の新体制となり、朝練習が集団走になるなど、チームで動くという意識が強くなってきたという。周回数を間違えた点については「失敗したけど、集団についていって、もう一回仕掛けられれば良い勝負ができたと思う。それが次の課題」と前を向いた。

「本戦は思い切ったレースをしたい」

3組終了時点で本戦出場にギリギリ届かない8位だっただけに、結果発表では、チーム内に緊張感が漂った。選考会通過が発表されると拍手と歓声がわき起こり、泣き崩れる選手も。監督として、初の伊勢路出場を決めた中野監督は、1、2組目の2年生3人の快走を評価したうえで「ふるいにかける練習に耐えてきたので、粘りきってくれるだろうと思った」と笑顔を浮かべた。本戦に向けては「我々は、ギリギリで通って怖いものがない。夏の走り込みで、もう一つ、二つ上の力をつけて、思い切ったレースをしたい」と抱負を語った。

2大会ぶりの全日本大学駅伝本戦に駒を進めた神奈川大。プラウドブルーを伊勢路で躍動させるため、試練の夏に挑む。

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